あの、飯島愛が引退するらしいですね。
良くも悪くも凄い人だと思いますが、私のような者からすれば、エロの世界からお茶の間に入れた才能の持ち主として、印象的です。
なんでも体調の不良、病気が原因らしいです。背中の痛みが耐え難いとは、内蔵の悪質な病気でなければよいのですが……。
ということで、本日は――
■Miles Davis At Carnegie Hall (Columbia / Sony)
ジャズメンでは最も海賊盤が多いであろうマイルス・デイビスの、これは公式海賊盤という存在です。
つまりきちんとした録音では無く、プロデューサーのテオ・マセロが自分の記録用に残したテープから作られたブツということで、当然、音質もイマイチです。
しかし内容は極上という演奏が捨てがたく、なんとかスタジオで手を入れてリリースされたという経緯があるのでした。
というのも、これはマイルス・デイビスのレギュラーバンドがギル・エバンスのアレンジを使ったライブというのがミソなんです♪ 当然、オーケストラのパートはギル・エバンス子飼いのメンバーが演奏しています。
録音は1961年5月19日、メンバーはマイルス・デイビス(tp)、ハンク・モブレー(ts)、ウイントン・ケリー(p)、ポール・チェンバース(b)、ジミー・コブ(ds) という、当時最強のクインテット! そこへ曲によってギル・エバンス指揮のオーケストラが加わっていきます――
A-1 So What
あまりにも有名なマイルス・デイビスの大定番! しかもここでは、まずギル・エバンスのオーケストラが思わせぶりな導入部を演奏し、続いて、あの印象的なベースのリフが始まるのですから、たまりません。
もちろんテーマでもキメのアンサンブルがズレながらもビシッと決まり、マイルス・デイビスがクールで熱いトランペットのアドリブを存分に聞かせていく展開が、本当に憎たらしいほどです。テンポも早すぎず、遅すぎず、ちょうど私の好みなんです♪
ところで気になるのが、やはりハンク・モブレーの存在です。なにしろマイルス・デイビスに雇われたことが、この人の一生の不覚とまで言われるほどにイモ扱いが常識になっていますからねぇ……。しかし私には全然、OK♪ 確かに苦し紛れのモード地獄ではありますが、ハンク・モブレーならではの「節」が、ちゃ~んと出ています! ただ、あのタメとモタレを使わせてもらえないという曲想が遺憾なんです。
しかしリズム隊はイキイキとしていますねぇ~♪ ポール・チェンバースは録音の按配もあってか、ブンブンブン! クールにキメてズバッと切り込むジミー・コブ! 飛び跳ねるウイントン・ケリーという、当に黄金のトリオが、終盤の大爆発へ向けて疾走していく様は痛快そのものです。
A-2 Spring Is Here
これはギル・エバンスの編曲を主体にした短い演奏で、マイルス・デイビスの一人舞台になっています。
曲はもちろん有名スタンダードですから、そのメロディを知っていると、ここでの意味合いが深く楽しめる仕掛けになっていますが、個人的にはギル・エバンスの彩り豊かなアレンジばかり聞いてしまいます。
A-3 No Blues
これはクインテットが当時十八番にしていたハードバップのブルース! バンドはグイグイとスイングしていきますが、その推進力はリズム隊に他なりません♪
マイルス・デイビスは何時もの常套句ばかりを吹きまくりですが、ウイントン・ケリーが絶妙の合の手を入れてきますから、マンネリが心地良さに変わっていきますし、ハンク・モブレーは俺に任せろ! 最初は遠慮気味なんですが、途中からは止まらない大ハードバップ大会です♪
そしてやっぱりウイントン・ケリーが素晴らしいです。特にハンク・モブレーのバックで炸裂するキメを多用した伴奏も凄いですし、アドリブソロでも颯爽としていながら粘っこいフレーズがファンキー天国を現出させています。
もちろんポール・チェンバースとジミー・コブも、次にウイントン・ケリーが何をやるか、完全把握のコンビネーションですから、バンドは無限にノリまくり♪ 実はこの3人、ほどなくレギュラーを辞めていくのですが、マイルス・デイビスが途方に暮れたのも無理はないと思います。
B-1 Oleo
これが、また凄い演奏です。
残念ながらテーマの頭が欠けているんですが、ポール・チェンバースとジミー・コブの生み出すグルーヴが半端ではありません。マイルス・デイビスもミュートで思う存分に吹きまくりというか、リズム隊にケツを叩かれている雰囲気がミエミエです! ジミー・コブのブラシが強烈至極なんですねぇ~♪
ですからハンク・モブレーも覚悟を決めての突進というか、珍しく最初から闘志剥きだしのド迫力でモブレー節を披露してくれます。あぁ、このあたりは、マイルス・デイビス不要論さえ出てくる素晴らしさです。ジミー・コブのステックも激しさ満点! 全く油断出来ませんが、これこそハンク・モブレーです!
もちろん、ウイントン・ケリーも全力疾走していますよ。
B-2 Someday My Prince Will Come
邦題「いつか王子様が」ということで、イントロはもちろんポール・チェンバースのブンブンブンブンです♪ ただしここではマイルス・デイビスがテーマを吹いただけで終わってしまうのが???
テープ編集だとしたら、全く勿体無いですねぇ。
B-3 The Meaning Of The Blues
B-4 Lamen
B-5 New Rhumba
ここの3曲はメドレー形式で演奏され、もちろん、ギル・エバンスのアレンジによるオーケストラが付いています。
ただしこれは純粋ライブではなく、この音源がアルバム化される際にスタジオでダビングや手直しが行われたと言われておりますので、完成度もかなり高い仕上がりです。
中でも「New Rhumba」は躍動的で最高ですが、この3曲は名盤「マイルス・アヘッド」で決定的なスタジオバージョンが残されていますから、聞き比べも楽しみながら、実はアドリブやキメがほとんど同じという完成度なのでした。
ということで、音はそれなりですが、最近のCDではポール・チェンバースのベースが全面に出たマスタリングになっているので、CD鑑賞がオススメです。ちなみにアメリカ盤オリジナルLPは、モノラル仕様でも擬似ステレオ風のエコーがあり、ステレオ盤は当然、擬似ステレオですから、アナログ盤なら断然、日本盤が良いと思います。
あと、この日の音源からは続篇も作られていますし、コンプリートにした2枚組CDもあるようですね。個人的にはハンク・モブレーのコレクションとして入手したブツなんで、マイルス・デイビス云々よりは、リズム隊中心に楽しんでいるのでした。
ジミー・コブ、最高!