局の道楽日記

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生活色々を楽しんで暮らしている日々の記録です

遭難者を探す仕事

2023-05-26 18:59:44 | 読む
オットが珍しく
「この本読んでみて」と一冊の本を渡してくれた。





世の中には色々な職種、色々なプロがいらっしゃるわけで、今までワタシが知らなかった「国際山岳看護師」という資格を持つのが、この本の著者である。救命救急の場より、病院外で看護師としての経験や知識を役にたたせるために、その資格を取得した著者。山岳医療についての知識・技術・判断力というのは「山という環境因子を考慮し、傷病者にとって適切な処置などを判断できるか」ということで、山という時には厳しい環境の中で、傷病者に適切な処置をできうる難しい資格なんだと思う。

この著書は山での遭難者、行方不明者の捜索に関して、その家族との間に立って、「どこで遭難したのか?」「なぜ遭難したのか?」生死に限らず今どこにいるのか? などを突き止めた事例が書かれている。

たとえば



実線で書かれた予定ルートを外れた単独登山をしていた60代の女性は実際は点線のルートをたどって遭難して、沢の中で遺体となって発見された。
なぜルートを間違ったといえば、コンパスやGPSを持たずに、春に仲間が撮ったルート写真をめやすに登山していて、夏草の茂った状態で景色が違ったことから迷ってしまったらしい。

その他の遭難者も、風で剥きが変わった道案内の看板を信じて進んでしまったとか、もちろん天候の変化や転倒などもで、山というのは簡単に遭難しうる環境らしい。



このように、そのささいな事をきっかけに遭難してしまい行方不明になった人を、主に家族からの依頼で探す捜索団体としての活動は、家族からの聞き取りや、本人のSNSなどから、プロファイリングして、行動を推理して探す。山岳の探偵みたいな仕事らしい。
もちろん実際に捜索するのは山のプロ中のプロたちだけど、時にはプロ意識から離れて、初心者がやるような失敗も想定して捜索したりしなければならないらしい。

実は、オットがこの本を持ってきたのは、この本の事例の中でオットの知り合いが書かれていたからなんですよ。
コロナ禍が始まるちょっと前の年、オットの知り合いの同業者が、登山したまま行方不明になってしまったというのを聞いた。
そしてそれがもう2か月も前との話で、
「それじゃもう助からないかもしれないねえ」「でも遺体も見つからなければ家族もあきらめきれないだろうにね」などと話したのであった。

その時、「お前も一度会ったことあるだろ、ほれ、東京駅で、新幹線のホームで・・・」
オットと一緒にいた時に東海道新幹線のホームで会った彼。長身でおだやかそうな人で、「奥様ですか?」と言われて私も挨拶したのだった。確かサックスだかなんかの楽器を手にしていた。
あとで「〇〇さんは多趣味なんだよな~」とオットが言ってたのを思い出した。
そうか・・・ あの時の彼か・・・

結局、彼の捜索は5か月以上かかり、偶然登山ガイドの方が大腿骨を普段は枯れている水の通り道で見つけたことで、その上流でリュックなどの遺留品がドローンによって発見されて、その他の御遺体も見つけることができたという。
この彼の捜索途中で、遭難してから一週間近くも生き延びられた人が救助されたり、行方不明のままで見つからなかった、他のご遺体も発見することができたらしい。

同じ山で遭難したふたりを家族の元に帰してから、自分は最後に家に帰ることを、Wさんは選んだのだろうか・・・
責任感が強く、他人のため働くことに喜びを感じていたというWさんの人柄がしのばれた。


と、彼の項は結んであった。
たった一度会った人ではあるが、その運命と残された家族の心情を思い、秘かに目がしらが熱くなった。

(オット曰く)病的な方向音痴と言われるワタシ、確かにゴルフ場でも次のホールは?って迷いそうになるし、地図は読めない。
山小屋などで、知らない人の後に泊まったりするのも苦手なのもわかってるので、山に行こうなどとはこの先の人生でも思わないだろうが、この本を読んでますます「絶対山には登るまい。私が登山するなど周りへの迷惑そのものであろう」と思った。ワタシが遭難したら当たり前すぎると自他共に認めるであろう。

