tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

日本経済低迷の実態をGDP統計で見る

2023年10月25日 22時09分09秒 | 政治
日本経済低迷の実態をGDP統計で見る
昨日のブログで、この10年来日本政府の経済政策は、全く見当違いの事を続けて来たのではないかと書きました。

そのあたりをGDPの構成の推移から見てみようとしたのが今日の試みです。

昨日は、実質GDPの構成の日米比較をして、アメリカ経済の元気の源は国民の消費需要の旺盛な所にあるのではないかと指摘しましたがそれはその通りだと思います。

日本でも政治家も経済学者も評論家も殆どに人たちが、日本経済の不振の原因は個人消費の不振にあると指摘し、消費需要の喚起が重要と言っています。

そして不振の原因は、将来不安、老後不安で貯蓄に走り、消費は節約の対象になっている事や格差社会化が進んで、貧困世帯が増え、中間層が薄くなって来てしまっていること、更にはコロナ禍で巣篭り生活になったことまで挙げられて来ている事は 皆様ご承知です。

政府もそれに手を打とうと、国民の貯蓄が増えているのを担保に、赤字国債を大量に発行して補助金、給付金のバラマキを重ね、それで何とか消費需要を支えて、経済活動の活発化につなげようとしています。

また企業の業績が良いこと、株価が上がって来ている事を背景に、貯蓄から投資へと庶民のカネを誘導し、企業も得、庶民も得と言っています。

しかし、そうした動きでは、どうも経済は活性化しないという事がこの10年来のGDPの実績から見えて来ている事には気付いていないようです。

下の図を見て頂きますと、そうした問題点が見えてくるように思われるのです。

過去10年間の実質GDP 構成の推移

                 資料:総務省「国民経済計算」

2011年度はリーマンショック後の日本経済の最悪期でした。そこから出発して2012年度には日銀の白川総裁が1%インフレ目標で少し円安に、13年度、14年度と黒田総裁のゼロ金利政策進み、円レートが80円から120円と正常化が達成されました。

国際競争力は回復、企業利益は急速に復活です。賃金も上昇を始め経済が回り出します。この期間には政府支出の赤い線は下降気味、民間消費(青)と設備投資(緑)が上向きです。多くの人は、これで景気回復と期待しました。

ところが、その後がおかしくなっています。民間の経済活動が元気になり、財政の梃子入れは後退するはずが、どうでしょう、設備投資の緑の線は順調に伸びていますが、民間消費の青い線は一貫して下降気味です。

結果、財政テコ入れは相変わらず続き、日本経済は消費不振で設備投資の片肺飛行、財政の役割は減らない形で20年度コロナ禍による「消費沈滞、投資も減少、財政出動」という最悪の状態になっています。

ここで問題は、なぜ民間消費が伸びなかったかです。このブログとして、1つの答えを出しておきましょう。

多分それは、政府が全てを取り仕切らなくてはならないと考えるようになり。その権力と能力を過信するようになったことにあるようです。

典型的な例を挙げれば、「働き方改革」然り、「成長と分配の好循環」然り。これらは民間の現場の創意工夫から生まれるものです。
政府の指示で出来るものではありません。もともと、政府はノーハウの開発もその実行もできないのです。

政府が手を出せば出すほど、民間労使はやりにくくなり、やる気をなくし、そこまでうるさいのならやらせておけという事になり、「神の見えざる手」の反対の「政府の見える手」がはびこって、経済効率は悪化するばかりなのです。

「来春闘は労使にお任せします」と言えば、労使は「貧困家庭の増加は、我々の責任だ」と考えることになるでしょう。

「何でも決める、何でも出来る」は独裁政権の特徴です。独裁政権は今、世界に害をなしています。日本の政府は十分気を付けてください。

日本経済低迷の実態をGDP統計で見る

2023年10月25日 22時09分09秒 | 政治
日本経済低迷の実態をGDP統計で見る
昨日のブログで、この10年来日本政府の経済政策は、全く見当違いの事を続けて来たのではないかと書きました。

そのあたりをGDPの構成の推移から見てみようとしたのが今日の試みです。

昨日は、実質GDPの構成の日米比較をして、アメリカ経済の元気の源は国民の消費需要の旺盛な所にあるのではないかと指摘しましたがそれはその通りだと思います。

日本でも政治家も経済学者も評論家も殆どに人たちが、日本経済の不振の原因は個人消費の不振にあると指摘し、消費需要の喚起が重要と言っています。

そして不振の原因は、将来不安、老後不安で貯蓄に走り、消費は節約の対象になっている事や格差社会化が進んで、貧困世帯が増え、中間層が薄くなって来てしまっていること、更にはコロナ禍で巣篭り生活になったことまで挙げられて来ている事は 皆様ご承知です。

政府もそれに手を打とうと、国民の貯蓄が増えているのを担保に、赤字国債を大量に発行して補助金、給付金のバラマキを重ね、それで何とか消費需要を支えて、経済活動の活発化につなげようとしています。

また企業の業績が良いこと、株価が上がって来ている事を背景に、貯蓄から投資へと庶民のカネを誘導し、企業も得、庶民も得と言っています。

しかし、そうした動きでは、どうも経済は活性化しないという事がこの10年来のGDPの実績から見えて来ている事には気付いていないようです。

下の図を見て頂きますと、そうした問題点が見えてくるように思われるのです。

過去10年間の実質GDP 構成の推移

                 資料:総務省「国民経済計算」

2011年度はリーマンショック後の日本経済の最悪期でした。そこから出発して2012年度には日銀の白川総裁が1%インフレ目標で少し円安に、13年度、14年度と黒田総裁のゼロ金利政策進み、円レートが80円から120円と正常化が達成されました。

国際競争力は回復、企業利益は急速に復活です。賃金も上昇を始め経済が回り出します。この期間には政府支出の赤い線は下降気味、民間消費(青)と設備投資(緑)が上向きです。多くの人は、これで景気回復と期待しました。

ところが、その後がおかしくなっています。民間の経済活動が元気になり、財政の梃子入れは後退するはずが、どうでしょう、設備投資の緑の線は順調に伸びていますが、民間消費の青い線は一貫して下降気味です。

結果、財政テコ入れは相変わらず続き、日本経済は消費不振で設備投資の片肺飛行、財政の役割は減らない形で20年度コロナ禍による「消費沈滞、投資も減少、財政出動」という最悪の状態になっています。

ここで問題は、なぜ民間消費が伸びなかったかです。このブログとして、1つの答えを出しておきましょう。

多分それは、政府が全てを取り仕切らなくてはならないと考えるようになり。その権力と能力を過信するようになったことにあるようです。

典型的な例を挙げれば、「働き方改革」然り、「成長と分配の好循環」然り。これらは民間の現場の創意工夫から生まれるものです。
政府の指示で出来るものではありません。もともと、政府はノーハウの開発もその実行もできないのです。

政府が手を出せば出すほど、民間労使はやりにくくなり、やる気をなくし、そこまでうるさいのならやらせておけという事になり、「神の見えざる手」の反対の「政府の見える手」がはびこって、経済効率は悪化するばかりなのです。

「来春闘は労使にお任せします」と言えば、労使は「貧困家庭の増加は、我々の責任だ」と考えることになるでしょう。

「何でも決める、何でも出来る」は独裁政権の特徴です。独裁政権は今、世界に害をなしています。日本の政府は十分気を付けてください。

補正予算は20兆円の国債発行で賄うのですか

2023年10月07日 16時52分42秒 | 政治
先日も書きましたが、岸田政権(自民党政権)は、国債の発行は無尽蔵に可能と思っているのでしょうか。

国債発行で財政破綻はないというMMT(現代貨幣理論)は成立するかと言いますと、これはアメリカと日本に当てはまりそうだからという事から出てきたもののようです。

アメリカの場合は解らない事もありません。アメリカは基軸通貨国で、万年赤字です。しかし、世界中の赤字国の赤字の合計と、黒字国の黒字の合計は等しいのです。
そして黒字国は、基軸通貨国の貨幣を買って外貨準備にします。つまり世界の黒字は、アメリカの国債を買って外貨準備にするという形で、アメリカに還流するのです。

日本の場合は、いわば不思議な国で、どんなに経済が悪くマイナス成長・ゼロ成長でも国際収支は黒字なのです。これは国民が真面目で、常に収入の範囲内で生活し、国民所得を使い切らずその分国際収支は黒字になりますので、その分を政府が借りて(国債発行)、財政政策を打つ余裕が常に生まれているという実績のお蔭です。

それ以外の国は、経済が悪くなると国際機関や外国から借金しますから、早晩IMFがこれは危険だと判断し、IMF管理になり、経済緊縮の苦労の末、赤字を脱して漸く放免というプロセスを辿ります。

という事で、日本を見てMMTが生まれ、その変な「理論」を日本の政府が信用し(半信半疑かな)赤字国債を出しているというおかしなブーメラン効果になっています。

これは、はっきりって「日本人は節度を守る」とい神話を世界が信じ、一時「有事のドル」が「何かあれば円」などという事もあるほど、日本の真面目さへの「信用」があった(今でもまだある?)からという事でしょう。

今、17カ月の実質賃金赤字が続く中で、日本国民は、政府が「賃上げ、賃上げ」と言っても、インフレを恐れて、賃上げはほどほどで、後は家計が消費抑制、貯蓄指向に切り替えて、経済は成長しなくても、黒字は増えて、政府のために赤字国債発行の環境お整え始めたようです。

本当に日本国民は健気ですが、これでは日本経済は成長しそうにありません。
それでも外国から見れば、インフレは低く、万年黒字は続いているので、円は安全だろうという「神話」は続くのでしょう。

国債増発の余地も、家計の節約が生み出し、政府がバラマキで支持率向上の可能性を作っているようです。

勿論これには低インフレとゼロ金利という環境がなければなりません。
若し、国債に3.1%の金利を付ければ、借金は12年で5割増え、20年で2倍に膨らみます。既発債は減価して日銀は巨大な評価損を抱えます。

低成長、低物価上昇、ゼロ金利、家計の節約というアベノミクス型の経済が今後も続くことを国民が許すでしょうか。
しかしこの「ゆでガエル」ならぬ「冷やしガエル」状態が何かのきっかけで崩れる時、何が起きるかという事も考えておく必要がありそうです。

日本の信用という「神話」が現実であるためには現状を続けることが大事ですが、岸田総理は、「冷温経済を適温経済へ」、「貯蓄から投資へ」、「賃上げが必要」などいろいろ言われます。しかし、これと金利水準、赤字国債発行などのバランスをどう理解しているのかは不明です。

信用の崩壊がいつ起きるかは、必ずしも理論や数字では解りません。バブルの崩壊でも、金融機関の破綻でも、不測のきっかけで起きるのです。そして、きっかけは後から解るのです。

日本もこれから、物価、賃金、金利、国際収支、外国人投資家の眼、それに、国際紛争(防衛予算)などに十分注意して、経済の運営をする必要が、次第に出て来るのではないでしょか。
もう失敗は許されないと考えて、万全の安全対策をお願いしたいものです。

迷惑な円安騒動:国民に説明しない政府・日銀

2023年10月04日 12時15分43秒 | 政治
迷惑な円安騒動:国民に説明しない政府・日銀
円レートが1ドル150円に乗るという所で大騒ぎになっていますが、149円が、151円になっても、もちろん大きな変化ではありません。

何で大騒ぎをするかと言えば、多分、何処かで線引きをしないと、とめどない円安になるのではないかという疑心暗鬼のせいでしょう。

150円になるかならないかでやっと財務大臣が出て来て「政府としては、引き続き高い緊張感をもって万全の対応をとっていく」などと言っていますが、「万全」という言葉の意味が解っているのでしょうか。

「万全」でなくても「十全」でもいいですから、1ドルが110円だったものが、あれあれと言っているうちに149円まで行って、既に日本の物価は上がり、実質賃金は1年以上もほとんどマイナスが続いている状況に拍車がかかっている現実に「対応を取っている」のでしょうか。

