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JR新見駅。岡山県西北部の交通の要衝新見市の玄関口です。岡山からは伯備線の”特急やくも”で1時間。この日は特急ではなく、青春18きっぷを使って1時間半かけてやってきました。伯備線で新見の駅の一つ先にある”秘境駅”、JR布原駅を訪ねることにしていました。
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岡山からの伯備線の下り列車は、新見駅の4番ホームに到着しました。
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何気なく見上げた駅標。左の次の駅が「びっちゅうこうじろ(備中神代)」と書かれていました。めざす布原駅は新見駅の次の駅だと思っていましたので、新見の次に備中神代と書かれていたことに、少し違和感を覚えました。
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私は、この日、13時00分に新見駅を出発する芸備線の列車で、布原駅に行くつもりでした。芸備線、姫新線のホームである1番ホームに向かいました。
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1番ホームです。列車はすでに入線していましたが、駅標が気になりました・
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芸備線のホームの駅標には、新見駅の次の駅として「ぬのはら(布原)」と書かれていました。路線によって次の駅が異なることは当然です。しかし、今回のケースのように、同じ伯備線にありながら、伯備線の案内に名前がないのはどういう意味か、私には理解できませんでした。
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時刻表をみると、布原駅は新見駅と備中神代駅の間にある伯備線の駅です。しかし、伯備線の普通列車はすべて布原駅を通過しています(しかし、実際には行き違いのために運転停車をする列車が一部ありますが)。布原駅に停車するのは、すべて芸備線の列車でした。そういう運行上の理由で、伯備線の案内には書かれていなかったのでしょう。「伯備線の駅でありながら、伯備線の駅ではない」布原駅になってしまったのです。
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ホームにあった時刻表です。芸備線の布原・東城・備後落合方面行きは1日6本。土・日曜日と祭日の休日には5本しかありません。しかも、休日は、始発の5時18分の列車の次は13時00分発の備後落合駅行き。この間1本の列車もありません。かなりの過疎路線です。
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さて、1番ホームには、13時00分発の列車がすでに入線していました。キハ120342号車、布原駅は電化区間ですが、芸備線の列車のため、ディーゼルカー(DC)の運行です。
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DCの単行列車、ワンマン運転でした。安全確認をして出発し、運転しながら案内放送を流し、駅に到着したらドアを開き料金を受け取り、ドアを閉めて再び「出発進行」。この間、常に安全確認を続けます。ワンマン運転の運転士さんは、かなりの集中力が必要ですね。
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定刻どおり13時ジャストに出発しました。右側に新見の町を見ながら進みます。やがて、布原駅の手前にある苦ヶ坂トンネルに入ります。
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苦が坂トンネルを抜けるとすぐ鉄橋を渡ります。第23西川橋梁です。かつて、伯備線がSL撮影のメッカだった頃、多くのSLマニアが、苦が坂トンネルに入って行く3重連のSLが牽引する貨物列車を撮影したところです。
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鉄橋を越えると緩やかな右カーブ、続いて、左カーブになります。その先に布原駅がありました。さて、布原駅のある伯備線の備中川面駅と足立駅間は、昭和3(1928)年に開業しましたが、布原駅が開業したのは、半世紀以上経った昭和62(1987)年のことでした。国鉄の分割・民営化と同時期のことでした。前身である布原信号場は、昭和11(1936)年に設置されたようです。ちなみに、芸備線の備中神代駅から西の矢神駅までが開業したのは、昭和5(1930)年のことでした。
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13時06分布原駅に到着しました。下車したのはもちろん私一人です。列車は、すぐに次の備中神代駅に向けて出発して行きました。この備後落合行きの列車は備中神代駅から芸備線に入り、14時24分備後落合駅に着きます。そして、14時34分、折り返しの新見行きとなって出発します。布原駅に帰ってくるのは15時52分です。ということは、それまでの約3時間、この駅で過ごすことになります。午後から雨になるとのことでしたので、天候が心配でした。
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布原駅の全景です。駅舎や待合室はもちろんありません。屋根のないホームが、上り下りに1つずつつくられていました。ホームは列車1両分があるだけです。山の尾根が川に向かって張り出したせまい地形のところにつくられた駅だけに、ホームの幅もかなり狭くなっていました。
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構内にあったのは、ただ一つ、布原公会堂の建物だけ。入り口には「老人いこいの家」という表札が架かっていました。
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ホームの土台を支えていたレールです。
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土台のレールの脇にあった時刻表と運賃表。これが、唯一、駅らしい掲示物です。
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時刻表の下部に書かれていた停車駅の案内です。この先、終点の備後落合を含めて11駅あります。折り返して帰ってくるまで約3時間かかるのも、当たり前のことですね。
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さて、布原駅を出発した、私が乗車してきたキハ120342号車は、その後大きく右カーブをして鉄橋を渡っていきました。
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駅の周辺を歩いてみることにしました。まずは、乗車してきた列車が渡った鉄橋をめざして、駅の脇の道を進みました。
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10分ぐらい歩くと、道の左側にあった民家の敷地内に踏切の遮断機と警報機が見えました。詳しいお話をお聞きしようと思って声を掛けましたが、ご返事がありませんでした。写真だけとらせていただきました。
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第22西川橋梁です。線路に上がる階段で近くまで上がって撮影しました。ここも、SL三重連の撮影ポイントでした。
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引き返します。稲の取り入れを終えた後のわらが掛けてありました。穏やかな田園風景の中を苦ヶ坂トンネルの方に向かって歩きます。
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14時32分、上り(新見)方面行きの”特急やくも18号”が苦ヶ坂トンネルに入って行きました。
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私が布原駅に滞在した約3時間の間に、やくも18号を含めて、上り5本、下り4本の列車がこの駅を通過して行きました。このJR西日本岡山支社管内の車両の塗装である黄色い車体の電車は、米子行き普通列車でした。13時29分頃に行き違いのために停車していましたが、対向する”やくも16号の通過を待って出発していきました。
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滞在中に通過していった唯一の貨物列車です。14時59分に通過していきました。
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15時32分頃、通過していった上り”やくも20号”です。
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15時48分、キハ120系のDCがやってきました。「お帰り」と言いたかったのですが、芸備線のDCではなく伯備線のDCでした。もちろん通過していきました。そして、15時52分、備後落合から帰ってきたキハ120342号車がやってきました。「お帰り、よく帰ってきてくれたね」と言いたい気分でした。布原駅に到着してから、実に、2時間48分後のことでした。
布原駅は、周囲を山に囲まれた田園風景の中にあります。牛山隆信氏が主宰する「秘境駅ランキング」の40位にランクされている駅です。それによると、秘境度9ポイント、雰囲気7ポイント、列車到達難易度14ポイント、外部到達難易度11ポイント、鉄道遺産8ポイントの総合評価49ポイントでした。周囲の民家は5~6軒。私が滞在した3時間弱の間、誰にも、犬や猫にも会うことはありませんでした。この駅の一日の平均乗車人員はなんと0人(2011年)です。1人乗車することさえない日が相当あるようですね。そういえば、新見駅からの運転士さんも、私が「降ります」というと驚いたような反応をされていました。そんなこともあって、「伯備線にあって伯備線にない駅」になったのでしょう! 岡山県で最高ランクの40位にふさわしい”秘境駅”でした。心配していた雨にも降られなくてよかったです、ほんとに。