OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

浅川マキは生きている!

2010-01-19 11:20:44 | 浅川マキ

Maki Live / 浅川マキ (東芝)


最近は各方面での訃報に驚く毎日ですが、昨日もまた、浅川マキの……。

故人は決してメジャーな活動はやっていませんでしたが、少なくとも私の世代ではファンが多いはずですし、新しいファンも今日まで増え続けていたと思います。

昔っからのメモをひっくり返したら、私が初めて浅川マキの歌を聴いたのは昭和44(1969)年末、曲は「かもめ」でしたが、やるせなく、そしてせつないほどの熱さを持った彼女の歌は、当時のラジオ深夜放送の大人びた世界に憧れていた中学時代のサイケおやじを、忽ち新しい場所へと導くものでした。

なんというか、ジャズでもロックでも、歌謡フォークでもなく、ブルース歌謡に近いような、モダンジャズで言えばデイヴ・ブルーベックの「Take Five」調のリズムパターンを使ったノリ、さらに「あばずれた」た歌いっぷりが、新鮮だったのです。

そして以降、ハッと気がつくと、ラジオでも深夜放送では人気が急上昇していた浅川マキの歌は、アングラと言われながら、所謂「文化人」にもファンを増やしていったと思います。

例えばライプの会場には某有名人が来ていたとか、映画やテレビドラマの劇中では、彼女の歌が意図的に使われることも、スポーツ紙の芸能欄のニュースになっていたほどです。

もちろん音楽マスコミも浅川マキを積極的に取り上げ、私がサングラスや衣装も含めて、全身ダークなイメージに徹している彼女の写真を最初に見た時には、失礼ながら決して美人ではなくとも、その雰囲気の「濃さ」に圧倒されましたですね。

また当然ながら、浅川マキの歌そのものの存在感の強さも素晴らしです♪♪~♪ それは聴いているうちに、歌われている情景が自然と心の中で映像化されてしまうほどですから、例えばロマンポルノでは彼女の歌が挿入歌として使われた作品が幾つも、残されています。

特に加藤彰監督は相当にファンだったようで、白川和子主演の「恋狂い(昭和46年)」では「夜が明けたら」、中川梨絵と宮下順子が出た「OL日記・牝猫の情事(昭和47年)」では「こんな風に過ぎて行くのなら」と「さかみちけ」が最高に効果的に使われていて、もう泣きそうになりますよ。

それほど浅川マキの歌はハードボイルドですし、彼女の存在そのものが、そうした小説の登場人物だと錯覚させれるのは、私だけでしょうか。イメージ的に浅川マキといえば、新宿や渋谷、池袋あたりの街が似合うというのは、如何にも1970年代的ではありますが、実際、私は彼女のライプには全く接したことがありませんし、唯一度、東京駅で彼女を見かけた時も、あぁ、やっぱり浅川マキという歌手は実在したんだなぁ……、と妙な感慨に浸ったほどです。

で、本日ご紹介のアルバムは浅川マキが確か3枚目に出した、初期のライプを収めた傑作盤です。

 A-1 別れ
 A-2 赤い橋
 A-3 にぎわい
 A-4 ちっちゃな時から
 A-5 朝日樓(朝日のあたる家)
 A-6 かもめ
 B-1 少年
 B-2 死春期
 A-3 ピアニストを撃て
 A-4 オールド・レインコート
 A-5 ガソリン・アレイ
 A-6 さかみち

録音は昭和46(1971)年12月31日の紀伊国屋ホール、つまりは大晦日のライプなんですが、浅川マキにとっては毎年恒例のイベントとして、以降も、ずぅ~~っと続いていくものです。

そして演目は代表曲と新曲、ライプだけの選曲もあり、特にB面収録の「オールド・レインコート」と「ガソリン・アレイ」はご存じ、ロッド・スチュアートの人気レパートリーを日本語で歌った快演♪♪~♪ 完全に日本語ロックになっているのが、たまりませんし、お馴染みの「朝日のあたる家」にしても、ジャズブルース仕立が良い感じです。

ただし残念なのは、浅川マキの歌が現在、オリジナル仕様でCD化されていないことで、この名盤にしても、CD化は不明です。

このあたりは何故なんでしょう……。

一説には浅川マキ本人がCDにされた「音」を嫌っているらしいのですが、確かに彼女の歌にはアナログ特有の温もりが似合うのは確かです。

今となっては天国へ召された彼女の意思を確かめる術もなく、そのあまりの急な出来事に後事は全く不明ですが、ひとりでも多くの皆様に浅川マキを聴いていただくためにも、善処を望みたいところです。

ということで、昨夜は浅川マキを聴こうとして、まずはこのアルバムを取り出したんですが、途中で悲しくなって、針を上げてしまいました……。

そして前述したロマンポルノ「OL日記・牝猫の情事」のDVD鑑賞に切り替えた次第は、如何にもサイケおやじ的日常かもしれません。

中川梨絵が成り行きのお見合いを終え、自宅に帰って簡単な料理を作り、ひとりで食べているシーンでの「こんな風に過ぎて行くのなら」は、あてどないムードが最高♪♪~♪ また宮下順子が好きな男の幸せを思って、ひとりで去っていくバスの中での「さかみち」には、本当にじんわりとせつなくさせられますよ。

既に述べたように自分の中では、不思議なほどに虚構性の強い歌手でしたから、突然の悲報も実感というよりは、妙な悲しさが強くなるばかりです。

浅川マキは生きている!

そんな風にさえ、自然に思ってしまうのが、これまた不思議……。

謹んで衷心より、ご冥福をお祈り致します。合掌。

コメント (6)
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