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消費者物価の動き少し長期で見れば(解説編)

2024年05月25日 17時29分45秒 | 経済

今日は土曜日です。昨日も4月の消費者物価が発表になり当面の動きを見ましたが、土曜日にかこつけて少しのんびりと長い目で消費者物価の動きを見てみましょう。

2022-23年は想定外の消費者物価の上昇で24カ月連続で実質賃金が前年比マイナスとなり、家計にとっては最悪の2年間でした。犯人として消費者物価の上昇が言われました。それも調理食品、加工食品、調味料、飲料、果物、日用雑貨など、いわゆる生活必需品が中心で、多くが何千品目が何月から一斉値上げといった一斉波状値上げで、家計にとっては防禦の仕様もないといったものでした。 

実はこれには理由があったとこのブログは考えます。下のグラフを、改めてご覧ください。

    消費者物価主要3指数の推移(資料:総務省)

2021年の初めまでは青赤緑の3本の線はほぼ一緒です。ところが2021年の夏ごろから青と赤は上がり続けますが、緑は 下がり始め、22年に入って3月ごろから上昇に転じますが、青・赤と緑の線の間隔は23年の1月まで開くばかりでした。何故でしょう。

コロナ禍で家計は緊縮、日常の消費は落ち込む。当該企業は我慢の経営の連続でした。

23年2月に電力・ガスの補助金でエネルギー価格が下がり緑に急接近しましたが、緑の線自体も次第に上昇角度を弱めています。(昨日のブログの下のグラフも参照してください)

では緑の線の中身は何かと言いますと、主に「上に挙げた生活必需品が中心」で、国内のマーケットの事情で値段が決まる、別名、消費者物価の核(コアコア)と言われる部分です。

ここで改めて21年に緑の線が上がらなかった要因を考えてみますと、中小企業や非正規従業員などを支援しようと最低賃金は毎年平均賃金より大幅に上がりましたが、コロナ禍の時期は極端な消費不振・売り上げ減少で、生活必需品部門もとても値上げの出来る状態ではなく、利益の減少に耐えるしかなかったのです。22年に入って、これではやっていけないという事で「みんなで一緒に」足並み揃えて一斉値上げに踏み切ったのでしょう。

それまでは、賃金が上がらないが、物価も上がらないから何とかなるといっていた一般サラリーマン家庭も、その結果 実質賃金の低下に見舞われることになりました。

生活必需品部門の、コロナ禍で失われた利益の回復の動きは23年秋までの一斉・波状値上げという現象を生んだのでしょう。

確かに、ある程度の値上げまでは、値上げ容認の声もありました。しかし23年秋には、これ以上げると「便乗値上げ」の声も出始め、一部に買い控えも起き、そろそろ値上げも限界という雰囲気が生まれてきた様です。

こうした状況から、日銀や、学者のなかにも、この消費者物価の上昇は多分一過性で24年にかけては収まり、2%インフレ目標達成の可能性はあるという認識が生まれたようです。

これは正しい認識だったのでないかと思われます。

24カ月連続の実質賃金低下の犯人としての消費者物価の分析はここで一段落でしょう。

これからの問題は、異常な円安、円レートの変動と産業別利益構造の歪み、賃上げ圧力の増加、賃金と利益の適正分配構造への模索、経済成長の果たす役割、それに、円安から円高に転換する円レートがいかなる役割を演じるかといった問題になるのでしょう。

日本経済の正常化実現にはまだ課題が多いようです。その中で物価問題は、国民の日常生活に直接かかわる事として、問題であり続ける様です。


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