今回は為替介入をしなかったのに、マネー投機筋の混乱で一時円安に振れたのかどうか本当の事は解りませんが、また150円の攻防が来たとき国民の生活安定のために何をするのか、何が出来るのか、何もしないのか国民には何も解りません。

「為替は安定しているのが良い」と日銀も政府も言いますが、「注視」したり「万全」と言ったりすれば、それで為替が安定したり国民が安心したりすると思っているのでしょうか。

もともと、今回の円安は、アメリカの労使が、自国の万年赤字体質も考えずに賃上げ走り、賃金インフレを起こし、困ったFRBが自国の都合で金利を引き上げたことが原因です。

嘗ては、サブプライムローンの証券化に発したリーマンショックをゼロ金利政策で救い、それで日本は大幅円高になり日本経済は瀕死になりましたが、いずれもアメリカの企業や労使の外国への悪影響などは気にしない(覇権国・基軸通貨国の責任などは気にしない)行動の結果なのです。

アメリカからの防衛装備品の買い付けにしても、円安分だけ高くなりますから。例の42兆円も3~4割高くなるのではないでしょうか。

何にしても、政府・日銀の言うとおり為替レートは安定が望ましいので、口舌ではなく「実行」で「実効」を上げる事が、国民のために現実に必要なのです。

アメリカに気兼ねして出来ないのではないかという意見も聞きます。日銀は政府の圧力で、国債を購入して長期金利が上がらないようにすることに専念しなければならないという解説も聞きます。

しかし、それらは総て「誰かさんのご都合」の話で、日本国民のためになるようなものではないのです。

日本政府は、日本国民のために存在するはずですから、「日常の国民生活が安定して向上することが」政府の第一の関心事のはずです。
何処か肝心のところで思考回路が歪んでしまっているのであれば、国民はそれを正さなければならないと考えることが国民の義務かも知れません。

日本国民は、アメリカの国民にょりずっと真面目だと思っています。ただ、残念ながら、政策当局が、正確な情報を十分に国民に与えない所から、賢明な判断にたどり着けない所があって、その辺のモヤモヤが、政府支持率の低下という形で、不健全な反感のような形で表れているのではないでしょうか。

日本国民は、世界中での一般国民の現実の行動も含めて、世界から信用されうるだけの資質、判断力、そしてそれを実行する能も持っていると考えています。
国民に、可能な限り正確な状況を含む「情報」を周知することで、日本の経済・社会は、相互の信頼感をベースに、もっともっと良くなるのではないかと思っています。

「持続的賃上げ」実現への必要条件の整備:試論

2023年09月30日 14時51分42秒 | 政治
「持続的賃上げ」実現への必要条件の整備:試論
10月に入れば補正予算の議論が本格化するでしょう。噂では20兆円ほど国債発行が増えそうです。また今迄と同じことの繰り返しになりそうです。赤字国債でカネをばら撒き消費需要を支えるようなことを続けても日本経済は元気にはなりません。

そうした後追いの弥縫策ではなくて、事の原因に手を打つ根本解決を目指してこそ先手必勝の王道なのです。

そのためには「持続的賃上げ」実現のための必要条件の検討・整備がまず必要です。
主なものを上げます
1、長年の輸入物価上昇の国内価格への転嫁は出来たか
2、為替レートの正常化を実現する準備はよいか
3、国家財政の節度を弁える意識はあるか
4、異次元金融緩和の出口政策のシナリオの策定は出来たか
といった所でしょうか。

1については消費者物価のコアコア指数が十分に「リベンジ値上げ」を終えているかでしょう。消費者物価の統計で見ますと、2021年夏から22年春にかけて、コアコア指数の上昇が大きく遅れています。輸入原材料値上がりの影響が遅れたこと、コロナ禍で消費が落ちたことなどが原因でしょう。

グラフで見ますと、その分遅れての上昇ですが、そろそろ取り返したかな、という所です
但し、品目別、業界別では差がある様なので、そのあたりの配慮は必要でしょう。

2の、為替レートの正常化については、目標は110円から120円でしょうか、これは主に日銀の仕事でしょう。はっきり言ってアメリカ次第ですから、まず、為替レート変動と賃金水準の関係を、確り理論化して、国民に周知する必要があります。動向を「注視する」だけでは国民はイライラするだけです。

