トシの旅

小さな旅で学んだことや感じたことを、
まとめるつもりで綴っています。

滞在時間12分 ”秘境駅”、JR備後落合駅

2016年09月09日 | 日記

JR芸備線の備後落合駅に行ってきました。JR芸備線とJR木次(きすき)線の分岐駅になっています。木次線はこの駅から奥出雲地方を経由してJR山陰本線の宍道駅を結ぶ全長81.9kmの路線です。写真は、桜の花が咲く頃の備後落合駅です。「奥出雲おろち号」に乗車するために訪ねた時(「奥出雲おろち号に乗ってきました」2011年5月1日の日記)に撮影したものです。

備後落合駅は木次線を走る「奥出雲おろち号」の始発駅として知られています。また、備後落合駅は牛山隆信氏が主宰する「秘境駅ランキング」の138位にランクインしている駅でもあります。秘境度2ポイント(P)、雰囲気3P、列車到達難易度5P、外部到達難易度1P、鉄道遺産指数7Pの18Pを獲得しています。芸備線の沿線では、28位の内名駅(「1日3往復の秘境駅JR芸備線内名駅」2014年7月7日の日記)、36位の布原駅(「伯備線にあって伯備線の駅でない秘境駅JR布原駅」2014年3月31日の日記)、43位の道後山駅(「JR芸備線の秘境駅JR道後山駅」2016年8月27日の日記)の3つの駅もランクインしています。なお、布原駅は正確には伯備線の駅ですが、伯備線の列車は停車せず、芸備線の列車しか停車しないため、便宜上、芸備線の駅にカウントしました。この写真も「奥出雲おろち号」に乗車したときのものです。

青春18きっぷでJR伯備線の新見駅に向かい、そこから、13時01分発の備後落合駅行きの芸備線の列車に乗り継ぎました。備後落合行きの列車は、13時01分発のほかには、新見駅5時18分発と18時24分発の2本のみ。新見・備後落合駅間の芸備線は、超過疎路線になっています。

新見駅は2面4線のホームになっています。備後落合駅行きの列車は1番ホームから出発します。隣の2番ホームは津山方面に向かうJR姫新線のホーム。もう一つの島式ホームは伯備線の上下線が発着しています。

備後落合駅行き列車が入線してきました。キハ120340号車。トイレ設備のついたディーゼルカー(DC)です。ワンマン運転の単行列車でした。ホームで待ち構えていた、たくさんの鉄道ファンが乗車しました。平素は空席が目立つ列車ですが、青春18きっぷのシーズンには、鉄道ファンで賑わっています。ちなみに、ワンマン運転は平成3(1991)年に始まっているそうです。

13時01分、定時に出発しました。列車の一番後ろから撮影した新見駅の構内です。かつて、多くの列車が発着してにぎやかだった頃を思い出してしまいました。

車内です。席の3分の2ぐらいが埋まっています。乗客のほとんどの方が、備後落合駅で三次行きの芸備線の列車に乗り継いで、広島駅をめざす人たちでした。地域輸送が大きな役目である芸備線の新見駅・備後落合駅間ですが、地元の方の利用は多くはないようです。

新見駅から1時間10分。前回訪ねた”秘境駅”、JR道後山駅に着きました。道後山駅は、初めに書いたように43位の秘境駅で、芸備線の最高地点にある駅でもあります。下車する人もなく発車しました。道後山駅から先は、初めて乗車する区間です。列車は、備後落合駅に向かって下っていきます。

道後山駅から備後落合駅間は全長6.8km。新見駅から備後落合駅間での最長区間です。高い橋脚をもつ鉄橋と、車窓から見える田園風景が美しい区間です。ちょうど、実りの季節、収穫を待つ稲穂が黄色く輝いていました。小坪トンネル、国司トンネル、柏ヶ原トンネル、小持原トンネル、宮ノ谷トンネルと、5つのトンネルを抜けて走ります。

黄色い稲穂の中に見える白い部分はそばの花が咲いているところだそうです。稲穂の黄色に負けずに頑張っています。時速25km、55km、また25kmと、速度制限が続く線路をゆっくりと下っていきます。

道後山駅から変化に富む景色を見ながら進むこと4分。14時25分、定時に備後落合駅に着きました。新見駅から1時間24分の鉄道の旅でした。乗車して来たDCの行先表示は、すでに「新見」に変わっていました。14時37分には、新見に向かって出発します。滞在時間が12分しかありません。備後落合駅は、平成9(1997)年から無人駅になっています。

備後落合駅で下車する人はいないようです。ほとんどの乗客は、乗り継ぐべき三次駅行きの芸備線の列車が入線するまで、駅の各所で撮影に忙しく動き回っておられます。三次行きは14時38分の出発です。こちらも、滞在時間は13分という短時間です。

駅舎に入りました。緑の掲示板が際立つ待合のスペースです。カウンターの上には、”秘境駅”にはつきものの”駅ノート”が置いてあります。掲示されている運賃表。新見駅からは970円でした。青春18きっぷ様さまです!

