今回のオリンピックは日本人に数々の感銘を与えてくれたが、中でも最終日は圧巻だった。
マス何とか言う初めての競技での、高木菜那の金メダル。そしてカーリング娘たちの銅。英国の最後の1投を、日本では藤沢五月の「悪女の誘惑」と題して、秀逸な文章を載せている。これが文春なのは気に食わないが、すこぶる振るった書き方をしていて、さすがはそれでメシ食っているだけのことはあるわい、と思わせる。
要するに日本は終盤、藤沢五月を始めとするスーパーショットが連発して英国のスキップ、ミュアヘッドは相当にプレッシャーを受けていた。そこへ持って来て絶妙に誘惑を誘う位置にストーンが止まる。
このままでも1点は確実で、延長に持ち込める。でも黄色を蹴散らせば、2点入って勝ちだ。
英国の解説では、あの1投は彼女なら100回投げて99回は決まるイージーなショットだったと言う。ちょっと引っ掛かった。だって速い球で行くには手前の黄色が邪魔だし、遅い球は曲がりが大きく加減が難しい。
ま、とにかく悪女の誘惑に、見事引っ掛かったのがミュアヘッドだったと言うことだ。
そのあとの握手が早かった。藤沢は両手をバンザイしようと一瞬上げかけた。しかし握手の手を伸ばし、相手を称えた。それから静かに抱擁を繰り返す。
彼女たちはスキルでも、スポーツマンとしても、一流であることを証明した。