実は前の日から本荘に行くと決めていた。にっぽん原風景紀行で
「川湊に栄えた湧水の町・秋田県石脇」というのがあった。
見ていてがっかりした。6年も住んでいて、10年以上勤務した場所
のことを何にも知らなかったことが、ショックだったからだ。
自分の町のように感じていたのは、夜の街だけだった。
陸前高田のベルトコンベアの、つり橋より当たり前だが
大きかった。高さは変わらないかもしれないが、ワイアーの量が
違った。当然だが渡っていて揺れなかった。これと
対照的なのは、川下の本荘大橋だ。怖いくらい揺れる。
橋を渡った石脇は湧水の町だった。湧き水を利用した酒屋、しょうゆ・みそ、
本荘うどん。たぶん、裏に控える新山の影響だろう。
一気に上がってくる元気があった。それが信じがたい。
本荘は町の名がいい。城下町だから鍛冶町、肴町は当たり前だが、
日役町、古雪町などは風情が良い。オレは最初、東梵天に住み始め
キャバレーが向かいにある中竪町に引っ越し、永泉寺(ようせんじ)
という山門のある由緒ある寺の隣で最後を過ごした。