そりゃ~登山が趣味の方々は、山のすばらしさに魅せられているんでしょうが、くれぐれもご家族やご友人を悲しませないようにしてくださいな。あと山岳保険ってのは入っておいた方がいいみたいよ。捜索費用って高いらしいので。
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8 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
当たり前だけど、知らないことが一杯 (冷水俊頼)
2023-05-26 20:09:10
いや、驚きました。こんなプロがいるとは!
確かに、もう日にちが経って諦めてはいても、遺族にとってはどこでどうなったかを調べてくれるプロはありがたい存在ですね。ルートを整備するためにも大切な仕事のはずです。
読みたい本ですね。
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山仲間 (夢母)
2023-05-26 20:30:56
私が懇意にしているお店では
群馬県山岳連盟のお客様が多く

マスターの親友が
会長をしていた方で
映画「植村直己物語」で
指導してました

以前英会話でご一緒だった女性は
夫(山岳連盟)を海外の山で亡くし
遺骨は見つからず

遺品の中に
妻ではないひとの
写真が残され
彼女(奥様)は精神を病み
ひとり娘と渡米したそうです


旦那様のお知り合いも
山仲間を想っての
最期だったのでしょうか

残されたご家族が
一番お辛いでしょうね

私も山小屋は
苦手です(^^ゞ
尾瀬は何度も日帰りで行きました💛
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Unknown (tsubone)
2023-05-28 22:48:56
夢母さん

グンマーといえば、魔の山、谷川岳がありますよね。冬山の遭難はよく聞きました。
それでも山に魅せられた人たちは目指すんですね。
それに付随してドラマもありそうですね。
中高年の登山者も多いこの頃、無理をしないで、ご家族を悲しませないようにしてもらいたいです。

オットの友人は、単独登山で、行方不明になった事で、偶然同じエリアで1週間遭難していた人が生きて助かり、また行方不明のご遺体が一体見つかったそうです。
家族もとても仲良かったそうです。
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Unknown (tsubone)
2023-05-28 22:52:58
冷水さん

私も、こういう仕事もあるんだなぁと気付かされました。こういう方が居ないと、焦燥した遭難者のご家族が、自ら探そうとして二次災害になっちゃったりもあり得るんだそうです。
救急救命の場で働き、次に病院外で自分を生かせる場所を見つけて世の中のために働くって尊いなーと思いました。
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こんばんは (虫主婦)
2023-05-29 18:31:01
本の帯に、
「風に吹かれて向きが変わった道案内の看板を信じて」という文がありますが、
初心者向きの高尾山、たいへん遭難が多いそうです。
その理由の一つに、ひどいことにわざと向きを変える輩がいて、道に迷ったということです。
山での遭難は、方向音痴だからというよりも、
体力過信などによる体調不良によるものや、滑落などもあります

昔、夫が山で滑落した人を仲間と救助したことがあります。
捜索はなかったですが、ヘリコプター要請したので、救助費用が高かったのではと思います。
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Unknown (keba)
2023-05-30 10:33:58
いろんな専門家があるんですね〜

あたしの友人は、山で滑落して骨折し、ヘリコプターで病院に運ばれたことがあります。
グループで山歩きしてた時だったので、携帯で連絡してくれる人がいたためいのちには別状なし。
救出された時の手際に感激して、しばらく会えば話を聞かされてました。
それもこれも無事だったからこそ、です。
尊いお仕事だと思いました。

ご主人のご友人、その本が評した通りでしょうね。
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虫主婦さん (toki-tsubone)
2023-05-30 14:18:42
高尾山! とっても気軽に行けそうな山なのにね。
気軽だからこそ、準備や心構えなく登って遭難しちゃうのかもしれないですね。
看板のいたずらってのもあるんですね。
自分のやる事がどんな影響を及ぼすかわからずにやるおバカがいるんですね。回転ずしでいたずらするの同じメンタリティーですね。
ホントにこの手の馬鹿は嫌ですね。

ご主人も登る方ですか?
人助けされたんですね。山の保険って大切だと思いました。
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kebaさん (toki-tsubone)
2023-05-30 14:24:00
ご友人、助かって良かったですね。
そういう話を聞くと、やっぱり単独の登山って余計危険なんだろうなって思いました。
よっぽど経験積んで自信があってもね。

オットの友人、鋸山と言われる登ったり降りたりの急斜面が続くところで言葉を交わしたご夫婦が、とても疲れていたと言ってたそうです。
いつも激務で、その隙を縫って好きな登山をして、思っていたより体力を消耗していたんじゃないかと想像してしまいました。
オットが「登山する」なんて言い出したら絶対反対する所存ですw
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