tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

9月消費者物価、数字は沈静傾向を示すが

2023年10月21日 14時27分22秒 | 経済
昨日、総務省統計局から9月分の消費者物価指数が発表になりました。
マスコミでは、前年同月比の上昇率が2.8%と13カ月ぶりに3%を下回った事を見出しにしているようです。

これは政府の方針でしょうか、何時からか天候や節変動のある生鮮食品を除いた「生鮮食品を除く総合」の数字を使うようになりましたが、消費者物価全体の動きを示す「総合」は3.0%でした。(下図参照)

  消費者物価主要3指数の対前年同月上昇率の推移(%)

                資料:総務省統計局「消費者物価指数」

それにしても、青い線(総合)、赤い線(生鮮食品を除く総合)緑の線(生鮮食品とエネルギーを除く総合)の主要3指数が揃って、下げているという事は大変結構なことで、これで消費者物価の上昇も一段落かと思いたいのですが、まだ問題があるようです。
 
赤い線は最も下げ幅が大きく8月の3.1%から9月の2.8%へ0.3ポイント下がって順調(値上がりした生鮮食品が入っていない)ですが、青い線は3.2%から3.0%へ0.2ポイントの下げ、緑の線は生鮮食品抜きですが4.3%から4.2%へ0.1ポイントの下げです。

夫々の線の高さを見れば、緑の線はまだ4%以上の年率上昇率で、あまり下がっていません。この「生鮮とエネルギーを除く総合」は、電気、ガス、ガソリンといった費目を除いたものですから、政府の補助金で安くなっている分が入っていません。

2月のところを見て頂けば分かりますが政府の補助金によって1%ポイントほど青と赤の線が下がっているのが解ります。緑の線は下がっていません。これが本当の消費者物価の状況で、補助金はいつか終わって、その時、結局消費者物価上昇は統計数字より1%以上高かったことが解ることになります。

下の図は消費者物価の上記3指数の長期トレンドを見たもので、2月に補助金で下がったことはここでもよく解りますがその前後で、それぞれの線の上昇角度には、未だ大きな鈍化は見られません。

消費者物価主要3指数の動き

                  資料:上に同じ

今、値上がりの中心になっている食料やその他の生活必需品(トイレットペーパーなど)を含む、緑の線は10月からの4000品目の値上げの影響をどのくらい受けるか気になるところです。

日銀の植田総裁は、今は一時的沈静で、今後、賃金水準上昇の影響が出て再び高くなるだろう言っていますが、同時に心配されるのはこの所の異常な円安が、アメリカの都合で当分続くのではないかという懸念です。
改めてそれが、企業物価、消費者物価の上昇にどの程度の影響を持つか、これも予断を許さないところです。

来春闘の賃上げがかなり高くならないと、実質賃金のマイナスは来年度に入っても続く可能性が「無きにしも非ず」と心配されるところです。