エッセイ クリスマス・イブ
「お母さん、分かったぞ」買い物から帰りドアーを開けると、長男の大きな声がした。
「さっき、山洋堂から三国志が届いているって電話があった、クリスマスに間に合いましたって」
クリスマス・イブの夕方の話である。
プレゼント用にと、先週から近所の本屋に頼んでいた漫画、三国志のシリーズものだ。
長男は小遣いを貯めては買っていた、だからクリスマスプレゼントに纏めて買おうとしたのだが、何巻か抜けていた。
それが揃ったとの連絡だ。
「そう」と平静を装ったが慌てた、本屋さんは正直すぎる。
「サンタクロースはやっぱりお父さんと、お母さんだったんだ」
「違うよ、疑うとサンタさんはこないよ」と言うと「変だと思ってたよ、ずーと前も高島屋の紙に包んであったもの」
長男は五年生、二男はまだ幼稚園。
長男は本当のことを知ってもいい、だけど二男の夢を壊してはいけない。
「それはお父さんがプレゼントをしたいからって頼んでいたのものよ、疑ったら本当にサンタさんが来づらいよ」
困った、今からではデパートにも行けない、夫は年末の追い込み中だ。
約束したコーンスープもまだ作っていない。
夫は子どもたちが寝てから帰ってきた。
「この前、会社の懇親会で貰った物は」という。
袋の中を見ると、大きく「闘魂」と書かれた将棋と、訳の分からないゲームが入っていた。
仕方がない、あの子の知らない包装紙に包み変えた。
K君のお母さんは、プレゼントを上げる時一工夫をするとか。
寝る前、子供達と一緒に雨戸を少し開けておき、入口にお盆に載せた紅茶を置くのだそうだ。
深夜、プレゼントを置き、雨戸を閉めて冷えた紅茶を半分だけ飲んでおく。
「サンタさんは忙しいから全部は飲めないの」と。
父や母はいっぱい嘘をつく。
課題 【七つの大罪】 2015・11・27
先生の講評 結語の父や母はいっぱい嘘をつく。 が、とても優しい。
その前の伏線(事例)がたっぷり効いているのでストンと心に落ちる。
構成、描写も良い。殆んど直せない。
つつじのつぶやき・・・
結語、「父」「母」「いっぱい」「嘘をつく」
分かりやすい短いことばの中に、
大きな意味の4つの言葉が入っている。
と、コメントもいただきました。
今年最後の授業、褒めていただきました。
皆さま、良いお年をお迎えください。
かつてツリーに飾られていた小物達
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます