トシの旅

小さな旅で学んだことや感じたことを、
まとめるつもりで綴っています。

1年に2日間だけ営業するJR津島ノ宮駅

2016年08月06日 | 日記

香川県の西部に位置する三豊(みとよ)市の海岸から、沖合にある津島に鎮座する津嶋神社に向かって延びる橋が見えます。この橋は、1年に2日しか使われない橋なのです。「子供の神様」として、多くの人々の崇敬を受ける津嶋(つしま)神社の参道になっています。

JR予讃線の多度津駅に掲示されていた津嶋神社の夏季大祭のポスターです。毎年、8月4日・5日に開催される夏季大祭の2日間で10万人の参拝者があるといわれる神社です。津嶋神社の祭神は素戔嗚命(すさのうのみこと)。「牛馬の神」「子供の神」として信仰を集めてきましたが、大正時代の後期から、「子供の守り神」として親しまれています。昭和27(1952)年、それまでの「津島神社」から「津嶋神社」と改称されたそうです。

この写真は、最寄駅のJR予讃線の津島ノ宮駅の構内です。津嶋神社の夏季大祭の行われる2日間だけ営業する臨時駅です。予讃線の列車も、この2日間以外は停車しないで通過していきます。右側のツートンカラーの平屋建ての駅舎まで、年間で2日しか営業しない駅には場違いのような、広いスペースが確保されています。

営業されていない日のようすを見ようと、夏季大祭の1週間ほど前にJR津島ノ宮駅を訪ねました。このときは、JR土讃線との分岐駅である多度津駅から観音寺行きの電車に乗り継ぎました。津島ノ宮駅は、多度津駅の次の海岸寺駅と、その次の詫間駅との間にありました。海岸寺駅からは3.3km進んだところ、詫間駅からは2.2km引き返したところだそうです。そのため、詫間駅まで行って引き返しました。津島ノ宮駅は1面1線のホームをもち、ホームは大きくカーブしてつくられていました。

多度津駅側からの津島ノ宮駅への入口にあった大見踏切です。高松駅から39.8kmの地点、踏切名のとおり、津島ノ宮駅は三豊市三野町大見にあります。大正4(1915)年5月7日に、仮乗降場として開業しました。その後、昭和44(1987)年10月1日に臨時駅になったそうです。今年の営業は、8月4日は9時から22時まで、5日は9時から13時まで、この間、4日には上下42本、5日には上下10本の列車が停車することになっています。たくさんの人が乗降しているようですが、2日間で乗車した人の数は1日あたりにならすと、2014年では5名にしかならなかったようです。臨時駅でも仕方がないのかもしれませんね。

津島ノ宮駅から歩いて5分ぐらいで、津嶋神社の遥拝殿に着きました。平素はここにお詣りするのでしょう。

その遥拝殿の脇にあった本殿への参道、津島橋の入口です。昭和8(1933)年に、地元の大見村長だった倉田弥次郎氏が発起人となって、架橋したといわれています。平素は通行禁止で、橋の入口は封鎖され、橋桁に敷き詰められている木製の板も撤去されているそうです。大祭の1週間前には、橋桁の上の板はすでに敷かれていました。大祭の準備が、順調に進んでいると感じました。

まっすぐに延びる250mの津島橋の向こうに、津嶋神社の本殿と鳥居が見えました。本殿は、江戸時代中期の宝永3(1706)年に、当時鼠(ねずみ)島とも呼ばれた津島に、富山安兵衛によって造営されました。現在は、銅板葺きの立派な建物になっています。

8月5日の大祭の日。たくさんの子供連れが待つJR多度津駅ホームに、観音寺行きの普通列車が入ってきました。その人たちと一緒に、津島ノ宮駅に向かいました。

乗車して5,6分で、津島ノ宮駅に着きました。ほとんどの乗客が下車しました。子どもの姿が目立ちます。ホームに待ちかまえていた駅スタッフが忙しく動き始めました。

駅スタッフは、子どもたちが電車から降りるときの介助にあたっているのです。停車した電車は、カーブの内側(ホームの反対側)に向かって、かなり傾斜しています。ホームとの間には、高さも幅もかなりの段差ができています。怖くて降りられない子どもたちを抱え上げてホームに降ろしているのです。

