tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

経済政策は労使で 3(補論)

2022年11月27日 13時49分33秒 | 経済
前回、円レートの正常化に成功したアベノミクスの「第一の矢」、今でいう異次元金融緩和の後、何をすべきだったかについて、その考え方と方向を整理しました。

蛇足かもしれませんが、今回は、ここでもう一度、その方向への進め方を明確にし、更に、それが多少行きすぎたとしても、日本経済は、多分心配する様ことにはなりそうにない体質を持っているといった点を整理しておきたいと思います。

第1の点は、日本はプラザ合意後の円高に際して、賃金を中心に徹底したコストカットを長期間続けた経験に鑑み、円安の場合はその逆を徹底してやるべきだったという事です。

具体的以は、賃金水準の復元をすることが、日本経済のバランス回復に必須だったのです。しかし、第一の矢で、円レートが復元しても、賃金水準の復元をやらなかったのです。

その結果が、長期の消費不振をもたらし、安倍政権以来の景気の低迷を引き起こしているという事です。

幸い、漸く「賃金を上げなければ」という意識が、経済学者、評論家、そして「労使」の間でも共有されてきました。ここでその経済的意味をしっかり理解することです。

賃金を上げなければという問題を具体的に考えますと、円高の時にしたことの逆、
非正規従業員の割合を今の40%から(社会情勢の変化も考えて)20%以下にする
② 賃金水準は物価上昇を1~2%ポイント程度上回る引き上げを当面続ける
この2つを、3年程度でやる努力を企業労使がが主体的に考えることでしょう。

企業にとっては厳しいと思われるかもしれません。しかし、それは経済成長を回復する中で、対応を模索すべき課題です。法人税率も当時より下がっています。

本来、円高というのは日本の要素費用(コストと利益)がドル建てで円高分だけ上がったという事です。それを下げないと国際競争力がなくなるという事です。日本は円建てでそれを下げることに徹底努力して努力をしました。

2013~4年、異次元金融緩和で円安になりました。日本の国際競争力は回復しました。円建ての賃金と利益は引き上げる余裕が生まれました。

この状態の下で、利益は、順調に回復しました。これは多く海外投資やマネーマーケットに向かったようです。

しかし賃金は発生した余裕分に追いつくような引上げはありませんでした。その結果、消費不振が顕著になりました。経済成長は円安にも拘らず消費不振で低迷を続けました。

政府は低成長で税収は増えませんでしたが、消費不振の分を財政政策でカバーせざるを得なくなり(第2の矢の誤用)、その結果赤字国債増発、財政は再建不能状態になりました。消費増税は焼け石に水で、賃金の上がらない家計に追い打ちとなりました。

これがアベノミクス以来の日本の経済政策のあらすじでしょう。

必要なのは「雇用者報酬(日本経済の人件費総額)」を増やし、日本経済の消費と投資のバランスを回復し、家計の意識を変え、消費を伸ばし経済を安定成長の軌道に乗せることです。(インバウンドは、あくまでプラスアルファでしょう)

指摘している雇用者報酬の引き上げは(触れてきませんでしたが、格差拡大に気を付けて)、行きすぎれば賃金インフレに繋がり、今の欧米の様なことになりますが、日本の労使が欧米よりひどい自家製インフレ(賃金インフレ)を招くことは多分ないでしょう.。(政府の役割は、第二の「プラザ合意」に気を付ることでしょうか)

これらのバランスのとれた日本経済の復活の成否は、総て、来春闘を皮切りに、日本の労使の積極的な話し合いと本質的には共通な目標に向けての協力と努力にかかっているのです。 

政府の出番はありません。「いいね」とか「応援」、「続き希望」、「役立った」を押してくれればいいのです。
以上が前2回の補論です。