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テレビ局は、なぜ、パラリンピックを放送しなければならないのか?

2024年09月06日 | 国家論
ヤフー知恵袋より引用

パラリンピックを放送しないのは差別で、24時間テレビを放送するならパラを放送せよ。
と言う人が意外に多いようです。
そのような人々は、女子プロ野球を放送しないのは女性差別、と言うのでしょうか。
テレビを慈善事業だと思う随分世間知らずだなあと思います。
むしろ、関心が低いこの状況で「放送しろ」という人ほど
「障害者は、障害を持っても頑張っているから照らされなければならない」と
健常者と区別する差別主義者だと思います。
************

なるほど。

まず、パラリンピックを放送しないのが、差別かどうかは、
 オリンピックと比べ、明らかに対応が異なる
ことは、誰も否定しないはず。

このことに、正当な理由があるのか?
 視聴率が取れない=金にならない
から放送しないということが、
 正当な理由となるのか
この点を考えてみます。


まず、前提となる法律の知識。

障害者差別解消法(正式名称:障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律。以下「法」ともいいます)の
改正法が2024(令和6)年4月1日付けで施行されました。

改正法では、これまで民間事業者には努力義務とされていた「障害者への合理的配慮の提供」が法的義務となりました。

障害者差別解消法は、
 障害者基本法が定める差別の禁止の基本理念を具体化するもの
です。

障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本的な事項や、
行政機関等および民間事業者における
障害を理由とする差別を解消するための措置等を定めることにより、
障害を理由とする差別の解消を推進し、
もって
 すべての国民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、
相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現に資する
ことを目的としています(法1条)。

そのために、
 不当な差別的取扱いの禁止(法8条1項)
 合理的配慮の提供(法8条2項)
 環境の整備(法5条)
が規定されています。

障害者差別解消法は、
 日常生活および社会生活全般に係る分野を広く対象
としています。

なお、障害者の雇用に関することは、
 障害者雇用促進法
が適用されることになります。

障害者のお客さんに対し、
 うちは車椅子の入店はお断りしています
という対応は、
 不当な差別的取扱いの禁止
 環境の整備
に違反するおそれがあります。

そして、法8条2項では、
事業者は、その事業を行うに当たり、
障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において、
その実施に伴う負担が過重でないときは、
障害者の権利利益を侵害することとならないよう、
当該障害者の性別、年齢及び障害の状態に応じて、
社会的障壁の除去の実施について必要かつ合理的な配慮をするように努めなければならない。
と規定されています。

つまり、
 民間事業者が事業を行うにあたり、
 個々の場面において、障害者から意思の表明があった場合に、
 過重な負担にならない範囲で
対応を行う必要があることが義務づけられているわけです。
車椅子でも入れる席を用意するなど、

過剰な負担かどうかは、
 次の要素により、具体的な場面・状況に応じて総合的・客観的に判断することになります(基本方針第2の3(2))。
・事業への影響の程度(事業の目的・内容・機能を損なうか否か)
・実現可能性の程度(物理的・技術的制約、人的・体制上の制約)
・費用・負担の程度
・事業規模
・財政・財務状況


今回、車椅子の選手から、
 全く報道されないというのは、おかしい
という問題提起がなされました。

これは、
 健常者のオリンピックはあんなに熱心に報道して、
 障害者のパラリンピックは、まったく中継せず、報道もないに等しい
というのは、
 社会的障壁
にあたるので、
 なんとかしてほしいという「除去を必要としている旨の意思表明があった」
と解釈することができます。

テレビ局としては、
 国民の知る権利に奉仕するために、国際的なイベントである
 オリンピックやパラリンピックを報道する必要がある
といえます。

報道する側は、
 視聴率が取れるから報道する
というよりも、
 有限な公共の電波を使わせてもらっている公的なの存在として、
 国民の知る権利に奉仕する責務がある
から、報道するというわけです。

テレビ局は、公共の電波を使わせてもらい利益を上げている点で、
 民間企業よりも、公的な存在
ということになります。

民間企業でさえ、障害者差別解消法により、
 社会的障壁の除去の実施について必要かつ合理的な配慮をする
ように求められているので、
公的な存在であるテレビ局は、
 さらに高いレベルで、必要かつ合理的な配慮が求められている
ということになります。

必要かつ合理的な配慮としては、
 パラリンピックをもっと積極的に取材し、報道する
ということです。

・事業への影響の程度(事業の目的・内容・機能を損なうか否か)
  取材し報道する程度であれば、影響の程度は少ない。
・実現可能性の程度(物理的・技術的制約、人的・体制上の制約)
  全部の中継と異なり、取材、報道、ダイジェストの中継であれば、容易に実現できる。
・費用・負担の程度
  費用負担も大きな負担であるとはいえない。
・事業規模
  テレビ局は、公共の電波を利用し、莫大な利益を得ており、公益性の高い活動を行う法的義務を負う。
・財政・財務状況
  特に問題はなく、大きな損失を伴うものではない。


そのため、
 障害者差別解消法 
からしても、
 全く中継せず、メダルを取った選手のみ結果しか報道しない
という現在の消極的な報道は、
 問題がある
ということになります。

障害者団体は、
 連携して、テレビ局の報道について、障害者差別解消法の理念に基づき、 
 国会とBPOに訴えかける
とよいと思います。


女子プロ野球との違いは、
 オリンピック・パラリンピックが一つの国際的なイベント
として構成されている点で異なります。

国際オリンピック委員会(IOC)と国際パラリンピック委員会(IPC)は、
協働して競技大会の開催をしており、
スポーツによって心身ともに調和のとれた人間を育て、
平和な社会を実現するという理念のもと開催されている
 一つのイベント
です。

一体的なオリンピックというイベントについて、
 明らかな対応の差
は、
 障害者という点に着目した取扱いの差
と言われても仕方がないと思います。

報道する目的としては、
 障害者や障害者のスポーツの理解、啓蒙するという社会的な目的
も存在する。

まさに、
 相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現
のために、限られた公共の電波を活用し、利益を上げているテレビ局は、
 企業の社会的責任を全うするために、障害者スポーツの普及に協力する必要がある
わけです。

視聴率が取れないというのは、
 公益性の観点からは、相当な理由とはいえない。

お金にならないことは、
 報道しない
 中継しない
という姿勢は、
 社会的責任(CSR)が叫ばれる民間企業でも、批判される
のに、
 公的存在のテレビ局であれば、なおさら許されるものではない
わけです。


最後の
「障害者は、障害を持っても頑張っているから照らされなければならない」と
いう主張は、健常者と区別する差別主義者だと思います。
という点は、
 逆差別の問題として、次回。
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