tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

無邪気な国会のGPIF論議

2014年11月01日 10時09分54秒 | 経済
無邪気な国会のGPIF論議
 テレビの国会中継で年金積立金の運用問題をやっていました。論争点はGPIFの運用のポートフォリオのうち、国内株式の運用に回す分を、現在の12パーセントから25パーセントに増やそうという政府の考え方についてです。

 野党側の追及は、従来の運用実績を見れば、国内株式での運用はマイナスで、運用を委託する運用会社は喜ぶかもしれないが、GPIFが収益をあげられるかどうか危ないものだから、そんな不安定な運用を増やすのは反対ということのようです。

 一方政府からは、マイナスだというのは期間のとり方で、「私が就任してからは株価は大幅に上がって儲かっている」と安倍総理は発言し、厚労相は、年金の運用には4パーセントぐらいの利回りがないと国民に約束した年金が払えないので、国債などで運用していても足りないのだ、などという説明をしていました。

 株価が上がったのは基本的には20円幅の円安のせいで、日銀総裁の交代で日銀が異次元の金融緩和をした結果ですから、日銀総裁の交代を安倍さんの功績とすればその通りということになるでしょう。
 しかし、安倍政権が続く限り株価が上昇するなどという保証はないわけですから、またアメリカやEUがガタガタして株価が下がったら、安倍さんは何というのでしょうか。

 年金運用は利回りが4パーセントないと国民に約束の年金が払えないということですが、日本経済が2パーセントほどしか成長しないのに、株取引のキャピタルゲインで年金原資だけ4パーセント増やすことは、国民所得の中から、年金への分配を毎年2パーセント増やすために、その他への配分から「掠め取る」ということに他なりません。

 GDPを4パーセント成長させて、年金を払えるように努力しますというのならいいでしょうが、それは無理なので国がデイトレをやってその分稼ぎますと言っているわけです。

  公的年金制度というものは、本来国の経済力の中できちんと賄える様に設計してこそ、サステイナブルなものになりうるのでしょう。
 経済力以上の年金設計をして、カネが足りなくなれば、(悪い言葉でいえば)ギャンブルで儲けて支払うよう「努力します」というのが「株式運用」の本来の意味ですが、株式運用で「必ず」儲かるという話は聞いたことがありません。

 キャピタルゲインとインカムゲインの区別もせずに、儲かるか儲からないかのレベルの論議を無邪気にしているのを聞くにつけ、年金についても、もっと日本らしい(アメリカ流ではない)真面目で高レベルの経済の本質論が聞ければいいなと思ってしまいます。
 余計なことですがカジノでもなんでも「金さえ落ちれば」いいというのも同列でしょう。