鳥キチ日記

北海道・十勝で海鳥・海獣を中心に野生生物の調査や執筆、撮影、ガイド等を行っています。

ウミバト(その2) <em>Cepphus columba </em>2

2012-02-09 22:39:45 | 海鳥写真・チドリ目
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All Photos by Chishima,J.
(以下すべて ウミバト 2011年11月18日 北海道厚岸郡浜中町)


 朝の海から1羽のウミバトが飛び立った。激しい逆光の中、軌跡を金色に残しながら穏やかな海面を一目散に駆けて行く。一連の写真は同一個体。


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 顔は頭頂部と目の周囲が黒っぽい以外白っぽいが、全体的にくすんだ色をしている。ケイマフリと比べて額は切り立って見えることが多い(ただし例外も少なくない)。後頚から背の前半にかけては灰黒色、そこより後ろの上面は尾羽まで黒く、体下面は白色。翼上面、肩羽の特徴は後述。脚は逆光であることを差し引いても、本種としてはずいぶん黒く見える。ところで2本の脚の間、ちょうど尾羽の下あたりにオレンジ色のもう一本の「線」がある。


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 最初は何だか分からなかった。拡大してみると、「線」は海面と接して液状に広がり、その一部は飛沫となって後方へ飛び散っている。どうやら糞のようだ。赤みを帯びたオレンジ色は、オキアミ類等の甲殻類由来なのだろうか。


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 翼上面周辺の拡大画像。雨覆の白色部は各羽の白色部が狭いため白斑を形成しない。大雨覆では白色部は内側だけで、それも最内側の数枚を除き外縁が縦線状に白いだけだ。中雨覆と小雨覆2列の白色部は大雨覆よりは顕著なものの全体にくすんだ感じで、不連続なそれは翼前縁に近付くにつれ不明瞭となる。白い羽縁は肩羽を鱗状に見せ、羽縁の内側も灰色みを帯び、黒色の背と翼の間で際立っている。背も上部ではやや淡色の羽縁が鱗状を呈すが、これはおそらく近距離でないと分かりづらい。


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 背面より見た飛翔。下面の白が両側から腰近くまで達するパターンは、ケイマフリやウミガラス類といった大型ウミスズメ類に共通な特徴だが、コオリガモもこのように見える。雨覆の白色部は数本の線状を呈す。それにしても脚が黒っぽい個体である。ケイマフリでは若鳥らしい個体の脚が鈍い赤色のことがあり、それが同属の本種でも当てはまるなら若鳥か。ただし、「シブレーガイド」の本種幼鳥の脚は鮮やかな赤色に描かれている。


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 Johnsgardのモノグラフ「北アメリカの潜水性鳥類」によると幼鳥は、「最初の秋と冬を通じて下面は白くなってゆき、少数の茶色っぽい横縞が存在する」という。本個体も胸から腹にかけて不明瞭な褐色の鱗状模様が存在し、異様に黒っぽい脚や顔、雨覆の白色部がくすんだ印象を受ける点等を合わせて考えると当年生まれなのかもしれない。本種やケイマフリの翼下面は通常暗色に見えるが、光線によっては淡色にも見えうる。


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(2012年2月9日   千嶋 淳)

*一連の写真は、NPO法人エトピリカ基金の調査での撮影。


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