今日は仕事がメチャ忙しいぃぃぃぃ~! 昼メシも食えんぞっ!
トラブル連発! ゴタゴタ、マジギレ、照れ笑い……云々で疲れきりました。
で、今、ようやく聴いているのが――
■Trompeta Toccata / Kenny Dorham (Blue Note)
ケニー・ドーハムと言えば、何時もついてまわる形容詞がイブシ銀!
確かに音色がくすみ気味ですし、取り立てて派手なフレーズも出ないアドリブは、地味な印象ですが、でも、やってきた音楽は常に時代の最先端じゃなかろうか……?
まずニューヨークのアングラ音楽だったビバップで頭角を現し、続くハードバップだって、流行の最前線だったはずです。そしてモード系の演奏が主流となった1960年代には、新鋭のジョー・ヘンダーソン(ts) を見出して自己のバンドの看板にしていましたし、他にもスティーヴ・キューン(p) とかリチャード・デイビス(b) といったバリバリのツッパリを起用し続けた姿勢は、けっして枯れた境地の人では無いと思うのですが、いかがなもんでしょう。
で、このアルバムは楽しくも烈しい姿勢を露わにした傑作だと思います。もちろん、イブシ銀という部分も、しっかり味わえるのですが……♪
録音は1964年9月14日、メンバーはケニー・ドーハム(tp)、ジョー・ヘンダーソン(ts)、トミー・フラナガン(p)、リチャード・デイビス(b)、アルバート・ヒース(ds) という味わい深い顔ぶれです――
A-1 Trompeta Toccata
いきなり哀しくもせつないトランペットの独奏に胸がしめつけられる雰囲気、と書きたいところなんですが、音色のくすみ具合が拍子抜け……。
しかしアフロロックなリズム隊を従えてからの演奏本編では、そこらあたりを逆手にとったアグレッシブなアドリブが、かなり良い味です。もちろん全体はスパニッシュ風味のモード色に染まっていくのですが、絶妙な温か味が♪
またジョー・ヘンダーソンが本領発揮のベタベタな擬似フリー! するとトミー・フラナガンが幻想的な伴奏&アドリブで応えるという職人技を披露するのです。リチャード・デイビスの意味不明なベースの存在感も???ながら、やっぱり良い感じなのは、ひとえにリーダーのケニー・ドーハムが本気だからかもしれません。
A-2 Night Watch
ケニー・ドーハムが書いた十八番のファンキー曲ですから、本人もダーティな音色と温故知新のフレーズを出し惜しみしない熱演です。リズム隊の粘っこく躍動するビートの出し方も最高だと思います。
しかしジョー・ヘンダーソンは一筋縄ではいきません。保守的に行くと見せかけて、かなりアブナイ雰囲気が滲み出るギリギリが、流石だと思います。
そこへいくとトミー・フラナガンは安定感抜群で、素直に楽しませてくれます♪ これも名演・名アドリブのひとつでしょうね。
B-1 Mamacita
このアルバムから出たヒット曲が、これです。
作曲はジョー・ヘンダーソンという楽しい擬似ジャズロック♪ もちろんブルースが基本になっていますが、ラテンビートの変形のようなボサロックとでも申しましょうか、とにかく素敵なテーマメロディと共にウキウキさせられます。
リズム隊の仕掛けというか、分かっているとしか言えないアクセントの付け方にも、グッときますねぇ~♪
アドリブパートでは、ジョー・ヘンダーソンが作者の強みを活かしてリラックスした快演を披露すれば、ケニー・ドーハムはベテランの味を超越した、熱き心の一人舞台です! 繰り出すフレーズは細かいキメの併せ技なんですが、ちょっとハラハラさせられるトホホ感は、完全に狙ったものでしょうねぇ~♪ その中で痛快な一瞬が生み出されると、思わずイェ~とか叫びたくなります。
またトミー・フラナガンが、如何にも脇役といった風情に撤しているのも、良いです。なにしろリチャード・デイビスが、ちょっと焦れた感じでバックをつけてきますから! それでは皆様、ご一緒に歌いましょう♪ というラストテーマが、さらに素敵に感じられるのでした。
B-2 The Fox
オーラスはケニー・ドーハムが書いた強烈なハードバップです!
実はジャズ喫茶では、こっちのB面が定番だと思うのですが、前曲で和んだ空気が、ここでは一転して熱くなっていく雰囲気が、1970年代前半までのジャズ喫茶では、確かにあったと思います。
ケニー・ドーハムはイブシ銀を捨てて突進していますし、ジョー・ヘンダーソンはモード色が濃いウネウネクネクネの身悶え節で、反抗を試みています。
緊張感溢れるリズム隊も素晴らしく、リチャード・デイビスは、あの「ファイブスポット」の夢よ、もう一度! するとトミー・フラナガンが「ジャイアント・ステップス」で応えるという美しき流れです♪ アルバート・ヒースの押えたドラミングも、意想外の刺激に満ちていると思います。
ということで、なかなかカッコイイ作品だと思います。しかしケニー・ドーハムは、これ以降、何故か沈黙したというか、公式には活動末期のリーダー盤になってしまいました。
売行きもあまり芳しくなかったようで、直ぐに廃盤だったのかもしれません。実際、日本ではなかなか入手が難しかった時期がありました。
まあ、それゆえにジャズ喫茶の人気盤の末席を与えられたような按配かと思います。個人的には前作の「ウナマス」よりは、こっちが好みという天邪鬼になっておりますが♪