OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

風船ガムのポップス天国

2009-10-13 08:27:11 | Pops

Simon Says / The 1910 Fruitgum Company (Buddah / 日本コロムビア)

1960年代後半の所謂サイケデリック~ニューロック期のラジオからは、それこそギンギンドロドロの歌と演奏ばかりが流れていたわけではありません。否、むしろそれとは対照的なお気楽ポップス、聞いて楽しいウキウキポップスが、やはり主流の一角を占めていました。

そして当時、それを称して「バブルガム」なんて呼ばれていた一派の代表選手が、本日ご紹介の 1910フルーツガム・カンパニーです。もちろん、その音楽性は、サッと覚えて、味が無くなれば捨てられる運命という、文字通りチューインガムの美味しさで、ウキウキするようなリズムと調子良すぎるキャッチーなメロディ展開、フックの効いたアレンジで演奏される歌とコーラスは、完全なるヒットチャートに御用達の世界♪♪~♪

で、このシングル曲は彼等のデビュー曲で、1967年に発売されるや忽ちの大ヒット! 日本でも翌年にはラジオから流れまくって、今に至るも心身に焼きつけられたメロディが忘れられません。

ちなみに 1910フルーツガム・カンパニーは1967年に結成され、一応のオリジナルメンバーはフランク・ジャッケル(vo,g)、パット・カーワン(g,b,vo)、マーク・ガトコウスキー(org,vo)、フロイド・マーカス(ds) とされていますが、そんなことは、ど~でもいい! というのも、通称「バブルガム」の流行はジェリー・カセネッツとジェフ・カッツという優れた2人のプロデューサーが黒幕となった企画商品だったのが真相です。

つまり、ある意図を持って、先にスタジオで作り出された楽曲があり、それがシングルヒットになれば、巡業用のバンドが組まれるという、業界では至極当然のプロジェクトだったと思われます。実際、1910フルーツガム・カンパニーには後にプラスロックの王者とて君臨するシカゴのギタリストに抜擢されるドニー・ダーカスも在籍していましたし、スタジオの仕事がメインのレニー・フェィゲン(ds) やバリー・ガーフィールド(key) も去来していたようですから、このシングル盤のジャケットには5人編成のバンドで写っていますが、あまり気にすることもないと思われます。

ただし1971年、なんとピンク・フロイドの前座として来日した時には4人編成ながら、巧みな演奏とコーラスワークを聞かせたという伝説が残されているとおり、実力派が集められていたんでしょうねぇ。

ですから、この「Simon Says」も間然することの無い完成度で、イントロから強い印象を残すチープなオルガン、反復的に強いビートを作り出すエレキベース、幾分わざとらしい感じのコーラスとお気楽なボーカル、さらに安っぽい間奏のオルガンソロ♪♪~♪ ドC調な手拍子やキメのオルガンブレイクも良い感じ♪♪~♪

あぁ、これこそ、ちっぽけなトランジスタラジオにはジャストミートのヒット曲ですよ! 決して豪華なオーディオ装置は、お呼びじゃない!

そして「バブルガム」は1970年代初頭まで、ニューロックやシンガーソングライターのプームに並び立つ、もうひとつの流行となっていたのです。

その立役者は前述のジェリー・カセネッツ&ジェフ・カッツが運営していたスーパー・K・プロダクションに所属の歌手やグループ、またモンキーズを生み出したドン・カシューナが新たに作り出したアニメ世界のバンドだったアーチーズ、そしてオハイオ・エクスプレス、レモン・パイパーズ等々、数え切れないほどのヒットメーカーが登場しています。

今日では、その子供向けのサウンドと他愛ない歌詞の所為もあって、軽視される存在の「バブルガム」ではありますが、実はこんなものもサイケおやじは大好きで、三十路を越えた頃から一念発起で集め始めたシングル盤を聴き進むにつれ、音楽業界の仕組みや流行の作り方という実用的な部分も含め、なかなかの味わいと蘊蓄に深いものを感じるようになりました。

中でもキャンディーや砂糖菓子の比喩を上手く使った歌詞は、子供達なりの恋心を上手く表現したものでしょうし、演奏面ではサイケデリックやニューロックのキモを易しく作り直したサウンドプロデュースが、例え子供達にレコードを売る手段だったとしても、意外に侮れません。もちろんモータウンあたりのR&Bフィーリングが巧みに応用されているのは言わずもがなで、この流れがイギリスのトニー・マコウレイやロジャー・クック等々の同系プロデューサーの仕事と相互作用していくのは、やはり洋楽史にとって無視出来ないものだと思います。

こうして生み出された一連の楽曲は近年、CDでもなかなか立派な復刻が出来ているようですから、纏めて聴くのも楽しいはず♪♪~♪ なによりも琴線に触れまくるキャッチーなメロディ、歌とコーラスと演奏の巧みなコラポレーションは、まさにプロが作り出したポップス天国! これも永遠に不滅の世界です♪♪~♪

コメント (2)
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