エッセイ 中央線
土曜日の早い時間、中央線に乗った。
車内は半分ぐらいの乗客が座っていた。
これから仕事というような人は少なく、隣の席の若者は、昨日の疲れが出ているのか、
ぐっすり眠りこんでいる。
ある駅から4人の若い女性が乗り込んできた。
乗り込んだと言う勢いはなく、だらだらっと席に腰掛ける。
私の斜め前なのでつい目についてしまう。
化粧はしていなく、髪も少しブラシをかけたくらい。
身につけている服装はまあまあだが、今朝選んで着てきたという感じはなかった。
会話もなく、膝を緩めた座り方をしている。
2駅過ぎたころ、1人が話し始めた。隣の女性は反応弱く相槌を打った。
私は想像した。昨晩は誰かの家に泊まり、遅くまでおしゃべりをして、
もう話すことが無くなったのだと、私にも覚えがある。
あの頃、4~5人の友人たちとよく集まった、今で言う女子会の様な集まりだった。
喫茶店で待ち合わせ、揃ったところで食事にいく。
食費にはお金をかけなかったので、町の洋食屋か、時々和食の店だった。
情報通の1人が「伊勢丹の裏に美味しいシチュー屋がある」とか、
「おでん屋の茶飯が美味しい」などと言うと皆ワイワイついて行った。
そのあとは、流行りの「コンパ」というバーに行く。
丸い大きなカウンターがいくつもあり、ボーイさんがカクテルを作ってくれる。
雰囲気が変わると、又盛り上がる。
ある時、いつもは喫茶店だけで帰る浜ちゃんがずーと付き合った。
浜ちゃんは髪を染め、つけまつ毛をし、濃いお化粧をしている。
妹さんはモデルで、「撮影の時は、つけまつ毛を2枚も3枚もつけている」と言っていた。
終電車が無くなり、2~3人が私の部屋に泊まった。
少し時間が経った頃、浜ちゃんは酔った勢いで、「部屋が暗い」と言ってつけまつげを取り、
どうだと言うように顎を突き出した。
浜ちゃんの一重まぶたの平凡な顔を見て、みんなで笑ったことを思い出した。
課題【中心・周辺】
先生の講評 いいねー。人物描写が実に生き生きとしている。
現在と過去の組み合わせ具合もしっくりして、
青春の惜別感がある。
ある時代と、若者の姿が再現された。
つつじのつぶやき・・・ 少し褒めていただいた作品です。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます