tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

「雇用」の果たすべき役割と改正派遣法

2014年11月12日 21時16分28秒 | 労働
「雇用」の果たすべき役割と改正派遣法
 改正派遣法は、今臨時国会でも先送りになりそうですが、これに関わる論議を聞いていても、何となく心配な事もあるような気がします。

 今、日本の雇用問題の中で最も大事な問題は、何でしょうか。有効求人倍率は、徐々ながら上昇傾向、失業率は今後も低下傾向を続けるでしょう。学卒の労働市場は、すでに就職氷河期の氷河は、景気温暖化のせいで跡形もなく消え、売り手市場の様相が強まっています。

 人手不足は社会経済的に見れば、広く国民の生活の安定、所得の均霑、ひいては社会の安定と大変結構なことであることは明らかです。これは、どこの国の政府も完全雇用を目指していることからも明らかです。
 その意味では、今の日本の状態は「失われた20年」を脱して、望ましい方向に向かっていることは明らかですが、未だ問題も残っています。

 その最大のものは「増えすぎた非正規雇用」という問題の解決が、未だに遅々としていることです。確かに非正規雇用の正規化の動きは出ています。しかし、統計数字を見ると、雇用者に占める非正規雇用の比率は殆ど改善を見ていません。

 今、派遣労働の問題を考えるとき、「失われた20年」の中で、使いやすくなった派遣労働者を含め非正規雇用の増大という形で歪みに歪んだ日本の雇用構造を、「働く人々がそれぞれに望んでいる形の雇用形態」に、出来るだけスムーズに就くことが出来るように労使も政府も考えることこそ、中心の課題ではないでしょうか。

 派遣法の改正を考えるならば、目的を明確にそこに絞ってその内容を考えるべきでしょう。
 今回の改正については、「派遣を出来るだけ安心して働ける形にするため」という理屈と、派遣という不安定な就業形態を固定化するもの」という危惧の両論が対立しているように思われます。

 私は個人的には改正派遣法案にあまり賛成ではありませんが、それはそれとして、法律というものは、鋏やナイフと同じで、使い方でどうにもなるのではないでしょうか。
 例えば、「残業制度」についても、うまく利用すれば従業員、企業ともにハッピーですが、使い方が悪ければ、深刻な悲劇を引き起こすこともありうるのです。
 法律をいくら精緻にしても、これを完全に防ぐことは出来ません。

 その意味で言えば、改正派遣法も、労使双方に納得される良い内容にする努力はもちろん必要です。しかし、それだけでは問題は解決しません。
 「雇用」の在り方は人間の生き方や社会の健全さ、長い目で見た企業の成長・発展などなどにとって極めて重要です。そしてそれを最終的に良いものにするかどうかは、現実の企業の場における労使の取り組みによって決まるのではないでしょうか。

 そう考えた時、最近の風潮で危惧されるのは、一部の企業が長期に亘る不況の中で、長期的なビジョンを失い、短期的な利益の極大化を良しとするような行動に傾斜していることのような気がする点です。

 「企業は人なり」というのが日本的経営の原点でもあります。人を育ててこそ企業は長期的に発展できるという企業経営の原点と、従業員にいかなる「雇用」の在り方・場を提供するかという問題とを、これからの日本企業は、再び本格的に考える必要があるように思う所です。