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サイケおやじの生活と音楽

ドロドロにエグイ! モカンボのストーンズ

2009-10-29 10:35:34 | Rolling Stones

Stereo Mocambo Reels 1977 / The Rolling Stones (Idol Mind = bootleg)

1977年の所謂「トロント事件」は、ストーンズファンにとって、決して忘れられない出来事だと思います。

それは後に2枚組アナログLPのライプ盤として発売されるアルバム「ラブ・ユー・ライブ」制作の追加セッションとして、カナダはトロントのライプハウス「モカンポ」で少数の観客を前に演奏する企画が発端でした。

そして現地に集合したストーンズの面々の中で、キース・リチャーズとアニタ・パレンバーグが当局に麻薬所持と密売の容疑で逮捕されたのが、2月27日です。

しかし、肝心のライプセッションが3月4&5日に予定されていたことから、ここはなんとか保釈金を払って切り抜けたキースにしても、後の出廷から裁判の結果如何によっては、ストーンズの存続そのものが危うい立場になっていることに変わりはありません。カナダの法律では麻薬の密売は終身刑なのですから、ミック・ジャガーは相当に落ち込んでいたとか……。

それでも、そんなこんなが良い方向に作用してしまうのが、ストーンズというバンドの恐ろしさです。

前述したライプアルバム「ラブ・ユー・ライブ」のアナログ盤C面、通称「モカンボサイド」に収録された演奏を聴けば、当時のテンションの異様な高さは証明済み!

それゆえに、この2日間を含めた当時のストーンズの状況、その全貌を知りたくなるのがファンの願いというものですから、これまでも様々な関連音源のプートが出回り、その度の一喜一憂は刹那の学習効果に近いものがありました。そして今回、またまた驚愕の発掘となったのが、本日ご紹介のブツです。

なんとCDとDVDからなる2枚組仕様で、CDがモカンボでのライプ演奏をステレオライン録音をメインに纏めた音源集! そしてDVDは残念ながら動画ではありませんが、リアルタイムでの関係者インタビューと関連スチール写真、BGMが入った、如何にもアイドル・マインド・プロらしい濃厚なセットになっています。

☆Stereo Mocambo Reels
 01 Hand Of Fate ★
 02 Route 66 ▲
 03 Mannish Boy ▼
 04 Crackin' Up ▲
 05 Dance Little Sister ◆
 06 Around And Around ★
 07 Worried About You ★

 08 Let's Spend The Night Together (edited) ▲
 09 Band Introduction ▼
 10 Little Red Rooster ▲
 11 Crazy Mama
(mono / incompletet)
 12 Route 66 ★
 13 Crackin' Up
(incompletet)
 14 Let's Spend The Night Together (un-edited)
 15 Little Red Rooster ◆
 16 Route 66 ◆
 17 Crackin' Up
(combination mix)
 18 Little Red Rooster (combination mix)

  ★Reel A - rough mix
  ▲Reel B - rough mix
  ▼Reel C - final mix
  ◆Reel D - off acetate

