tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

トランプ大統領のアメリカ:被害者意識が基調

2017年01月22日 12時17分18秒 | 国際政治
トランプ大統領のアメリカ:被害者意識が基調
 今日になると、マスコミでも、トランプ大統領の就任演説全文、細かい解釈などいろいろ出てきています。克明にトレースされた方も多いのではないかと思います。何せ、日本の今後に大きな影響を持つ可能性が大きいものですから。

 今回は、アメリカの被害者意識の問題を取り上げてみたいと思います。

 アメリカは世界に君臨する超大国、覇権国であり、基軸通貨国です。
 第一次世界大戦後、世界の平和を目指して設立された国際連盟にはアメリカは加盟せず、本部は永世中立国であるスイスのジュネーブにありましたが、第二次大戦後はアメリカが主導して国際連合(国連:UN)を作り、本部をニューヨークに置いています。

 こうした経緯からも、アメリカが世界のリーダーを自任していたことはわかります。
 今回のトランプ大統領の就任演説でも「これから我々の手で、アメリカそして世界(world)の進路を決めよう」と言っていますように、「世界のリーダー」としての気概は持っていると思われます。

 しかしその反面、「アメリカは自らの犠牲で外国を豊かにしてきた、自国の国境を守らず他国の国境を守ってきた」と言い、「これからはAmerica first、 国境の防衛こそがアメリな繁栄をもたらす、buy American hire American、アメリカは勝者となる」と自国中心主義を明確にしています。

 その背後にあるのは、アメリカは損ばかりしてきたという被害者意識でしょう。
 確かに、戦後のマーシャル・プラン、ガリオア・エロア資金の様に敗戦国に対しても寛大な政策をとったアメリカでしたが、当時の「バターも大砲も」と言われた強大な経済力を誇るアメリカには、被害者意識は全くなかったでしょう。

 しかし、トランプ大統領の就任演説から読みとれるのは「世界のために、アメリカは損ばかりしている」という強烈な被害者意識です。
 その被害者意識が、格差社会化を強めているアメリカ社会の中で、多くのアメリカ市民の共感と重なり合い、トランプ政権が誕生したのでしょう。

 しかし本当にアメリカは被害者なのでしょうか。経済的な面で見れば、アメリカはいろいろなところで加害者です。
 最大の加害はサブプライムローンで自国の経済を維持し、そのツケを、リーマンショックで世界中の金融機関のB/Sに大穴をあけるという形で処理したことは記憶に新しいと思います。その結果、世界の庶民の貯蓄も大きな負担させられました。

 日本で言えば、プラザ合意による大幅な円高もそうでしょう、日本人は被害者意識は持たず、自助努力で対応しましたが、中国は日本の経験に学び、人民元高を強硬に拒否した経験を持ちます。

 今また、トランプ大統領は、人民元切り上げに言及しています。経済的に言えば、こうした問題は、どちらが加害者か被害者かは、判定の難しい問題でしょう。

 つい先日「 ポピュリズムの本当の恐ろしさ」でアメリカもロシアも中国も、みんな被害者意識を持っていると書きました。一体、加害者はどこにいるのでしょう。(被害者意識の恐ろしさは、嵩じると往々行動が良識を逸脱する事です。極端ですが、オウムやISのようなテロ行為も、被害者意識の異常な進行の結果でしょう)

 世界の覇権国、基軸通貨国が被害者意識を強めたとき、世界の政治、経済、社会はどんなことになるのでしょうか。あまり経験のないことだけに、いろいろと心配です。