山上俊夫・日本と世界あちこち

大阪・日本・世界をきままに横断、食べもの・教育・文化・政治・歴史をふらふら渡りあるく・・・

背筋凍るTPPの真実(2)

2016年11月05日 11時14分59秒 | Weblog
自公与党と准与党維新が11月4日、TPP承認案を委員会で強行採決した。野党は一方的委員会開会に抗議し、全国で抗議行動が行われた。

引き続き、鈴木宣弘教授の論考によって、TPPの真実を記したい。
■元から競争力がある上に莫大な補助金で輸出競争力をつけるアメリカ農業
アメリカのコメ生産コストは、タイやベトナムの2倍はする。それでも60キロ4000円で輸出するために米政府は輸出金額の倍以上の補助金を出して輸出金額を下げている。日本の農業が過保護というのはウソだ。日本の農家に輸出補助金があるか。ゼロだ。アメリカ農業が強いのは、日本の1000倍の農地で生産するだけでなく、国から莫大な補助金をもらって輸出金額を下げているからだ。
わたしがまだ高校で教えていたころ、TPPもとりあげたが、アメリカの綿生産農家が輸出補助金で安く輸出し、その結果インドの綿花農業に打撃を与え、世界市場を獲得していったことを紹介していた。これは、アメリカの基本の農業政策だ。米政府は穀物3品目だけで1兆円もの補助金を出している。安い生産費の上に1兆円の補助金でさらに安く売ってくるのだから、日本のコメは太刀打ちできなくなる。TPPではアメリカの補助金はおとがめなし。アメリカの補助金漬けの農産物に対して、日本は垣根を低くし、丸裸になるのだ。日本政府は自由貿易が大事だ、TPPを逃したら保護主義に逆戻りするという。アメリカは補助金で日本市場、世界市場を獲得する、それがアメリカ流自由貿易だ。
 日本の農業が過保護だというのはウソだ。日本の農家の所得のうち、補助金の占める割合は4割弱で、先進国ではもっとも低い方だ。かたやEUの農業所得に占める補助金の割合は、英仏が90%前後、スイスはほぼ100%だ。なぜそんなふうにするのか。命を守り、国土を守り、環境を守っている産業を国民みんなでささえる。これがヨーロッパの常識なのだ。常識でないのが日本だ。
 日本政府は、日本農業は過保護だからTPPで競争にさらせば一部は輸出産業になるという。だが、食の安全、命、国土、環境の最後の砦まで失い、息の根を止められてしまう。
 ■農協「改革」の本質
 安倍政権は、農協は既得権益だ、この岩盤にドリルで穴をあけるといってきた。農協を目の敵にしてきた。だが農協は生協と同じような相互扶助組織だ。その農協にドリルで穴をあけるねらいは何か。
 日本とアメリカの金融資本がねらっているのが、信用と共済の140兆円の農協マネーだ。つぎに農産物をもっと安く買いたい大手小売りや巨大流通業者、そのつぎに肥料や農薬の価格を上げたい商社など。農協が悪いと、政府、テレビがいいふらして、農村市場を奪おうとしている。共生セクターとして地域の食・農・くらしを守ってきた農協に対して、それを既得権益だ、岩盤規制だといって解体し、農協によって支えられてきた地域のビジネスとお金をすべて奪うのが競争セクターによる農協「改革」の目的だ。
 農協の組合員である農家が農協をドリルで解体しろといっているのか。ちがう。日本を世界一企業が活躍しやすい国にするといっている、すなわち巨大企業の利益のためにこれを解体しようと旗を振っているのが安倍政権だ。350兆円の郵貯マネーをねらった郵政解体のつぎの策謀だ。郵貯解体は長年アメリカの対日要望書にかかげられていたものを、イラク戦争でアメリカのポチを演じた小泉首相がごりおしした。農協解体は農村市場から大金を東京の大企業に吸い上げるシステムづくりのためのものだ。
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