待合室にあった時刻表です。新見駅方面が1日3本。宍道駅方面に向かう木次線が1日3本(他に、臨時列車の”奥出雲おろち号”が備後落合駅・木次駅間に1往復あります)、芸備線の三次駅方面行きが6本あるようです。この駅で下車してしまうと、次の列車の待ち時間が、とてつもなく長い時間になってしまいます。運行している列車本数が少ないことで、”秘境駅”であることを実感します。

外から見た駅舎です。備後落合駅は、昭和10(1935)年に開業しました。三次駅側から進んできた延伸工事が備後西城駅から備後落合駅間で完成したことによります。新見駅側からは、翌、昭和11(1936)年に小奴可駅・備後落合駅間が完成し開業しました。こうして、起点である備中神代駅から、備後落合駅を経由して三次駅(当時は備後十日市駅でした)の間がつながりました。昭和12(1937)年には国有化され、備中神代駅・広島駅間が芸備線となりました。木次線が全通したのもこの年でした。現在、この駅舎は乗務員の宿泊施設としても使われています。20時43分に備後落合駅に到着する三次駅からの列車は、翌日の6時40分に三次駅行きの列車として出発するまで、この駅で滞泊するからです。

周辺のようすを眺めます。下の国道沿いに民家が見えました。折り返して、三次行きとなる芸備線の列車の到着時間が気になりましたが、少し歩いてみることにしました。駅への取り付け道路を下ります。この道は、国道までが県道234号線(備後落合停車場線)となっています。かつては、美容室や新聞販売店、タクシーの営業所があったということですが、坂を下ったところに1軒大きなお宅が残っているだけでした。かつて、人気の旅館があったといわれていますが、それがこのお宅なのでしょうか。

集落の手前にある小鳥原川(「ひととばらかわ」とプレートに書かれていました)に架かる駅前橋を渡って、2車線の国道に出ました。こちらは、道後山駅方面です。5、6軒の人家が見えましたが、その先のカーブで人家は途切れてしまいます。

反対側です。こちらはまったく人家は見えません。

時間が気になって、引き返すことにしました。駅前橋から備後落合駅に向かいます。県道234号線を進みます。

三次駅からやって来る芸備線の列車が到着する14時31分を過ぎました。突きあたりが備後落合駅です。

三次駅からの芸備線の列車がすでに到着していました。急いでホームに戻ります。2面3線のホームで、駅舎に近い1番ホームは木次線、2番・3番ホームが芸備線のホームになっていました。跨線橋はなく構内踏切で移動するようになっています。

2番ホーム(写真左側)に停車しているのが折り返して三次駅行きとなるキハ12021号車。JR広島支社三次鉄道部の所属だそうです。3番ホーム(写真右側)が、乗車して来た新見駅行きのDCです。こちらはJR岡山支社に所属しています。いずれも、ワンマン運転の単行列車です。長いホームに1両の列車が停車している”秘境駅”らしい光景です。

ホームにあった駅標です。次の停車駅が二つ書かれています。「ひばやま(比婆山)」駅は三次駅行きの芸備線の、「ゆき(油木)」駅は木次線の駅になります。

これは、比婆山駅と油木駅方面の写真です。線路が2本、緩やかに右にカーブしながら伸びています。芸備線と木次線はそれぞれどちらなのでしょう?

これは三次駅行きの芸備線の列車が停車する線路の上から撮影したものです。お聞きすると、「このまままっすぐ進み向こう側で右カーブしている線路が芸備線。現在はポイントが外れていますが、手前から右にカーブして、芸備線の手前を下っていくのが木次線」なのだそうです。 

14時37分に出発した新見行きの列車から見た備後落合駅のホームです。三次駅行きのDCが、ぽつりと取り残されているように感じました。

備後落合駅での滞在時間はたったの12分。折り返し便に乗れなければ、次は20時12分まで、新見駅に向かう列車はありません。寒い季節ではありませんが、辛抱して6時間近く待つことはとてもできません。たったの12分では見えるところは限られていました。かつての転車台が雑草に覆われて残っているとも言われていましたが、確認することができませんでした。山深い地域で生活する人々の姿を見ることもできませんでした。ほんとに残念でした。やはり、車で来ないといけないのでしょうか。「列車到達難易度、5P」と牛山氏が評価したように、列車で来るのが難しい「秘境駅」でした。

新見駅に向かう列車には、三次からの列車で来た人たちが、たくさん乗車されていました。新見駅着は16時00分。1時間23分のJR芸備線の旅が、また始まります。