松美の言絵(いえ)

私は誤解されるのが好きだ。言い訳する手間が省けるから。

ヤクルト石川の投球に、プロの何たるかを見た。

2013-08-23 05:28:09 | スポーツ

強い球団が負ける試合を見ることは、私にとっては野球の醍醐味だ。

常勝巨人軍が弱小ヤクルトに、コテンパンにやられるのだからたまらない。

古田が解説してくれたので、素晴らしく分かりやすかった。

大分、差がついた回に捕手の阿部が澤村の球を返球した時だ。「阿部怒ってますね」

ワンバウンドの球を拭きもせず返した時だ。普通、土が付いたままの球をそのまま

返すわけがない。「相当怒ってますね。」

石川は最速で138kくらい。134kの速球で三振を取ったりする。そこに至る

までの配球の段取りが、ひとつの物語だ。同じ球は投げない。同じように見えて

球半個から一個分変化する。カットボール、ツーシームでインハイやアウトロー、アウトハイ

苦心惨憺して打ち取っているようにさえ見える。古田がいうように、リードしている時は

それが石川のペースだ。相手が調子に乗っている時は、どんなに工夫しても、だめな

時もある。ゆうべは8回が始まるまでは石川のワンマンショーだった。まわりがもっと

しっかりしていたら、もっと楽だったろう。だって1・2塁に走者がいてショートが取ったゴロを

三塁に送るんだよ。サードも球取りに行ってるから戻るのが遅れてオールセーフ、てな

具合。そんなことを繰り返しても交代の時、100球程度だった。さっきの外角ストレート

が「ボール」と言われることもある。

甲子園なら確実にアンパイアーの手が挙がっている。忙しいくらい上がる場所だ。

文句なしのストライクだ。しかし彼は慌てない。次のへんてこりんな球で打ち取る。

打者が想像もしない場所に変化球を投げてくる。結果、浅い外野フライになる。

甲子園の東北勢はよくやったと思う。ベスト4まで行ったのは奇跡に近い。

なぜなら球審を含む相手チームに勝ってしまったのだから。オレは途中から、ある

仮定のもとにゲームを観察してみた。それは丸ごと高校野球が賭博であって、球審も

自分で金を賭けていて、さりげなく有利にゲームを運ぶ。しかもドラマチックにだ。

そうして見ると、とてもスッキリ納得できる采配に映るのだ。そうだったのか。と一人

楽しんでいた。一球おまけしてあげただけで、あとは選手がドラマを作ってくれる。

うまくできた仕掛けだ。

石川はその手には乗らない。渾身の一球が「ボール」と言われても、次の手を持って

いる。そのコントロールもある。そこが甲子園球児との違いだ。チームメイトと並んだ

ショットを見ると、ひとり小学生が混じっているように見える。小さな大投手だ。

花巻東の千葉君は、あきらめず野球を続けてほしい。誰がなんと言ったって、

ファールで粘る打撃フォームは一朝一夕で会得できるものではない。

あの打法で野球規則に挑戦してほしい。

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