今日は20℃近くあったんじゃないでしょうか?
とても雪国の春とは思えませんです。
そして夕方からは生温い雨が! 全く分からん気候です。
ということで、本日は無闇に熱い、このアルバムを――
■Mingus At Carnegie Hall / Charles Mingus (Atlantic)
ジャズ界屈指の頑固者であろうチャールス・ミンガスが、最後の一花を咲かせたのが、1973年からのアトランティック時代です。しかしそれは半身不随の奇病に侵されながらの戦いでありましたから、極端に言えばベースも満足に弾けない時さえ、そこに居ることだけでリーダーシップを発揮していたという、凄い時期です。
ただしこれ以前のチャールス・ミンガスは、いわばホサレ時期というか、満足なレコーディング契約も取れずに苦闘していたのですから、肉体は犯されていても、精神は充実していたのでしょう。
それはこのアトランティック時代の諸作にハズレが無い事でも明らかですが、本アルバムはその中でも特別な人気盤♪ 確か1974年頃に出た瞬間から、ジャズ喫茶の名盤になっています。
録音は1974年1月19日、カーネギーホールでのライブ音源で、メンバーはチャールス・ミンガス(b) 以下、ジョン・ファディス(tp)、ジョージ・アダムス(ts) 、ハミエット・ブルィエット(bs)、ドン・プューレン(p)、ダニー・リッチモンド(ds) という当時のレギュラーに加えて、ジョン・ハンディ(ts,as)、ローランド・カーク(ts,stritch)、チャールス・マクファーソン(as) という歴代スタアプレイヤーが入った大ジャムセッションになっています――
A-1 C Jam Blues
デューク・エリントンが書いた有名なジャズブルースで、如何様にも染上げる可能性を秘めたシンプルなテーマが奥深いとされていますが、そんなことは、どーでも良くなるほど熱い演奏になっています。
まず、テーマ部分から野太いチャールス・ミンガスのベースが唸るので、嬉しくなります。そしてアドリブ先発はジョン・ハンディがテナーサックスで正統派のハードスイングというお手本を披露! これが侮れない高密度です。
続くバリトンのハミエット・ブルィエットは当時注目されていた新鋭で、その黒くて逞しい音色とグルーヴは、今日でも輝きを失っていません。ただしフリーに逃げているのは、やや減点でしょうか……。個人的には真っ向勝負を期待したのですが!
しかし、もうひとりの新鋭であるジョージ・アダムスは、あの痙攣フレーズを駆使して大暴れです。痺れるようなフレーズの引き伸ばしや混濁した音使い、さらに眩暈のハイノート吹き……等々、なんとかジョン・コルトレーンの呪縛から逃れんとする意気込みが感じられて、素晴らしいですねぇ~♪ バックで発狂悶絶するドン・プューレンとの息の合い方も抜群だと思います。
ただし、それが良いのはここまで! なんと次に登場するローランド・カークがジョージ・アダムスをペシャンコにする快・怪演の連発です。なにしろ正統派のテナーサックスを聞かせつつ、ド派手のメチャ吹きというか、大らかなノリとグチャグチャなブローのゴッタ煮です。炸裂するゲロゲロな音色の合間に超正統派の吹奏を交えてきますから、全く油断できず、聞いているうちに宇宙の彼方に飛ばされてしまいますよっ! あぁ、何度聴いても強烈至極です。どうやって吹いているのか、痙攣して悶絶、随喜の涙、とにかく一度聞いたら完全に虜になること、請け合いです。
実はこれを聴いてローランド・カークのレコード蒐集を始めた人を、私は何人も知っているほどですからっ! 何事も無かったかのようにアドリブを止めてしまう後に湧き上がる観客の呆れた声援が全てでしょう♪
さて、演奏はこの後、ディジー・ガレスピーの物真似男というジョン・ファディスが場を和ませ、ビバップ主流派のベクトルへ軌道修正すれば、続くチャールス・マクファーソンはチャーリー・パーカー直系の基本姿勢で応えます。
そしてラストテーマ直後から始まるノンストップな音の洪水が、これまた凄いところ! 大フリー大会なんですが、ジョージ・アダムスの暴れが虚しくなるのは、やはりローランド・カークと役者が違うというところでしょうか……。きっと良い勉強になったと思われますが、そうでもないか!? このあたりが疲れるところなのでした。
B-1 Perdido
さてB面もデューク・エリントンの曲を素材にした楽しいジャムセッション♪
とはいえ、演奏が進むにつれ、妖気というか恐さが漂うのは言わずもがなです。
アドリブパートは、まずジョン・ハンディがアルトサックスで激烈擬似フリーに挑戦していますが、やや無理が感じられたりします。しかしハミエット・ブルィエットは面目躍如の大ブローで、場の熱気が間違いなく高まった名演を披露しています。
しかし、またまたローランド・カーク! 全く普通っぽく出ながら、徐々に本性を現していく展開が本当に上手いです。もちろん途中から息継ぎが分からないというノンストップ吹きとか、2管同時咥え吹き、血管破裂寸前の豪快なタレ流し……等々、誰にも真似出来ない一芸の連発ですから、観客からは大声援です。あぁ、もはやドン・プューレンの暴れとかバックのリフなんて、何の意味もありませんです! とにかく、これ聴いて何も感じないという人がいたら、それは嘘だと断言出来る凄さがいっぱい♪
ですから続くチャールス・マクファーソンは居直りのパーカー節で一呼吸、若手のジョージ・アダムスに花を持たせる潔さに好感が持てますが、肝心のジョージ・アダムスが分かっていないというか、無理矢理にフリーをやらかして馬脚を現すというテイタラクです。
ただしここはドン・プューレンもグルになっていますから、それなりに救われています。ちなみにこの2人は、この後も盟友として活動していきますから、その原点の記録として興奮度も高いところでしょう♪
そしてジョン・ファディスの存在は、なんかディジー・ガレスピーの名代という雰囲気なのが……。まあ、いいじゃないですかぁ……。
ということで、結局、チャールス・ミンガスはベースソロを披露することも無いまま、演奏は終了してしまいますが、ストレートなジャズの楽しさに満ちたアルバムです。とにかくローランド・カークが凄すぎますよ♪
実は仕事で追い回されて、ストレス発散に車の中で大音量で、これを聴いてるわけなんですが……!