OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

TYAの熱演一番、もう一丁

2010-01-09 11:37:18 | Rock

I'm Going Home / Ten Years After (Deram / キングレコード)

今は昔のある時期、世界中で突発的にブレイクしたバンドのひとつが、テン・イヤーズ・アフターでした。

そのきっかけは1969年に開催された大規模ロックフェスティバル「ウッドストック」への出演で、もっと厳密に言えば、その記録映画の中でもハイライトになった「I'm Going Home」の熱演でしょう。

それは実にR&Rでシンプルなブルースロックなんですが、とにかく徹底して早弾きを披露するアルヴィン・リーのギターが痛快至極だったんですねぇ~♪ 同時に強引な歌いっぷり、いかつい容貌が如何にも当時のロック野郎の典型という感じでした。

しかしテン・イヤーズ・アフターというバンドは、それ以前から局地的には注目されていた本格的なブルースロックとロックジャズを演じるイギリスのグループで、メンバーはアルヴィン・リー(vo,g)、チャック・チャーチル(key)、レオ・ライオンズ(b)、リック・リー(ds) という4人組の実力派です。

そして正式デビューしたのは1967年だったのですが、実はそれまでの下積み時代には、いろんな歌手のバックやスタジオでの仕事がメインだったそうですから、ブルースやロックばかりでなく、ジャズや民族音楽の素養も現場で身につけていたと、メンバーが後に語っているほど、バンドとしての音楽性は深くて多岐にわたるものだったようです。

しかし、そんなところが逆にスタジオで作られたレコードではイマイチ、煮え切らないのも、また事実だったと思いますし、逆にライプでのストレートで熱いブルースロックをメインにした歌と演奏は、忽ち人気を集めたのです。

それはデビューから2作目のアルバムがライプ盤だったことでも明らかですし、前述した「ウッドストック」での熱演がウケまくったのも当然が必然でしょう。

さて、その「ウッドストック」の人気演奏となった「I'm Going Home」は、もちろんサントラ音源としてアナログ盤3枚組で発売された「ウッドストック(Cotillion)」に収録され、そのLP片面の半分を使った長尺の演奏はギターロックの聖典曲になったのですが、それはなにしろ、高価な3枚組ですからねぇ……。当時の中高生には簡単に手に入るものではありませんでした。

で、そんな間隙を突いて発売されたのが、本日ご紹介のシングル盤です。

ところが結論から言うと、これは同じ曲でありながら、しかもジャケ写が「ウッドストック」での熱演を強く意識したものであるにもかかわらず、全く別の演奏!?!

その実態は前述したバンドの2枚目のアルバム「テン・イヤーズ・アフター・イン・コンサート / Undead (Deram)」からのシングルカットだったのです。

う~ん、このあたりの詐術は強烈な商魂を痛感させられるところですが、アルヴィン・リーの驚異的な早弾きは充分に楽しめますし、グループとしての纏まりも凄いと思います。ただし「ウッドストック」では10分以上あった演奏時間が、ここで半分程度なのが物足りず……。

はっきり言って、これを入手した当時の若き日のサイケおやじは、決して騙されたとは言わないまでも、複雑な心境になったことは確かです。

ただし、そうした悔しさゆえにテン・イヤーズ・アフターの他のレコードを聴きたくなったのも、また率直な気持ちでしたし、実際に後追いながら聴いた諸々の作品には、なかなかジャズっぽい演奏があったりして、目からウロコ♪♪~♪

お目当てだったアルヴィン・リーのギタープレイにしても、早弾きの正体がスケール練習寸前だと気がつく瞬間があるとはいえ、モダンジャズからの強い影響を感じさせるピッキングの上手さとか、簡単に到達出来る境地ではありません。

また、ジャケ写でも確認出来る「ピースマーク」がペイントされた「ギブソン335」の潔さが、まさに時代の象徴でした。

今となっては、あまりにも時代がかったテン・イヤーズ・アフターの存在は、本当に1970年前後の時期だけに輝いた一発屋かもしれません。しかしリアルタイムに接した私のような者には、この「I'm Going Home」が確実に血を騒がせる名曲名演として忘れられません。

もちろん度々述べているように、その極みつきは「ウッドストック」でのバージョンですが、それより早いこちらの演奏も捨て難く、ついでに本篇収録のライプ盤「テン・イヤーズ・アフター・イン・コンサート / Undead (Deram)」も併せて聴けば、ますますテン・イヤーズ・アフターの虜になる皆様がいらっしゃるはずと思います。

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