無知の知

ほたるぶくろの日記

がんの免疫療法について

2012-11-04 11:17:53 | 生命科学

しばらく前にがんの免疫療法について少し書こうと思いました。自分自身のメモの意味もありました。ところが調べ始めますとなかなか奥が深く、しかも日進月歩の様子で簡単ではないことに気づきました。とくにこれまでほとんど分かっていなかった自然免疫の分野で知見が積み重なっており、これまでの免疫に関する病気の概念が変わっていく可能性もあると思われます。 

しばらく暇を見つけては勉強をしてきたのですが、最近やっと一般に行われている免疫療法に関してなんらかの見解をまとめることができるかもしれないと思えるようになりました。もしものときの参考にして頂ければと思います。 

 

最近の免疫療法の主流は大きく分けて3種類あります。

一つは活性化自己リンパ球療法や樹状細胞療法などす。患者さんの免疫細胞(単球など)を末梢血から取り出し、サイトカインを組み合わせて培養し、細胞数の増幅と活性化を行い体内に戻すものです。もっとも広く行われている免疫治療かもしれません。 

二つ目はがん特異的抗原とされるペプチド(WT-1など)を患者さんから取り出した樹状細胞に接触させ活性化し、患者さんに戻すというものです。

三つ目は自家がんワクチン療法です。こちらは患者さん自身のがん組織の加工品をアジュバンドとともに注射するというものです。

 

どれもまだ始まったばかりと言ってもよい療法で評価は定まってはいません。

一つ目の方法は分化、活性化のための培養にお金がかかり過ぎますし、感染など医療事故の可能性も考えられます。二つ目の方法はがん特異的抗原とされる分子が限られているため、耐性のがん細胞がでてくるなど特異的抗原分子を巡りいたちごっことなる可能性を持っています。三つ目はがん組織全体を抗原として使いますので、幅広い抗原に対する免疫反応が期待できます。どの抗原を攻撃対象とするのかは、患者さん自身の免疫系が選択するのです。ただこの療法では「注射する」というところに弱点があるとおもわれます。自然免疫や細胞性免疫の活性化ががんの免疫治療では重要だと思うのですが、そのためには「注射」という投与方法が果たしてふさわしいかどうか検討の余地があると思います。

 ここからは私の個人的な見解ですが、三つ目の自家がんワクチン療法が最も効率よく、しかも長期的に抗がん効果があるのではないかと考えています。現在の免疫療法全体の分類ですが、あるサイトの模式図では「非・特異的」療法から「特異的」療法へ「進んでいる」と説明されています。しかしそれが本当に進んでいるのかどうかはまだわかりません。これだと思った特異的抗原がまた変化していく可能性があるからです。免疫系は複雑なモビールです。人が人工的にそのバランスに手を入れることは慎重でなくてはならないと思います。 

さて、もしも今私自身が使うことになったらどうするか? 私は三つ目の療法を選ぶだろうことを最後に申し上げておきます。