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2023年8月「家計調査」:平均消費性向が再び低下へ

2023年10月06日 15時29分15秒 | 経済
今日、総務省から2023年8月度の「家計調査、家計収支編」が発表になりました。

いつも通り主要な数字をさらっと追ってみましたが、直感したのは「これは良くない兆しでは・・・」という感じでした。

最後に出ている勤労者世帯の「平均消費性向」は、前月に続いて矢張り昨年8月より下がっていました。

平均消費性向の推移(2人以上勤労者世帯:%)

          資料:総務省統計局「家計調査」

上の図を見て頂くと明らかですが、一昨年の青い柱に比して昨年の赤い柱は3月、11月、12月を除いて9カ月が上昇です、消費者物価が上がり始めた時期ですが、元気に伸びた赤い柱が消費需要の復活を示し、景気を明るくしてきました。

政府も連合も経団連も、この状況に気を良くし、経団連会長も「賃上げ容認」を言い、今年の春闘を盛り上げました。

結果は前年プラス1%程度の2.8%の賃上げでした。ところが平均の賃上げ率が(希望的)予想より低かった事に加えて、消費者物価の上昇の方が勢いづき実質賃金はマイナス幅を広げ、「この程度の賃上げでは」という事になったようです。

民間消費支出は腰折れ状態になってしまったようです。緑の柱が赤い柱を越えなくなった様子が8月の結果で見えて来たのではないでしょうか。

平均消費性向は、収入も支出も名目値ですから、手取収入の増加より消費支出の増加の方が小さい(前年同月比)という事で、物価上昇にめげて、買い控え、節約、消費より当面貯金という家計の生活防衛型の心理への転換を反映し始めたようです。

「平均消費性向」が計算出来るのは、収入の統計のある2人以上の勤労者世帯だけですので、それでは2人以上全所帯の方はどうかと見ますと、こちらは消費支出だけですが、矢張り傾向は同じで、前年同月に較べて、名目値の消費支出の伸びが僅か1.1%、物価上昇を差し引いた実質消費支出の伸びはマイナス2.5%と減ってしまっているというのが実態です。

その中身を見ますと、食料への支出は物価上昇に追いつかないものの、やむを得ず5.9%伸ばしましたが、食料品の値上がりは大きく実質値はマイナス2.5%、こうした負担が影響して主要10費目中5費目で前年比の名目支出がマイナスになるという状態です。

10月からはまた数千品目の値上げが報道されていますし、ガソリンや電力・ガスといったエネルギー関連の政府の補助金がいつまで続くか解りません。こうした物価上昇の大きな原因である異常な円安の進行はアメリカの金融政策次第です。残念ながら政府・日銀は無策のようです

状況はアベノミクス初期に酷似して来ました。円安で企業の利益は増えます。政府は賃上げを奨励しますが、賃金上昇は僅少で、家計は実質賃金の低下、将来・老後不安から貯蓄に励み、消費需要は伸びず、消費不振でゼロ成長、政府は何とか経済成長をという事で補助金連発、原資はすべて赤字国債、財政赤字で困った政府は消費増税に走る、一層の消費不振、といった記憶に鮮明な悪循環です。

既に岸田さんは、連合の定期大会に、2007年の福田康夫総理以来16年ぶりの出席で、ご挨拶ですが、賃上げのためか、選挙のためか、本音のところは良く解らないという事のようです。

折しも。円安が長くなりそうだとの観測が言われていますが、政府の日銀も「注視」するだけというのも、これまでの政府・日銀と同じです。

統計は正直で、日本経済、物価の動向、国民の家計の実情、などなどをきちんと教えてくれます。
それなのに、政府の政策は、いつも賃上げ減税や補助金で、総て後追い、問題の核心には政府の手は届いていません。

政府が統計をきちんと正確に理解し、有効に使わないので、統計を作る事務担当の役所も、ついつい杜撰になるという見方もあるようです。

統計は情報の宝庫です。政府には、折角の統計を確りと使いこなすようにぜひお願いしたいと思っています。

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