tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

消費支出と日本経済の関係を数字で:前回の補足

2017年01月13日 17時38分38秒 | 経済
消費支出と日本経済の関係を数字で:前回の補足
 国民が将来不安に駆られず、所得が増えれば消費も増やすといった状況になれば日本経済は健全性を取り戻すようになるだろうと前回も指摘しました。

 「所得が増えても消費は減る」という現状では、経済が活性化すとは思えません。しかも貯蓄しても利息が付かないのが当たり前ですから、将来不安は深刻です。
 日本もかつては「郵便局に100万円預けておけば10年たてば200万円になるんだから、老後の備えは確りできそうだ」などと言っていたのですが、今は・・・。

 ところでGDPに占める民間消費支出を1月2日に載せました「政府経済見通し」で見ますと、「GDPに占める消費支出の割合」は下記です(単位:兆円、%)。
・平成28年度(実績見込み GDP 540.2、民間消費支出301.0で55.7%
・平成29年度(見通し)  GDP 553.5、民間消費支出305.8で55.2%
「GDPの7割は消費支出」などと言われるアメリカとは大違いです。(アメリカは、生産するより余計食べて(消費して)しまいますから経常赤字国です。)

  「政府経済見通し」そのものが消費不振を認めているわけで、今の日本は異常な低さです。
 ちなみに、総務省の家計調査の平均消費性向の推移を、代表的な指標である勤労者所帯(勤労者所帯の統計しかありません)で見てみますと、1991年のバブル崩壊から実質可処分所得(物価の影響を除いた手取り収入)の伸び悩みから、家計は緊縮、消費性向は年々低下、1990年の75%台から1998年のボトムでは71.3%となっています。

 その後リーマンショックなどがあり、上昇下降のジグザグを繰り返しながら、2014年には円レートの正常化による経済活況で75.3%まで回復しました。
 ところが、その後は、2015年には1.5ポイント下がって73.8%、2016年の数字はまだ出ていませんが、月別調査結果の2016年1~11月の平均数字は対前年比1.6%の低下です。アベノミクスの景気回復で上がるかと思いきや急低下です。(原因は前回分析)

 12月も同様とすれば、2016年の平均消費性向は72.2%ということになるわけで、アベノミクスの成果の喧伝にも関わらず、平均消費性向はこの2年間で3.1ポイントの低下となります。

 もしこの3.1ポイントの平均消費性向の低下がなければ、そして勤労者所帯の消費性向の低下が概ね(消費性向の)代表性を持つとすれば、その分民間消費支出は増え、29年度の民間消費支出は(305.8×75.3/72.2)319兆円になり、それだけでGDPを13兆円ほど押し上げます。政経済成長率にして2.4パーセントの押し上げです。(成長率は2倍に)

 その他の変更がなければ経常収支黒字は、政府見通しの23.6兆円から10兆円余になり、円高の可能性は大分小さくなるでしょう。
 ちなみに、勤労者の実質可処分所得のレベルが今と同じ41~42万円(2010年基準)だった1985年(「ジャパンアズナンバーワン」と言われた時期)の勤労者所帯の平均消費性向は77~78%台でした。

 消費者が日本の将来に期待と自信を持てば、日本経済は十分伸びる余地をもっているのです。国民のエネルギーが前向きに発揮されれば、それは持続します。
 政府はそのための具体策をアベノミクス「第4の矢」にすべきでしょう。これは経済学から社会学、財政学、政治学に広がりを持つ問題です。

 賃上げ奨励などと言う姑息な手段に矮小化せず、本当に日本の力が発揮されるような環境づくりが求められます。