OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

寒い春の魅惑盤

2007-03-16 17:26:26 | Weblog

一気に冬本番となった季節外れの3月ですよ。今朝は窓がガチガチに凍って、開かないほどでした。

仕事関係でも去り逝く人送別会がありますし、季節は遠慮なく春に向かっているはずなのですが……。

ということで、本日は――

Con Alma / Ray Bryant (Columbia / Sony)

レイ・ブライアントは人気ピアニストですから、作られたリーダー盤もかなりの枚数になっていますが、イノセントなジャズファンからは顰蹙というブツも、多数あるのが実状です。

それはジャズロックやソウルジャズ色が強かったり、あるいは安易なイージーリスニング調の所謂シャリコマ盤に対する侮蔑なわけですが、そうまで言われるのも、結局レイ・ブライアントというピアニストの優れた資質を、ファンが良く知っているからでしょう。

1950年代にはソニー・ロリンズ(ts) やマイルス・デイビス(tp) といった大物と共演し、歴史的なレコーディングも残していますし、歌伴の名手でもあり、さらに如何にもモダンジャズという名曲も多数書いています。もちろんリーダー作でも、名盤として認定されたアルバム、例えば「Ray Bryant Trio (Prestige)」とか「Ray Bryant Plays (Signature)」を出していますね♪

しかしそれだけで生き残れるほどジャズの世界は甘くないのでしょう。1960年代に入ると、バリバリのジャズよりは、もっと大衆的な作品を作り出していくのです。

さて、このアルバムは、そうした端境期に吹き込まれたモロジャズ=純粋モダンジャズの傑作盤です。

録音は1960年11月と1961年1月、メンバーはレイ・ブライアント(p)、アーサー・ハーパー(b)、ビル・リー(b)、ミッキー・ロッカー(ds) というシブイ面々です――

A-1 Con Alma
A-2 Milestones
A-3 Ill Wind
A-4 Nuts And Bolts
B-1 Cubano Chant
B-2 'Round Midnight
B-3 Autumn Leaves
B-4 C Jam Blues

今回、曲毎の解説は必要ないほどに、全篇がレイ・ブライアント独特のタッチとフィーリングに満たされています。それは小粋なスイング感であり、絶妙の歌心と力強いグルーヴの両立という、ジャズピアノのエッセンスそのもの♪ もちろんブルース&ソウルという黒人ならではの自然なハードバップ感覚も存分に楽しめます。

例えばリズミックなノリと哀愁が入り混じったオリジナル曲の「Cubano Chant」は、何度聴いても飽きることの無い名曲・名演です。ラテンビートのテーマ部分と快適な4ビートで綴られるアドリブパートのコントラストが、本当に素敵ですねぇ~♪ ミッキー・ロッカーのブラシもサクサクと気持ち良いです。

同じ事はアルバム表題曲の「Con Alma」にも言えますねぇ。哀愁のラテンビート&メロディは、ちょっとホレス・シルバー風でもありますが、小気味良いスイング感と泣きの入ったアドリブフレーズは、原曲を巧に変奏して作り出してありますから、抜け出せない魅力に満ちています。

また、お目当ての「Autumn Leaves」は、定石どおりと言うか、まずは無伴奏ピアノソロでテーマをスローに変奏する思わせぶりが見事ですし、ドラムスとベースを従えてからは、小粋なスイング感と美メロのアドリブで酔わせてくれます。そして強力な左手が最高のアクセントになっていますから、決して甘さに流れないところが真ハードバップなんですねぇ~♪

そうした麗しき部分は、この時代の代表的なモード曲「Milestones」でも遺憾なく発揮され、アップテンポでシャープな演奏でありながら、独特の温か味を伴っているのです。

さらに完全ソロピアノで演じられる「Ill Wind」は、オスカー・ピーターソン風で和みますし、基本に忠実な「'Round Midnight」や「C Jam Blues」の力強さもハードバップの断面を確実に捉えていると思います。

共演者ではミッキー・ロッカーが畢生の名演でしょう♪ けっして大物ドラマーではありませんが、「Nuts And Bolts」を筆頭にブラシの妙技をたっぷりと聞かせてくれすし、もちろんステックやバスドラとのコンビネーションも素晴らしい限りです!

ということで、これは多分、ピアノトリオの名盤になっているはずです。そしてオリジナルアナログ盤はモノラル仕様かと思われますが、大昔に出た日本盤はステレオ仕様で、残念ながら個人的には音質に満足出来ませんでした。

そして時が流れ、数年前に紙ジャケット仕様のCDが出た際に入手したものを、今、聴いているのですが、同じくステレオバージョンながら、リマスターが秀逸だと思います。

でも、本音はジャズ喫茶に置いてあるモノラル盤が欲しい……。どうせCD復刻するのなら、ステレオ&モノラルの両バージョン収録という快挙を望みたいところです。

コメント (2)
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