tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

補正予算は20兆円の国債発行で賄うのですか

2023年10月07日 16時52分42秒 | 政治
先日も書きましたが、岸田政権(自民党政権)は、国債の発行は無尽蔵に可能と思っているのでしょうか。

国債発行で財政破綻はないというMMT(現代貨幣理論)は成立するかと言いますと、これはアメリカと日本に当てはまりそうだからという事から出てきたもののようです。

アメリカの場合は解らない事もありません。アメリカは基軸通貨国で、万年赤字です。しかし、世界中の赤字国の赤字の合計と、黒字国の黒字の合計は等しいのです。
そして黒字国は、基軸通貨国の貨幣を買って外貨準備にします。つまり世界の黒字は、アメリカの国債を買って外貨準備にするという形で、アメリカに還流するのです。

日本の場合は、いわば不思議な国で、どんなに経済が悪くマイナス成長・ゼロ成長でも国際収支は黒字なのです。これは国民が真面目で、常に収入の範囲内で生活し、国民所得を使い切らずその分国際収支は黒字になりますので、その分を政府が借りて(国債発行)、財政政策を打つ余裕が常に生まれているという実績のお蔭です。

それ以外の国は、経済が悪くなると国際機関や外国から借金しますから、早晩IMFがこれは危険だと判断し、IMF管理になり、経済緊縮の苦労の末、赤字を脱して漸く放免というプロセスを辿ります。

という事で、日本を見てMMTが生まれ、その変な「理論」を日本の政府が信用し(半信半疑かな)赤字国債を出しているというおかしなブーメラン効果になっています。

これは、はっきりって「日本人は節度を守る」とい神話を世界が信じ、一時「有事のドル」が「何かあれば円」などという事もあるほど、日本の真面目さへの「信用」があった(今でもまだある?)からという事でしょう。

今、17カ月の実質賃金赤字が続く中で、日本国民は、政府が「賃上げ、賃上げ」と言っても、インフレを恐れて、賃上げはほどほどで、後は家計が消費抑制、貯蓄指向に切り替えて、経済は成長しなくても、黒字は増えて、政府のために赤字国債発行の環境お整え始めたようです。

本当に日本国民は健気ですが、これでは日本経済は成長しそうにありません。
それでも外国から見れば、インフレは低く、万年黒字は続いているので、円は安全だろうという「神話」は続くのでしょう。

国債増発の余地も、家計の節約が生み出し、政府がバラマキで支持率向上の可能性を作っているようです。

勿論これには低インフレとゼロ金利という環境がなければなりません。
若し、国債に3.1%の金利を付ければ、借金は12年で5割増え、20年で2倍に膨らみます。既発債は減価して日銀は巨大な評価損を抱えます。

低成長、低物価上昇、ゼロ金利、家計の節約というアベノミクス型の経済が今後も続くことを国民が許すでしょうか。
しかしこの「ゆでガエル」ならぬ「冷やしガエル」状態が何かのきっかけで崩れる時、何が起きるかという事も考えておく必要がありそうです。

日本の信用という「神話」が現実であるためには現状を続けることが大事ですが、岸田総理は、「冷温経済を適温経済へ」、「貯蓄から投資へ」、「賃上げが必要」などいろいろ言われます。しかし、これと金利水準、赤字国債発行などのバランスをどう理解しているのかは不明です。

信用の崩壊がいつ起きるかは、必ずしも理論や数字では解りません。バブルの崩壊でも、金融機関の破綻でも、不測のきっかけで起きるのです。そして、きっかけは後から解るのです。

日本もこれから、物価、賃金、金利、国際収支、外国人投資家の眼、それに、国際紛争(防衛予算)などに十分注意して、経済の運営をする必要が、次第に出て来るのではないでしょか。
もう失敗は許されないと考えて、万全の安全対策をお願いしたいものです。