YS Journal アメリカからの雑感

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アメリカ高速旅客鉄道網、夢のまた夢

2010-09-23 12:24:32 | アメリカ経済
昨年の景気刺激策の一環で、既に$8B(約6千500億円)の予算か付いている高速旅客鉄道網構想が、既に暗礁に乗り上げている。

景気刺激策は、過去数十年に民主党議員が提案しながら、結局予算が付かなかったペットプロジェクトが山の様に入っていると言われていたが、どうやら高速旅客鉄道網もその一つのようだ。リーマンショック後のドサクサで、碌な審議もせず民主党が強引に可決しオバマ大統領が速攻で署名したのであるが、即効性のある景気刺激策と大宣伝したの割には、未だに5分の1しか消化していない。

失業保険給付延長の審議で、使われてない予算を割り当てるアイデアが共和党から出ていたりするのだが、民主党は既に成立している打ち出の小槌のような予算から一銭(一セントと言うべきか?)たりとも出す気は無い。

アメリカでの高速旅客鉄道網で一番の問題となるのは、現在、主に貨物用になっている低速の鉄道網を活用して、高速列車を走らそうとしている事である。

旅客列車は基本的に、この鉄道網を利用して運用されている。(Amtrack)旅客列車の最高速度は時速79マイル(145キロ)で、より遅い貨物列車と上手く共存出来ている。もし、ここに高速旅客列車を走らすと、遅い貨物列車は度々通過を待つ事になり、効率が極端に落ちる。

高速旅客鉄道網が計画されている路線を所有している鉄道会社(基本的に貨物)が、既存の路線を利用する事も、又、新たな路線を敷設する事にも反対している。(鉄道会社が所有する土地が必要な場合、売却を拒否する表明している)

アメリカの場合、全体として人口密度が低い上に、自動車と高速道路の普及及び旅客機の発展で、旅客鉄道が必要なくなっている。よって、今更、新たな路線を敷設しても絶対に採算の合わない事は火を見るよりも明らかである。既存の路線は貨物を運ぶ事に集中する事で、効率化が進んでいる。

既存の路線で高速旅客鉄道網が整備されれば環境に良いとか、ヨーロッパや日本の新幹線への憧れとか、全くの思いつきで出てきたアイデアに違いない。

鉄道会社もしたたかで、予算の一部を使って調査を行っているし、今後線路の改修などにもこの予算が使われる可能性もあるが、高速旅客列車に既存の線路を開放する事は絶対に無いだろう。

つい先日もカリフォルニア州知事シュワルッツネッガー(今年で任期も終わり)が日本で新幹線の視察を行ったようだが、このような事情でアメリカでは商売にならないので、JRは変な期待をアメリカのしない方が得策だろう。