 今回の収録は上記の18テイクになっていますが、現実の2日間では初日の3月4日に15曲、翌日には19曲が演奏されたという記録がありますから、これは一部にすぎません。
 しかしそれがまず、どういう経緯か、アセテート盤にコピーされた◆の3曲だけがヨーロッパの某ファンクラブ会員向けの7インチEPとして配布され、それがまたプートにコピーされて出回っていました。
 そして残りの演奏も追々、様々なプートで発掘され続けたのですが、それはライン録音がメインでありながら、モノラルとステレオの両ミックスが混在し、また音質もバラバラ……。
 それが今回、新発見のリールから唯一「Crazy Mama」を除いてリアルステレオの良好ミックスで楽しめるようになったのは、最高に嬉しいプレゼント♪♪~♪ もちろんキースが右、ロニーが左という「お約束」のギター定位になっていますし、当然ながら公式レコーディングを前提にしていましたから、ベースやドラムスの迫力もグッと生々しいかぎりです。
 もちろん中には公式テイクに極力近いミックスもありますし、また同時にダビングや編集が施されていない演奏が大部分を占めているとあって、これがなかなかにワイルドなR&Rのストーンズ的真髄が、たっぷり♪♪~♪ 特にラフミックスの「Around And Around」はキースとロニーのギターアンサンブルがブライアン・ジョーンズ時代の突進力を見事に再現する感涙名演ですし、ミックの「やさぐれた」歌いっぷりも高得点! 完全に「ラブ・ユー・ライブ」の公式テイクを上まわっていますよ。
 さらに「Hand Of Fate」や「Worried About You」といった、公式盤未収録のライプテイクにしても、意想外に鋭く細いキースのギターが良い感じ♪♪~♪ 逆にロニーのギターは粘っこく、持ち味を存分に活かした、これも隠れ名演でしょうねぇ~♪ そしてミックのボーカルが実にソウルフルなんですよっ! あぁ、たまりません。
 気になる複数テイクが収められている曲の中では、まず「夜をぶっとばせ / Let's Spend The Night Together」がボロボロになって完奏出来ず、欠落パートを編集したものの、結局はオクラ入りした真相が明かされています。それが編集されたトラック「08」と未編集の「14」という、このあたりにもブートならではの楽しみがあるわけですが、その意味では公式テイクが残されている「Crackin' Up」が、ここで3バージョン収録されているのも嬉しいかぎりでしょう。ただしトラック「13」はイントロだけなのが残念……。
 また「Mannish Boy」や「Little Red Rooster」はボーカルや諸々の手直しが入らない、まさに「生」のまんまのストーンズ流ブルースロックが、これまた最高♪♪~♪
 ちなみにトラック「17」と「18」は、このブツを制作した業者による恣意的なミックス&編集によって、公式テイクでの仕上げのポイントが種明かしされる、相当にマニアックな楽しみがありますが、個人的には、なんだかなぁ……。
 それと今回も残念だったのが、各トラックの録音年月日が、またしても特定されなかったことです。ただし当時の資料を基に演目の流れが極力、リアルタイムの曲順にしてあるようですから、そうした努力は表彰物でしょう。
 何よりも音質の大幅な改善とリアルステレオの嬉しい発掘は、絶対です!

☆Rare Interviews & Live M.C. On Still Pictures (日本語字幕付き)
 01 IMP Slate
 02 El Modambo Bartender
 03 A Rock Critic
 04 Comment On “Love You Live”
 05 Interview With Ron Wood
 06 Interview With Mick Jagger
 07 Interview With Keith Richard
 08 El Modambo Live M.C. & Band Introduction

 09 Mannish Boy (edited)
 10 Crackin' Up (edited)
 こちらはDVDのパートですが、既に述べたように動画ではなく、全てがスチール画像と音声だけの構成ながら、日本語字幕が入っていますから、何の問題もなく当時のストーンズのあれこれが楽しめます。
 それはネタばれがありますから、詳らかには致しませんが、公式盤等々ではカットされていた悪ノリのメンバー紹介は、まさにミック・ジャガーならではの話術が最高の極みつき! 各メンバーへのインタビューも貴重ですが、いろんな本音がチラチラ吐露されるあたりも、今となっては感慨深いものがあります。

ということで、実に濃厚な楽しみに溢れたブツです。

リアルタイムの状況としては、キースとアニタの逮捕と裁判、ストーンズの乱痴気ライプ、さらに当時のカナダ首相夫人とロニーやミックとの火遊び的なスキャンダル、打ち上げパーティに参加した各方面の著名人達が巻き込まれていく様々な醜聞……等々が、世界各国でトップニュースとして報道されていました。

そして一番の問題はキースの行く末!?!

今となっては温情判決でストーンズも存続出来たのですから、懐かしくもホロ苦い思い出かもしれませんが、当時は完全に袋小路だったのです。

そんなこんなも含めて聴く今回のブツは、やっぱり味わい深いものがありますし、何よりも世界最高のロックバンドはストーンズ! それを痛感させてくれますよ♪♪~♪ ここでのライプで楽しめる毒々しいまでの雰囲気とノリは、本当に唯一無二だと思います。

ちなみに当時の幸運な観客は、カナダのラジオ局が主催した「私はどうしてストーンズとパーティへ行きたいのか?」という懸賞論文の当選通過者が、300人ぽっきり! もしタイムマシンがあったとしても、当日のモカンボクラブへは入場が不可能ですから、こういう発掘プートが、限りなく愛おしいわけです。

願わくば、この歴史的な名演ライプ2日間のコンプリート音源が出ますようにと、ますます祈念するばかりです。

コメント
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