午前中は雪降り続き、午後はグッと気温が上がって、雪融けまくりという1日でした。 やっぱり変な気候です。
ということで、本日は正統派のこれを――
■Paul Chambers Quintet (Blue Note)
ジャズを聴き始めた頃、真っ先に名前を覚えたベーシストがポール・チェンバースでした。というか、買ったレコードのほとんどに、この人が入っていたのが真相ですが、つまり、それだけ多くの有名セッションを支えていたというわけです。
しかも後に知ったことですが、1950年代中頃から数年間というモダンジャズ黄金期には、まだ20代前半の若造だったという事実に驚愕しました。そして30代になって急速に衰えて、早世……。全くリアルタイムのハードバップと歩調を合わせた人生だったのです。
そのポール・チェンバースは、もちろんリーダー盤も残しており、けっして数は多くありませんが、その全てが傑作だと思います。このアルバムは多分、その2作目かと思いますが、正統派ハードパップでありながら、自身のベースワークと同質の強靭で柔らかなフィーリングが味わい深い逸品です。
録音は1957年5月19日、メンバーはドナルド・バード(tp)、クリフ・ジョーダン(ts)、トミー・フラナガン(p)、ポール・チェンバース(b)、エルビン・ジョーンズ(ds) という、なかなか興味深い面々です――
A-1 Minor Run-down
柔らかでメロディアスな曲調が魅力的なテーマは、ベニー・ゴルソン作曲と知って納得の名演となっています。もちろんそこには所謂ゴルソンハーモニーが現れますが、それに彩られてテーマ~アドリブに入っていくポール・チェンバースのベースが、もう最高です。バックでサクサクと蠢くエルビン・ジョーンズのブラシも良いなぁ~♪ ブリブリブンブン♪
そしてクリフ・ジョーダンが登場する直前、4ビートのウォーキングに転換する刹那のグルーヴに、またまたゾクゾクさせられるんですねぇ~♪ もちろんクリフ・ジョーダンのテナーサックスも歌いまくりです。
するとドラルド・バードのトランペットも歌心の塊のようなフレーズばかりを放出してきますし、トミー・フラナガンのピアノは例のソフトなスイング感満点で、たまりません。5分10秒目あたりのフレーズは最高です。
う~ん、それにしてもフラナガン、チェンパース、エルビンのリズム隊は強烈至極というか、硬軟併せ持ったアナザー・オーバーシーズ・トリオなのでした。
ラストテーマのアンサンブルが、またイカシています♪
A-2 The Hand Of Love
ラテンビートを使ったポール・チェンバースのオリジナル曲で、哀愁があって開放的なメロディが素敵です。またそれをリードするドナルド・バードのトランペットも温か味がありますねぇ♪
アドリブパートは、まずポール・チェンバースが4ビートでブンブンと入れ込めば、トミー・フラナガンは「トミフラ節」たっぷりの名演を聞かせてくれます。背後で強烈なシンバルを響かせるエルビン・ジョーンズも素晴らしいかぎり♪
ですからホーン陣もテンションが高く、クリフ・ジョーダンは本当に歌心ばっかりですし、ドナルド・バードも溌剌としてテーマメロディを活かした哀愁の美メロをアドリブにちりばめてくれます。
そしてクライマックスは、エルビン・ジョーンズが十八番のラテン味ボリリズムのドラムソロです! あぁ、何度聴いてもジンワリと気持ちが高ぶってまいります。
A-3 Softly As In A Morning Sunrise
あまりにも人気が高いスタンダード曲を、リズム隊だけのビアノトリオで演じてくれるんですから、分かっているとしか言えません!
テーマから先発のアドリブは、もちろんポール・チェンバースが名人芸のペースソロで演じ、短いピアノソロに続く再度のベースソロでは、豪快なところも聞かせてくれます。
もちろんエルビン・ジョーンズはネバリのブラシで終始熱演ですから、完全にオーバーシーズ状態という名演になっています。
B-1 Four Strings
B面ド頭の曲では、いきなりポール・チェンバースのアルコ弾きが炸裂します。
まあ、これについては好き嫌いがあると思われますが、その勢いと迫力は圧倒的! ちなみに、これもまたベニー・ゴルソン作曲なので、テーマメロディが覚え易いのと、ギスギスしたアルコ弾きに被さるホーン陣のハーモニーがありますから、なにかと助かっている演奏でしょう。
しかし続くクリフ・ジョーダンは気合満点というか、豪快で歌心のあるアドリブを聞かせてくれますし、またドナルド・バードも言う事なし快演です。
さらにトミー・フラナガンが、これまた素晴らしい♪ エルビン・ジョーンズのヘヴィでスピード感に満ちたドラミングと一体になって、グッとくるフレーズしか弾いていません。そしてブラシで強烈なドラムソロを披露するエルビン・ジョーズは、完全な天才でしょう。
ゲロゲロなアルコ弾きに拘るポール・チェンバースは、言わずもがなです。
B-2 What's New
通常はスローテンポが多い、この人気スタンダードが、スインギーに演奏されているというだけで、和んできます。まずドナルド・バードのテーマ解釈が大らかで良いですねぇ~♪
またクリフ・ジョーダンのテナーサックスが好調を維持しつつ、新しい展開を模索するような雰囲気なのも好感が持てます。
肝心のポール・チェンバースは、安定したウォーキングが地味に良く、アドリブソロにもそれは継続されていきます。またトミー・フラナガンの美メロ主義も流石ですねぇ~~~♪ ただし、些かドタバタのエルビン・ジョーンズには???なんですが、それもハードバップなんでしょう。
B-3 Beauteous
ポール・チェンバースが書いたハードバップ真っ向勝負のオリジナルですが、まずミディアムテンポで暴れるエルビン・ジョーンズが強烈に最高! 哀愁モードのテーマも最高です。
するとドナルド・バードがアドリブ先発で会心の一発芸というか、クリフォード・ブラウン直伝、あるいは禁断のブラウニー・フレーズを連発してくれますんで、嬉しくなります。逆に生真面目過ぎて歌心が停滞したクリフ・ジョーダンは……???
そしてここでも凄いのがポール・チェンバースを中心としたリズム隊です。特にエルビン・ジョーンズはステックとブラシの両刀使いで、物凄いグループを生み出していますし、グイノリのポール・チェンバースに、美メロしか出さないトミー・フラナガンという、これが「真黄金のトリオ」と言い切ってしまいます。
ということで、こんなに素敵なアルバムがあって良いんでしょうか! という作品です。歌心に溢れて溌剌としたホーン陣はもちろん素晴らしいのですが、しかしここでは、まず豪気で物分りの良いリズム隊が最大の魅力だと思います。大らかで柔軟なポー・チェンバースの真髄が聴けるのです。
ついつい、ボリュームを上げてしまいますねぇ~♪ 個人的には棺桶盤です。