強い球団が負ける試合を見ることは、私にとっては野球の醍醐味だ。
常勝巨人軍が弱小ヤクルトに、コテンパンにやられるのだからたまらない。
古田が解説してくれたので、素晴らしく分かりやすかった。
大分、差がついた回に捕手の阿部が澤村の球を返球した時だ。「阿部怒ってますね」
ワンバウンドの球を拭きもせず返した時だ。普通、土が付いたままの球をそのまま
返すわけがない。「相当怒ってますね。」
石川は最速で138kくらい。134kの速球で三振を取ったりする。そこに至る
までの配球の段取りが、ひとつの物語だ。同じ球は投げない。同じように見えて
球半個から一個分変化する。カットボール、ツーシームでインハイやアウトロー、アウトハイ
苦心惨憺して打ち取っているようにさえ見える。古田がいうように、リードしている時は
それが石川のペースだ。相手が調子に乗っている時は、どんなに工夫しても、だめな
時もある。ゆうべは8回が始まるまでは石川のワンマンショーだった。まわりがもっと
しっかりしていたら、もっと楽だったろう。だって1・2塁に走者がいてショートが取ったゴロを
三塁に送るんだよ。サードも球取りに行ってるから戻るのが遅れてオールセーフ、てな
具合。そんなことを繰り返しても交代の時、100球程度だった。さっきの外角ストレート
が「ボール」と言われることもある。
甲子園なら確実にアンパイアーの手が挙がっている。忙しいくらい上がる場所だ。
文句なしのストライクだ。しかし彼は慌てない。次のへんてこりんな球で打ち取る。
打者が想像もしない場所に変化球を投げてくる。結果、浅い外野フライになる。
甲子園の東北勢はよくやったと思う。ベスト4まで行ったのは奇跡に近い。
なぜなら球審を含む相手チームに勝ってしまったのだから。オレは途中から、ある
仮定のもとにゲームを観察してみた。それは丸ごと高校野球が賭博であって、球審も
自分で金を賭けていて、さりげなく有利にゲームを運ぶ。しかもドラマチックにだ。
そうして見ると、とてもスッキリ納得できる采配に映るのだ。そうだったのか。と一人
楽しんでいた。一球おまけしてあげただけで、あとは選手がドラマを作ってくれる。
うまくできた仕掛けだ。
石川はその手には乗らない。渾身の一球が「ボール」と言われても、次の手を持って
いる。そのコントロールもある。そこが甲子園球児との違いだ。チームメイトと並んだ
ショットを見ると、ひとり小学生が混じっているように見える。小さな大投手だ。
花巻東の千葉君は、あきらめず野球を続けてほしい。誰がなんと言ったって、
ファールで粘る打撃フォームは一朝一夕で会得できるものではない。
あの打法で野球規則に挑戦してほしい。
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