中国政府が、自国産のレアアースを戦略上の武器にして、輸出制限をかけたことは記憶に新しい。当時は、レアアースの産出量で中国産が圧倒的に多かったので、その一瞬は、世界に動揺が走った。中国政府の高笑いが聞こえてくるほどであった。しかし、この種の政治的な動きの効果は長く続かない。OPECがパレスチナ戦争時に発動した原油の輸出制限も、一瞬は、世界はどうしようかと慌てふためいたのだが、時間が経てば、どの国も、その対応策を考える。日本のように、輸入先の多角化を図るところもあれば、なければ使わなければ良いという国まで、いつの間にか、なければ無い中での工夫がなされるのである。レアアースの場合も同じである。08年当時、日本は中国からの輸入が90%以上を占めていたのだが、今では、その輸入割合は59%台にまで低下している。つまり、日本は調達先の多元化のほか、都市鉱山からの回収、レアアースを使わない技術の開発などを進めたのである。当時はレアアースが中国以外ではとれないと思われてきたのだが、捜せば、いくらでもあるようで、レアアースがレアでなくなりつつあるのである。だから、今やマレーシアが日本の大きな調達先になっている。さらに言えば、南鳥島近海には膨大なレアアースが存在するという調査も進んでいる。これはたぶん、経済封鎖や経済制裁などにも同じようなことが言えるのであろう。北朝鮮にしろ、ロシアにしろ、かつてのキューバだって、生活レベルには影響が生じるかもしれないが、だからと言って、その状態の中で暮らしていけば、人間なので、工夫と知恵で、何事も無く過ごしていけるのである。(2015.4.18)