風に吹かれすぎて

今日はどんな風が吹いているのでしょうか

一日の終わり

2007年01月24日 | 
納屋の白い土壁にもたれ 落ちる夕日を見ていた
もうふた月と十七日、誰とも口をきいていない
ようやく俺の手から干し肉を食べるようになった野良犬も
このところ姿を見せなくなった
お相手を探して 旅にでも出たのだろう

もうまもなくジャガイモの花が咲く
薄紫色の花が一面に咲く
そのときおれは 庭先にテーブルを出して
とっておきの赤葡萄酒を飲もう
去年の暮れにこしらえた 羊のチーズも食べごろだ

見る見るうちに真っ赤に染まる空を眺めているうちに 俺はふと思い出す
八歳の夏休み、父親に買ってもらった緑色の自転車
俺は町のあちこちを 風を切って走り回った
表通りや裏通りで 人々の笑顔やら泣き顔やらを たくさん見てきた
そんなこんなも どこへやら流れて消えた

今は土壁にもたれて ブーツの先にこびりついた泥を見ている
深呼吸とも 溜息ともつかない息を 大きく吐き出す
俺の真正面には息苦しいほどに燃えさかる日輪
祈りの言葉さえ思いつかない
目を細めて 大地に溶けていくのを 見ている