OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

疲れ盤

2007-03-08 18:25:06 | Weblog

昨日に引き続き、弥生の寒波が来襲して大雪になっています。

あぁ、完全なる異常気象!

ということで、本日は――

Roots And Herbs / Art Blakey & The Jazz Messengers (Blue Note)

アート・ブレイキー、もしくはジャズメッセンジャーズはハードバップ&ファンキーの代表選手とされていますが、やはりジャズの歴史をリアルタイムで刻んできたバンドだけに、時には進みすぎていた演奏も残しています。

特に1960年代前半の音源は、モード手法を大胆に導入していた時期だけに、今日でも古びていない演奏が沢山あります。しかしそれは聴いて楽しいか? と問われて絶句するものが確かにあって、久しくオクラ入りとなるセッションから作られたアルバムがこれです。

その原因は、おそらくウェイン・ショーターという、当時は駆け出しながら、ジャズ界では突出した異能が現場を仕切るように許されたからだと言われていますが、このアルバムは全曲がウェイン・ショーターのオリジナル曲ということで、そのあたりの検証も可能かと思います。

録音は1961年2月と5月、メンバーはリー・モーガン(tp)、ウェイン・ショーター(ts)、ウォルター・デイビス(p)、ボビー・ティモンズ(p)、ジミー・メリット(b)、アート・ブレイキー(ds) という黄金期の面々ですが、ピアニストが2人、曲によって交代しているのが面白いところです――

A-1 Ping Pong (1961年2月18日)
 モード期のジャズメッセンジャーズを代表する名曲・名演で、実際にライブの演目として頻繁に取上げられています。タイトルどおり「ピンポン、ピンポン」というベースパターンが入るリズミックな曲調が楽しいですねぇ~♪ アート・ブレイキーのリムショットとナイアガラ瀑布も冴えていますから、アドリブパートも大変に充実しています。
 まず、ウェイン・ショーターが作者としてのお手本というか、心底、カッコイイ、ミステリアスで力強いモード節を披露すれば、リー・モーガンはそこにハードバップど真ん中の彩りを添えていきます。
 そしてボビー・ティモンズまでもが起承転結が些か不明という、モード地獄で苦しみますから、全体の勢いは強烈至極です。
 つまり凄いんだけど、分からない部分が強いのでした。
 最後のテーマ部分ではリー・モーガンがヤケになったかのような吹奏で憂さ晴らし! するとウェイン・ショーターが同調していくあたりが最高です。
 
A-2 Roots And Herbs (1961年2月18日)
 ここではビアノがウォルター・デイビスの交代して、ハードバッブの剛速球が演じられます。ただし全体がモード手法に毒されているので、ウェイン・ショーターのアドリブからは奇々怪々なフレーズが連発されますから、ファンには痛快の極みでしょう♪
 当然、リー・モーガンも負けじと大ハッスル! あまり中身があるアドリブとは思えませんが、ラッパの鳴りは最高です。
 そして気になるウォルター・デイビスは正統派ブルース&ファンキーのフレーズで大奮闘! 全く好感が持てます。アート・ブレイキーも、ここでは安心したかのようですね。

A-3 The Back Sliders (1961年5月27日)
 ウェイン・ショーター流儀のファンキー曲というか、力強いハードパップでありながら、アドリブパートでは妖気漂う雰囲気になるあたりが、アブナイところです。
 なにしろアート・ブレイキー以下のリズム隊がゴスペル感覚なのに、ウェイン・ショーターがモード地獄の中で妙な音ばかり選んでアドリブしていくのですから、強烈なミスマッチ感覚がたまりません。
 しかしリー・モーガンは親分の意図を尊重してか、きわめて真っ当なファンキー節を主体にしています。ただし少しずつ新しい世界に接近していくところが♪
 ちなみに、ここでのピアニストは再びボビー・ティモンズに交代していますから、お待ちかねのゴスペル大会が嬉しいかぎり♪ アート・ブレイキーの爆裂バックビートが興奮を煽ります。

B-1 United (1961年2月18日)
 これもリズミックなリフを主体に組み立てられたモード曲で、アート・ブレイキーのリムショットが楽しさの源になっています。
 それはラテン風味があって、ワルツビートも兼ねているという凝ったものですが、こんな難しい曲を楽々とアドリブしていくウェイン・ショーターは、作者というだけの才能に止まらないと思います。
 またリー・モーガンも好演ながら、再び参加のウォルター・デイビスのピアノが軽くて良い感じです。
 それとアート・ブレイキーが異様に素晴らしく、リムショット主体のオカズの入れ方とかドラムソロでの変化技、十八番のフレーズさえも新しい感覚で行こうという意気込みに溢れた名演だと思います。

B-2 Look At The Birdie (1961年2月18日)
 アップテンポで作られたショーター節のテーマが、まず快感です。
 そしてここでもアート・ブレイキーが新しい感覚の伴奏を随所で披露して、若いメンバー達を鼓舞するんですから、全員のアドリブパートが冴えわたりです。
 まずウェイン・ショーターはテーマメロディの変形フレーズを繰り返しながら、シーツ・オブ・サウンドの亜流のような不思議系に撤していますし、リー・モーガンが独特のタメとツッコミでハードバップの真髄を追求! どうにもとまらない山本リンダ現象です♪
 またボビー・ティモンズが小気味良いピアノタッチで迫ってきますから、モードの嫌味なところが消されているのですねぇ~。ラストテーマもカッコイイです。

B-3 Master Mind (1961年2月18日)
 これがまた、シンプルにカッコイイというモード曲です。
 ジャズメッセンジャーズ版のマイルストーンズという感覚でしょうか、アドリブ先発のリー・モーガンが激烈トランペットで勝負すれば、ウェイン・ショーターは摩訶不思議なフレーズばっかり吹きまくり!
 あぁ、こんなんライブで聴かされたら、観客は戸惑いの嵐に投げ込まれる感じでしょう。ボビー・ティモンズでさえもファンキー節を捨て、ひたすらにモード地獄を彷徨っていきますからねぇ……。

ということで、ウェイン・ショーターのファンならば納得の名曲揃いだと思いますが、ファンキー&ハードバップを期待していると、間違いなくハズレます。

ただしアドリブの密度は以上に高く、濃い演奏ばっかりなんですねぇ。はっきり言って、疲れます。

またアート・ブレイキーの張り切りと頑張りが強烈な印象で、全くのド迫力!

それゆえにリアルタイムでの発売は見送られたのが理解出来ます。なんと発売されたのは、1970年頃でした。

現在はボーナストラック付きのCDとして復刻されていますが、おそらくジャズメッセンジャースの諸作中では人気が無いベストテンに入る可能性を秘めていますので、ご注意願います。

コメント (5)
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