tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

「持続的賃上げ」への具体的プロセス:試論 <来春闘は10%賃上げを>

2023年10月02日 12時38分14秒 | 経済
岸田総理は「持続的賃上げ」実現を、10月20日開会で調整している臨時国会で本格的に議論したいようです。
ご本人は、安倍さんもやった賃上げした企業に減税という手法を使いたいようですが、これは相変わらずのバラマキで、上手くはいかないでしょう。

賃上げした企業の減税というのは、賃上げの原資を政府が財政赤字で補填するという事です。賃上げできない企業には補填がない、賃上げが高ければ補填も大きい、という事は、企業間格差の拡大を政府が奨励するという事です。

大体こうした難しい問題は、人間の限られた頭で考えるのではなく、経済の基本原則であるプライス・メカニズム(価格機構の機能)を十分に働かせることを基本にして、政策はそれが上手く働かない所や、行き過ぎるところがあれば公正取引の立場から是正するというのが賢い方法です。

そんな立場から考えていきますと、早急に一度大幅賃上げをやって、ある程度のインフレ経済を作り出し、今、値上げのしにくい所でも、マーケットが受け入れれば値上げが出来る雰囲気を作り、価格機構が働きやすくすることが必要でしょう。

そのためには、10%程度の賃上げを労働組合サイドから強力に推進する要求が必要でしょう。

これはこのブログでも取り上げましたドイツのルフトハンザやアメリカのUAWのケースに代表されるような形です。
欧米では物価が上がれば賃上げは当たり前のことですから、自然とそういう形になってしまうのが一般的で、時に行き過ぎて、中央銀行の出番になったりしているのです。

日本の場合は、連合も傘下の単産も、そうしたアプローチには不慣れになってしまいましたから、それでは全労連にリーダーシップをというわけにもいかないでしょうし、一番頭の痛いとこすろです。

通常ゼロ成長で、10%の賃上げをしたら、国際競争力が失われ、大変だという事になるのですが、日本の場合は、今の行き過ぎた円安が多少戻っても、その点の問題は十分克服可能と思われます。

中小企業などから、そんな賃上げをしたら企業がもたない、という意見が出るかも知れません。それに対しては、賃金コストが上がった分は値上げでカバーがOKであることを周知する必要があります。そのあとは「価格機構」にお任せです。

恐らく物価上昇は10%行かないでしょう。実質賃金はプラスになるのではないでしょうか。
そして再来年からは状況を勘案しながら、5%賃上げ程度の安定経済を目指し、「2%インフレターゲット」が生きてくるような経済状態に軟着陸というシナリオになるのです。

この10%(あるいは15%)という、一時的な賃上げは、日本経済を『ニューディール』にするという意味合いのものです。
ゼロサムの中ではニューディールは困難です。一時的にインフレで余裕を作るのです。

今の岸田政権では、こんな政策は多分無理でしょう。賃上げ奨励といっていますから、やれれば結構ですが、補助金政策とは全く異質の政策ですから多分無理でしょう。

出来るとすれば、連合と協力して野党が一致して、来春闘の大幅賃上げ路線を強力に推進、「日本経済のニューディール」、「日本経済社会の長年の停滞を払拭する完全リフォーム」路線を、この際、一気にやり切るつもりになることが必要なようです。
「出でよ新時代のリーダー!!」です。

政治的な面から見れば、日本が改めて成長する経済社会を取り戻すための「政権交代の絶好のチャンス」なのではないでしょうか。

野党が結集して、ちまちました論争より、30年以上も不振な日本経済・社会の「抜本的な世直し」に本気になれば、自民・公明もぬるま湯から飛び出すでしょう。
政治、経済共に健全な日本の再構築のために、斬新、さらに革新的な発想が必要です。

(以上で「持続的賃上げ」のシリーズは一応終了です、有難うございました)