![Photo Photo](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/27/19/2957682922b78cc666e75dbb5ccdf508.jpg)
All Photos by Chishima,J.
(以下比較画像のシロエリオオハムを除きすべて アビ 2011年12月29日 北海道十勝郡浦幌町)
アビ類は北海道近海の海上や海岸では普通に出現する。グループとしてのアビ類を他と区別するのは、独特のシルエットや飛翔行動によって比較的容易だが、グループ内での識別となると話はまた別である。割と警戒心が強く、遠くの海上を飛ぶのを見ることが多いため得られる情報が限られて来る上、どのような光線や背景に対して見るかで印象が変わって来るからだ。
アビ類中最もスリムな本種は総じて小さい印象だが、大きさにはかなりの個体差があり、大型個体はシロエリオオハムと重複する。翼開長は91~116cm。飛翔中の本種に特徴的なのは瘤状に盛り上がった背中と、下方へ向けられた頭と首が作り出す独特の外観である。「Flight Identification of European Seabirds」(ヨーロッパの海鳥飛翔図鑑)では、「木のハンガー、あるいは首を伸ばして地面で寝ているヒトコブラクダのよう」と表現している。本記事中のアビは同一個体。曇天下とはいえ全体に褐色みがあり、顔から首にかけての暗色部は割と下方まで達し、背や肩羽の白色斑も少なく不明瞭なことから第1回冬羽の若鳥かもしれない。
![Photo_2 Photo_2](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/20/83/bdeaf9455a72497f43fa63e76402780e.jpg)
翼下面は白い部分が多く、これは他のアビ類でも同じ。翼先は尖る。羽ばたき速度は他のアビ類よりいくらか速いが、それ単独で識別の助けになるほどではない。脚は尾の延長のように後方へ突き出す。首から頭にかけては平らだが腮から喉にかけて下方へ膨らんで見えることがあり、上方に反った嘴はその印象を強める。
![Photo_3 Photo_3](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/7e/1b/51440b478dd8b0fe351274528c866a57.jpg)
暗色の上面と白っぽい下面のパターンは他のアビ類の冬羽タイプと一緒だが、本種はオオハム類ほどその境界がシャープではない。成鳥冬羽では顔の白色部は目の上まで達するため、目が暗色斑のように浮き上がるが画像の個体では暗色部が広く、目は不明瞭。
![Photo_4 Photo_4](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/30/a5/f08b603d16a2ab612e11a99be61a748b.jpg)
シロエリオオハムとの頭部の比較。シロエリオオハムは5月の第1回夏羽で時期、羽衣が異なるため羽色の比較はできないが、頭部の形態の違いは見てとれる。アビは頭を下げて飛ぶことが多いが、オオハム類も時にこの姿勢を取るので注意が必要。シロエリオオハムでは上嘴が下方に向かって湾曲し、下嘴はまっすぐなので嘴全体は直線的に見える。一方アビでは上嘴は直線的で下嘴が上に向かって膨らみを帯びるため、嘴は上に反って見える。アビで顕著な喉周辺の下方への膨らみはシロエリオオハムでは認められず、首は上下ともまっすぐに見える。
道東へは主に冬鳥として10月以降渡来し、秋の渡りピークは11月中・下旬。オオハム類のような大群での渡りは見られないが、渡り、越冬期とも1ヶ所に数十羽以上集まることはある。砂質海岸の海上を好み、十勝地方沿岸部では優占種。春の渡りは5月いっぱい続き、夏期に観察されることもあるがその数、頻度はオオハム類に比べるとはるかに少ない。
(2012年2月7日 千嶋 淳)
*一連の写真は、日本財団の助成による十勝沖海鳥調査での撮影。
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