tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

イエレンvs.トランプ:金融政策の行方は

2017年08月26日 11時48分33秒 | 国際経済
イエレンvs.トランプ:金融政策の行方は
 アメリカ、ワイオミング州のジャクソンホールで行われている年次シンポジウムでのイエレンFRB議長の発言が注目されていました。
 結果的には、イエレン議長は、当面するアメリカの金融政策には言及せず、この結果ドルは急落などと報道されています。

 金利の引き上げの見通し、バランスシート縮小の見通しについて聞きたかったマーケット関係者には物足りないもの(失望?)だったかもしれませんが、現状のトランプ政権のもとでは、FRB自体も、積極的に金融政策の方向などの発言は無理でしょう。

 6月の記者会見などでは、ゆっくりでも金融正常化にしっかり進むといった言い方でしたが、その支えとし堅調な雇用情勢を上げていました。
 しかし一部に、トランプ劇場もいよいよ馬脚が現れ、結果、アメリカ経済はトランプさんへの過剰な期待が剥げ落ち、失速などという見方も出ています。

 当面は北朝鮮問題が最大の関心事かもしれませんが、アメリカ経済、世界経済から言えば、リーマンショックに発する世界金融危機から、金融に関わるもろもろの信用を回復し、安定した経済の構築を可能にするという、極めて重要なプロセスが、リーマンショックの責任者であるアメリカを中心に世界で進められているところです。

 当然、イエレン議長の発言は注目されるところですが、そこでは、当面する金融政策よりも、金融制度、金融規制の在り方といった問題をイエレン議長は取り上げたかったのでしょう。

 発言要旨では、これまでの金融改革、金融への信用回復の成果については評価を示し、一方、その中ですでに、あの世界的な金融危機の代償(金融危機をもたらした金融機関の失敗とその代償)の大きさについての認識が薄れているのではないか、といった危惧が述べられています。

 おそらくこれは、トランプ政権が掲げる「ボルカ―・ルール(金融機関の投機的自己売買の規制など)の見直し」とFRBの金融制度についての考え方(より堅実でありたいと思っている)の違いについて、ソフトですが、問題提起をしたという事ではないでしょうか。

こうした金融制度に対する基本的考え方の違う中で、FRBとして(一方的に)当面する金融政策には触れにくかったのではないでしょうか。

 報道では、ECB(欧州中銀)のドラギ総裁は、金融緩和で欧州経済は立ち直ったことを評価し、金融緩和からの出口についての発言は?とか、日銀黒田総裁は、十分な金融緩和を続ける意向などと伝えられていますが、政権と金融の関係があちこちで難しくなっているように感じられるところです。