OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

ポールの天才メロディに酔う

2009-10-24 10:54:41 | Beatles

Red Rose Speedway / Paul McCartney & Wings (Apple)

先日掲載したウイングスのライプ盤以来、なんとなくポールの諸作を聴きかえす日々になっていますが、本日ご紹介のアルバムは現在のサイケおやじにとって、最高に愛おしい1枚です。

発売されたのは1973年の春でしたが、ご存じのようにポールは当時、ウイングスを結成して新たな意気込みの時期だったとはいえ、諸々の世評は決して芳しいものではありませんでした。

まずウイングスとしての最初のアルバム「ワイルドライフ」が、その雑な作りが狙ったものだったとしても、結果的にはメッタメタの評価しか得られず、実際、ファンにしても言い訳無用の駄盤と認めざるをえないものがありました。

まあ、このあたりは今日、それなりの再評価もされ、ジワジワと効いてくる流石のメロディも楽しめるのですが、さらに???だったのが、如何にもジョンとヨーコに対抗したかのようなポール&リンダによるファミリーバンド形態が納得出来なかった側面も、悪い方向に働いていました。

しかしポール・マッカートニー(vo,b,g,key,ds)、リンダ・マッカートニー(vo,key)、デニー・レイン(g,vo,b,key)、ヘンリー・マッカロウ(g)、デニー・シーウェル(ds) という陣容でバンドを固めたウイングスは、イギリス各地でケリラ的なコンサート活動を展開しているニュースが我国にも伝えられ、また「Hi Hi Hi」と「My Love」の連続シングルヒットを出してしまえば、ニューアルバムへの期待も高まるというもんです。

こうして、ついに発売されたのが豪華なブックレットも付いたLP「レッド・ローズ・スピードウェイ」だったわけですが……。

 A-1 Big Barn Bed
 A-2 My Love
 A-3 Get On The Right Thing
 A-4 One More Kiss
 A-5 Little Lamb Dragonfly
 B-1 Singl Pigeon
 B-2 When The Night
 B-3 Loup
 B-4 Medley
        a) Hold Me Tight
        b) Lazy Dynamite
        c) Hands Of Love
        d) Power Cut

結論から言うと、リアルタイムでの評価は低く、実際、相当に期待して聴いた若き日のサイケおやじには完全に肩透かしでした。告白すれば、レギュラーバンドによる作品ということで、もっとビートルズっぽい色合いを期待していたのです。それが……。

つまり最初の印象では、「Singl Pigeon」に往年のポール・マッカトニー節が感じられるぐらいで、先行シングルとして大ヒットした「My Love」にしても、虫歯になりそうなほど甘く、このアルバムの中では浮きまくっていると感じたのです。

こうして時が流れました。

そして今に至って、このアルバムを聴いてみると、そこには豊潤なメロディとロックの利点ともいうべき力強いビートが確信犯的に融合され、さらにアルバム片面&両面の曲の流れと構成が絶品! まさに、そう感じる他はないのです。

まずA面ド頭「Big Barn Bed」からして、リアルタイムでは捨て曲としか思えなかったところが、今はファンキーロックな名演として、実に楽しく聴けるのですから、時の流れとは恐ろしいものです。特にビシバシにキメを入れ、終盤へ向けて爆発していくデニー・シーウェルのドラミング、それとは対照的に終始、朴訥としているポールのエレキペース、また猥雑なボーカルとコーラスが不思議な楽しさを醸し出しているのです。加えてデニー・レインの生ギターも良い感じ♪♪~♪

そして曲の終了から間髪を入れずに繋がる「My Love」の豊潤なメロディ♪♪~♪ シングルで聴いていた時の甘々のムードが、ここではこれ以上無いほど絶妙な味わいで楽しめるんですねぇ~♪

う~ん、ポール・マッカートニー、恐るべし!

というか、こんな事は、当たりまえだのクラッカーなんでしょうねぇ~♪

パワーポップな「Get On The Right Thing」からハートウォームな「One More Kiss」、そして「Little Lamb Dragonfly」と続く隠れ名曲3連発の流れも流石と唸る他はありません。地味ながら、何れもポールでなければ書けない素晴らしいメロディばかりだと思いますし、当時は「でしゃばり」だと思われたリンダのコーラスが、今では必須じゃないでしょうか。それがあればこそ、ポールのシャウトや個性的な節回しが活きていると感じるのですよ、今は。

ですから、B面初っ端のホノボノとして気分はロンリーな「Singl Pigeon」は言わずもがな、ノスタルジックな哀愁路線の「When The Night」が、尚更に、せつないですねぇ~♪

さらに繋ぎのインスト的な「Loup」を経てスタートする、ポールが十八番のメドレー演奏では、これでもかというべき素敵なメロディがテンコ盛り! ただし正直な感想としては、そのひとつひとつを完成出来ずに、こうした逃げを打ったのかという不遜な事も思うわけですが、後に知ったところによると、ポールは当初、このアルバムセッションの為に膨大な楽曲を作り、2枚組の新作を想定していたそうですから、実に勿体ない話です。

そして実際、ここで披露される4つのパートは、何れも珠玉の掌編! 個人的には特に「Hands Of Love」が大好きです♪♪~♪

ということで、繰り返しますが、最高に愛おしいアルバムです。

しかし何故にリアルタイムで、これがあまり評価されず、サイケおやじにしても肩すかしだったかと推察すれば、それは当時の流行だったハードロックなギターソロもなければ、反体制的な歌詞も歌われず、妙に楽観的なものになっていたからでしょう。

つまり地味なんですが、それは同時代で人気を得ていたシンガーソングライター達のヒット盤に比べても、所謂ネクラな雰囲気が無く、かえって夢物語的な明るさが顕著でした。

ただし、このあたりはビートルズ時代のポールにも特徴的だったわけですから、結果的には良い方向へ進みだした証なんでしょうが、やはり時代にアクセクしていない唯我独尊が裏目に出たのかもしれません。

ジョンやジョージ、さらにリンゴが同時期に発表していた人気アルバムとは逆に、ポールは何を出しても批判される状況の中、ここまで充実しながら、地味~なイメージの作品を作ってしまった天才性は、やはり不滅だと認識しております。

今では決して聴くことが出来ない珠玉のメロデイに酔いましょうね。繰り返しになりますが、このアルバムは意図的に曲間が切り詰めてあるようですから、尚更に素晴らしい世界が楽しめるのでした。

コメント (2)
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