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4月の消費者物価の動き、残る先行き懸念

2024年05月24日 16時06分11秒 | 経済

2023年の日本経済は、コロナ明けにも関わらず低迷状態でした、その中で、消費者物価の上昇が2022年から一層ひどくなるという、どうにも具合の悪い変な経済でした。不況下の物価高ですから「これはスタグフレーションだ」という人もいたようです。

そかし、賃金上昇も平均賃金では1~2%程度で、求人は活発、失業率は低く、企業収益は好調継続、設備投資も順調、国際収支は大幅黒字というのですからスタグフレーションではないようです。

そうした中で、このブログは毎月消費者物価の動向を追ってきました。賃金上昇より消費者物価上昇の方が大きいので、実質賃金が前年同月比マイナスという月が24カ月続いたのは何故でしょうという謎も解いてきました。

そして今日2024年の4月分の消費者物価が発表になり、6月5日には毎月勤労統計の4月分の速報が発表になって、実質賃金の対前年同月比が、プラス転換するかが解ることになります。

春闘賃上げは昨年の3.6%から今年は5%台ということになるようですから、一応期待は出来ますが、中小の賃金交渉が終わるのは6月ごろですから、全体の状況が見えて来るのにはもう少し時間がかかるでしょう。

ところで平均賃金の上昇より低くなるかという消費者物価の上昇ですが、今日発表の4月分の数字は微妙です。

先ず、消費者物価の原数字の動きですが、下のグラフです。3月と4月の数字を入れておきましたが、「総合」「生鮮を除く総合」「生鮮とエネを除く総合とも、今年に入って上向きに転じています。

     消費者物価主要3指数の推移(原指数)                        

               資料:総務省「消費者物価指数」

昨年10月の数千品目一斉値上げでの不評で、値上げの波は一応収まったかと思われたのですが、今年に入って新たにいろいろな値上げの声が出ています。

3月から4月にかけての上げ幅は0.3~0.5ポイントですから年率にすれば12倍ですから平均賃金が3%以上上がっても、物価上昇に飲み込まれる可能性も出て来ます。

一方、次のグラフで、消費者物価の対前年同月上昇率を見ますと、こちらは順調に下がっています。特に緑の線の「生鮮とエネルギーを除く総合」は国内のインフレ要因によるものですから、これが下がることが物価安定の基本です。

     消費者物価主要3指数対前年上昇率(%)

                     資料:上に同じ

4月の消費者物価の上昇要因を見ますと、一つには生鮮食品の上昇が天候不順で大きかった事、調理食品や加工食品の値上げが収まった中で果物、一部の菓子、飲料などで価格引き上げが起きています。教養娯楽とくに旅行関係はインバウンド盛況の影響で高めの上昇が続いています。(東京都の高校の授業料無償化は、引き下げ要因になっています)

2年続いた食品等生活必需品の値上げはコロナ期に値上げを我慢したことの反動とみれば、理解される面もありますが、企業収益は総じて上昇しているという企業統計の結果からすれば、今後は生産性向上でコスト吸収という企業本来の在り方への一層の傾斜が要求されるのではないでしょうか。

その場合、景気回復、円安などで収益好調の企業においては、日本経済全体のバランス回復に向けて価格メカニズムを活用しての積極的配慮も大事ではないでしょうか。

また、満額回答などで、賃金支払い能力に余裕のある企業は、非正規従業員の正規化、教区訓練の徹底などで、従業員の全体的能力アップで生産性向上を図るというアプローチも、日本の労働力のレベルの底上げという意味で、企業経営者の役割が期待されるところでしょう。


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