私の好きなSF作家にヴァン・ヴォークトというのがいる。彼の作品で「目的地アルファ・ケンタウリ」という長編があるのを思い出した。それはゆうべ夜更かしをしてしまって見た番組が、火星への旅を想定して6人の男女がハワイの溶岩台地で1年間暮らすというものだった。
限られたドーム空間の中で、それぞれが毎日アンケートに答えていく。それ以外は、植物や菌類を育てる者、仲間の状態を観察する医師、宇宙空間での建築設計士など。ストレスに強い者が選ばれた。ドームから出られるのは週2回。宇宙服を着て溶岩洞窟を探検することが許される。
3分の1が過ぎた頃、自分を良く見せることに疲れて、地を出し始める。半年が過ぎるとイライラが極限に達する。ある程度広いドームだが、自分以外の人間が出すノイズに我慢ならなくなる。そこで気分転換に成功したのは、一組のカップル。お互い家族が居て、しょっちゅうメールで家族の心配をしていたような人間だ。トレーニングをしながら、相手をおぶって階段の上り下りをし始める。二人の関係はすぐに認知される。
3分の2まで来た頃、給水設備が不具合を起こして、2週間シャワーが使えなくなる。一人が外の予備のタンクの汚れた水を使って、浄化装置を組み立てようと奮闘し始める。無視していた5人は協力を始めて、6時間掛かって11リットルの飲める水を浄化に成功する。
これが絆となって、ついに脱落者なしに365日目を迎える。という話。
宇宙に於ける歪みが太陽系に破滅をもたらすという予測に基づいて、地球を脱してアルファ・ケンタウリへ向かう宇宙船があった。天文学者レズビー博士の率いる「人類の希望号」である。だが理論上のミスから予定速度が出せず、宇宙船は難航した。船内には不平不満が満ち、やがて反乱へと発展したが「希望号」はシリウスへ、プロキオンへ、そしてアルタへと人類の新天地を求めて果てしなき虚空の旅を続けた。しかしその間、船内では5世代にわたって乗組員が交代し、やがて意外な事実が暴露された。鬼才ヴォークトが放つタイムギャップSF。(あらすじ原文のとおり)
もうほとんど内容は忘れた。しかしオレの記憶では、読者は文字通り宇宙の彼方から地上に真っ逆さまに落とされる。とだけ、申し上げておきましょう。