広い構内を埋め尽くす人たちです。下車した人は、駅舎の左側に開設されている改札口に向かって進んでいきます。

これは、1週間前の駅舎のようすです。入口には、鍵もかかっていました。

大祭の日の駅舎のようすです。駅スタッフの詰所と精算所、出札口が設けられていました。

屋根の下の壁面には「つしまのみやえきちゃん」の顔が描かれ、その下には、長い歴史を感じさせる「津島ノ宮駅」の駅標も掲示されています。駅舎と線路の間には、乗客の案内や介助にあたる駅スタッフの詰所がつくられていました。葦簀(よしず)や簾(すだれ)をかけて暑さ対策もなされていました。

改札口付近につくられた精算所です。簾と扇風機で暑さをしのぎながら、仕事に精を出す駅スタッフの姿が見えました。

鉄道グッズの販売店も店開きしていました。駅名のキーホルダーは、税込み500円。JR予土線にある「半家(はげ)駅」のキーホルダーが「一番売れているよ」とのことでした。半家駅は、かつて、名前に惹かれて訪ねた駅(「海洋堂ホビートレインに乗って「はげ」駅へ行きました」2014年7月25日の日記)でした。

改札口の外にあった出札口です。線路側と同じように「つしまのみやえきちゃん」が描かれています。「きっぷうりば」の看板や運賃表が掲示され、改札口らしく改装されています。

改札口を出て左に向かう参道には、屋台が並んでいます。祭礼にはつきものですが、1週間前には想像もできなかった華やかさです。

警備詰所を右折すると津島橋に続く通りに出ました。手洗所と狛犬、鳥居が並んでいる先に、津島橋が見えてきました。

1週間前の鳥居の前のようすです。ずいぶん雰囲気が違います。

参詣を終えて、アイスクリームを食べながら歩く人の姿をたくさん見かけました。どこで買ったのだろうかと思って歩いていたのですが、このお店のアイスクリームだったようです。

「しあわせ橋切符売場」。津島橋を渡って本殿にお詣りする人は、ここで、300円(子どもは150円)の切符を買ってから渡ることになります。

子ども連れの人が多いので、ゆっくりと歩いて行きます。大変な暑さでしたが、海の上は心地よい風が吹いていて快適でした。江戸時代には、このあたりは潮干狩りができる遠浅の海が広がっていたそうです。また、本殿の裏は瀬戸内海の美しい島々が連なっていたところだったようです。

250mの橋だそうですが、ゆったりと歩いているせいか、ずいぶん時間がかかりました。

やっと、対岸に着きました。階段を上れば本殿です。

本殿から見た津島橋と遥拝殿方面です。遥かに、三豊市三野町大見の町が広がっています。本殿を離れていく、たくさんの参拝者の姿も見えました。

戻ってきました。遥拝殿の前です。屋台が並んでいるすぐ裏でしたが、大変静かでした。

屋台の間を通って津島ノ宮駅の東の入口にある大見踏切まで帰ってきました。踏切には2人の駅スタッフがおられ、列車が通過するたびにロープを張って遮断機の代わりにして、安全に努めておられました。

畑の中の道を通って改札口から構内へ入ります。昼前になり日差しがかなり激しくなっていました。

ホームにある駅標の裏には「日本一営業日が短い駅」と書かれたイラストが書かれていました。これをバックに集合写真を撮る家族がたくさんおられました。現在、日本で一番営業日が少ない駅は、JR東日本磐越西線の猪苗代湖畔駅で、年間営業日は”0”だそうです。しかし、平成19(2007)年から営業停止扱いになっているそうで、実質的に「日本一営業日が短い駅」はここ津島ノ宮駅になります。現状では、この駅はこの先も営業停止扱いには決してならないでしょう。これだけの人が参拝に訪れる駅ですから・・。状況が激変しない限り、「日本一」の座を他に譲ることはないのではないでしょうか。

「お願いします」という声が聞こえたので、振り返ってみると、駅スタッフに撮影を依頼する女性の姿が・・。電車の到着時間を気にされながら、乗客の要請に応じる駅スタッフの姿が見えました。誤解がないように付け加えますが、こうして乗客の支援をされていても、まったく、本来の業務に支障はありませんでしたよ! 酷暑の中、参拝される人と、参拝される人のために働く人、どちらも本当にお疲れ様でした。

テントとパイプ椅子の待合室です。日差しだけは遮ることができそうです。参拝される人に対する配慮がしっかりとなされていて、見ていて気持ちのいい駅になっていました。

JR四国には、もう一つ臨時駅があります。JR牟岐線の田井ノ浜駅(「JR四国、もう一つの臨時駅」2016年8月6日の日記)。こちらは、海水浴場が開かれている期間だけ営業する臨時駅です。次は、田井ノ浜駅を訪ねようと思いつつ、津島ノ宮駅を後にしました。






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