知的成長戦略論-クールに生きる

かっこよく生きるためのメモ。
知的に成長し、どんな状況でも平静を保てる力を身につける。

自由のリスク

2018年10月19日 | スキルアップ
社会というものを考えた場合に、
 自由と社会の利益
の調整が不可欠となってきます。

憲法を勉強すると必ず出てくるのが、
 比較衡量
という概念です。

ある人の自由は、他の人の自由や社会の利益を侵害するので、
 自由は保障するけど、「公共の福祉」という制限があります。

では、どこまで自由が保障されるかは、
 侵害される利益(権利の性質)や侵害の程度

 それにより守られる他の人の自由や社会の利益の程度
を比較して考えましょう。

判例の構造もこんな比較衡量で、
 違憲かどうか
が判断されています。


例えば、
 表現の自由は憲法21条で保障されています。
ただ、
 大音量で、デモをされると、多くの人が迷惑を受ける
という不利益を被ります。

そのため、
 拡声機による暴騒音の規制に関する条例
で、音量を規制しています。

ただ、道路交通法など一定の規制がありますが、
 デモについては、表現の自由という重要な権利を侵害するおそれがある
ので、
 規制は難しい。

これに対し、
 ビジネスをしようとする
と様々な規制があります。

営業の自由という権利を侵害されているわけですが、
 国民の権利を守るため
という大義名分のもと、規制が認められやすい傾向にあります。

最近では、消費者契約法や、特定商取引法、薬事法など、
 業者にとっては、規制が厳しくなっています。


基本的には、
 規制が多くなりすぎると、息苦しい社会となる
わけですが、
 規制をかけないと、悪徳業者が弱者を虐げる
ため、規制が必要となります。

そして、
 この規制の必要性は、時代の流れと共に、変わっていく。


アマゾンの拡大とともに、
 町の商店は消えていく。

さらに、最近は、レンタルビデオ店が消えていっている。



同じ状況は、1970年ころ、
 スーパー、百貨店が力を持ち出した時代に起こりました。

そのため、小さな商店(町の商工会議所)との利害調整のため、
 1974年 大規模小売店舗法が成立しました。

その後、
 2000年の大規模小売店舗立地法により、大規模小売店舗法は廃止されました。

そのため、事実上の障壁がなくなり、
 ショッピングモールが急速に増えていき、
 かつての商店街がシャッター街化していく
ことになります。


そして、郊外にショッピングモールや、大型スーパーができた。

これが、2015年以降のアマゾンの大躍進により、
 売上げが減ってきている。

徐々に、郊外のショッピングモールや大型スーパーの統廃合が起こる。

そして、買い物難民が生まれる。

ただ、
 買い物難民も、今後は高齢者のIT普及率が高まるため、
 アマゾンや楽天などに流れる
ため、
 食品や日用品程度が困る
というようになると見込まれます。

そのため、
 スーパーが移動式販売者を活用しつつあり、
 そういったすきま市場を開拓しており、
 今後も増えていく
と思われます。



問題は、シャッター街化した駅前などの店舗が、
 一部のマンション販売業者に食い荒らされている
という事実です。

これは、20年、30年後に問題が深刻化してくると思います。

都市として、理想的なのは、
 シャッター街化した町の一等地をまとめて再開発する
というプランです。

そのためには、
 地権者の同意を得たり、近隣住民の同意、区画整理など、
 町ぐるみで、長期計画を練って、実行していく
必要があります。

ただ、うまくいくと、
 町としての価値が高まるため、全体の利益となる
わけです。

しかし、
 現実はというと、そのような都市計画が練られていません。

例外的に、東京の場合は、ディベロッパーが中心となって、
 自治体や住民を巻き込んだ再開発がなされています。

これは、市街地再開発事業と言われています。

しかし、こういった動きは、本当に例外的で、
 名古屋のような大都市でさえ、そのような再開発事業はわずかです。



そのため、
 マンション業者が、廃業した地権者から、商店などの土地を購入しています。

もともと、商店街などは、住宅地ではないため、容積率や建ぺい率が緩やかなので、
 容積率ぎりぎりの分譲マンションを建てて、市場よりやや安い価格で売ります。

場所がよく、値段も他のマンションと比べ安いいので、売れるわけです。

https://www.leon-works.com/fw_%E3%83%97%E3%83%AC%E3%82%B5%E3%83%B3%E3%82%B9/

https://nagoya-pressance.jp/area/

ビジネスモデルとしては、よくできていると思いますが、
 長期的な都市計画としては、問題が生じてきます。

そこに、分譲マンションができてしまうと、
 全体の再開発というプランは立てられなくなる
ためです。

再開発は、利害関係人が多くなると、難しくなります。
そのため、分譲マンションのように、狭い土地に、
 30世帯(2件かける15階)も利害関係人がいる
と、立ち退きの合意を得ることは事実上無理です。

しかも、立ち退き費用の他、解体費用も莫大になるため、
 その土地は、再開発事業から外さざるを得なくなる
というわけです。


名古屋と東京の最大の違いは、
 東京は、駅ごとに再開発により、大きなビルが建てられ、
 都市が整備されている
のに対し、
 名古屋は、名古屋駅周辺と栄の一部くらい
しか、そのような再開発はなされていないということです。

戦後に建てられた建物が、老朽化のため、再開発の時期を迎えていますが、
 栄の北の地区である丸の内駅周辺は、
 同じ分譲マンション会社のマンションが建ちまくっています。


市街地再開発事業への取組みが、都市の魅力の違いを生み出しています。

東京
http://www.toshiseibi.metro.tokyo.jp/bosai/sai-kai.htm
 
大阪
http://www.pref.osaka.lg.jp/toshiseibi/saikai/saikaihatujigyou.html

名古屋
http://www.city.nagoya.jp/shisei/category/53-10-7-3-9-3-0-0-0-0.html

名古屋が、市街地再開発事業にいかに取り組んでいないかが分かると思います。
そのため、三大都市と言われながらも、魅力がないと、言われているわけです。


深刻なのは、こういった取り組みの違いは、
 20年後、30年後、50年後
に影響してくるということです。

名古屋は、トヨタ及びトヨタ関連企業に依存しているため、
 今後、トヨタが現地の生産量を増やしていく
ことになった場合には、
 一気に、都市人口、企業数、税収が減少する
おそれがあります。

都市としては、個人の自由を制約しながらでも、
 都市の魅力を整備する必要がある
と思います。

そのため、中核部は、市街地再開発事業を活用し、
 一部の土地を虫食いに消費する分譲マンション業者から守る
必要があるわけです。

これが、「公共の福祉」というものだと思います。

自由は、社会や都市の成長を阻害するというリスクを孕んでいます。
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