tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

実体経済のための金融

2017年08月27日 11時41分20秒 | 経済
実体経済のための金融
 前回、FRBのイエレン議長は、金融政策の方向には触れず、トランプ政権の金融制度についての問いかけをしたと書きましたが、その後の報道では、ECBのドラギ総裁は、適切な金融規制を前提に、ヨーロッパそして世界経済も回復基調にあるという成果を指摘したようです。

 その中でも、「緩すぎる金融規制は金融システムの不均衡を助長する」と指摘、適切な金融規制と貿易自由化の重要性を強調、トランプ政権の金融規制緩和、アメリカ中心の保護主義を、イエレン議長に続いて牽制したとのことです。

 ドルに対してユーロが上昇している現状については特に触れなかったとのことですが、秋には量的緩和縮小の議論に入ることは十分見込まれているようです。
 量的緩和を見直せば、ユーロ高が進むことは十分考えられますが、実体経済の回復の中で、あるべき金融の役割を考えているのでしょう。

 「緩すぎる金融規制は金融システムの不均衡を助長する」という発言が大変重要なのかもしれません。
 もともと、リーマンショックそのものが、実体経済を無視した金融の一人歩きの結果というのが現実ですから、当時の、反省の上に立った発言「金融システムは実体経済の健全な発展に奉仕するために作られたもの」という原点を忘れることは許されないでしょう。

 「経済政策をなおざりにして、金融にばかり注目している」といった意見もあったようですが、翻って日本の状況を見れば、経済政策(アベノミクス)は色あせ、異次元金融緩和の継続に、経済活性化の期待をかけているといった様相もないではありません。

 そしてその結果は、余ったお金が不動産投資に回り、さきに書きました駅近マンションバブル、さらには、リートの盛況に波及し、すでに地銀などではリートに対するバブル警戒の意見が出ているようです。

 まさに、ドラギ総裁の発言のように、「緩い金融規制は金融システムの不均衡を助長」するのです。そこで発生する経済事象は「バブル」、その実態は、実体経済と関係ない「キャピタルゲイン」の実現を目指す金融活動の盛行です。

 付加価値、つまり社会の富を増やすのではなく、値上がりによる「キャピタルゲイン」の発生、バブルが崩壊すれば「キャピタルロス」の発生、つまり、実体経済に関係ない「おカネ」という購買力だけの移動による「格差の拡大」、格差社会化の進行です。

 1990年代の初頭、バブル崩壊で辛酸を舐めた日本の金融システム、リーマンショックではアメリカのバブル崩壊のとばっちりで塗炭の苦しみを経験した日本の金融システムですが、喉元過ぎれば何とやらで、まさか同じ失敗は繰り返さないと思いますが、何か心配です。