3の、財政の節度の問題では、取るべき経済政策を取らずに、補助金のバラマキで、その方が票につながるといった思考は厳禁でしょう。
政府の使う金は、経済成長の中から調達するという原則に立ち返り、カネより頭脳を使う政治、国民が経済活動、消費、投資、研究開発を活発にする気になるような政策を与野党が競うべきでしょう。特に現下の課題は消費需要のの安定した拡大でしょう。

4の、異次元金融緩和の出口政策のシナリオの策定については、金利の正常化で、借金まみれの財政の問題を、政府・日銀が国民の納得する筋道を早急に国民に示すべきです。
今のように、添えもこれも「将来の国民負担」という解説で済ますようなことでは「持続可能な賃上げ」も、SDGsも保障されません。

正常な経済とは、正常な金利が、経済活動の潤滑油として機能する経済です。
貯蓄しても利息が付かない、インカムゲインがないから、キャピタルゲイン獲得を優先するというのは、正常な経済活動ではありません。

「持続的賃上げ」は正常な経済社会、安定して成長する経済の中で初めて成立するのです。
今回の補正予算の議論の中で、上記の諸点が確り検討されれば、来春闘の労使共通の目的を目指す議論が可能になり、日本経済は正常化路線に乗るきっかけをつかめるのではないでしょうか。

蛇足ですが、選挙の時期についての憶測がマスコミを賑わせています。
日本経済社会の正常化が、当面する最も重要な目標であり、そのために真剣な努力をするものが政権に就くというのが正常な民主主義国の姿でしょう。
政権維持の「ハウツー」が通用するような社会に堕すかどうかは、国民の意識にかかっている事も忘れてはならないと思っています。

持続的賃上げ実現の方策は?

2023年09月26日 13時36分01秒 | 政治
岸田総理は日本経済を冷(低)温経済から適温経済へと目標を掲げ、些か総花的な政策提示をしていますが、マスコミはその中でも、持続的賃上げの実現が主眼といった報道です。

補正予算の季節に合わせての政策展開なので、中でもパートの就労時間自粛の原因と言われる130万円の壁、106万円の壁、の緩和についての報道が賑やかで、50万円の助成も議論の的ですが、これらは、持続的「賃上げ」の外の問題でしょう。

岸田総理は、言葉の発明はお上手で、「適温経済」というのもその一つかと思いますが、残念ながら、いつも内容の説明がありません。

今回は「持続的賃上げ」が主要な問題ですから、これに絡めて解釈すれば、
・輸入価格上昇でコストが上がっても、インフレを嫌い、出来るだけ製品値上げはしない、というのが低温経済。
・輸入価格が上昇すれば、それに輪をかけて賃上げし、値上し、忽ちインフレを起こす、というのが高温経済。
という事ではないでしょうか。

前者が一昨年までの日本、後者は今のアメリカです。
日本はアベノミクス第1弾で円レートが80円から120円と50%の円安になっても、輸入穀物が値上がりしても、賃金も物価も上がらず、ずっと消費不振の低成長経済でした。

アメリカは(ヨーロッパも)、原油や穀物の輸入価格が上がれば、忽ち輸入インフレは賃上げを触発し、原材料と賃金のコストアップで今回も10%レベルのインフレ景気になり、中央銀行が金利引き上げで景気の過熱を抑えるのに大童です。

日本も、第一次石油危機の時は、今の欧米と同様でしたが、その行き過ぎた反省から、インフレ嫌いの冷温経済になったようです。

「冷温」も良くない、「高温」も良くない、ならば「適温」と岸田流の造語は巧みですが、ではいかにして「適温」に導くか、これが問題です。

岸田さんはその答えの中心に「持続的賃上げ」を置いています。これも「言葉」としては正解です。しかし、どうやって、持続的賃上げを可能にするかの説明はありません。

現実に賃上げをするのは、企業労使です。特に、賃上げを仕掛けるのは労働組合です。

殆どの(今の日本の)経営者は、昔の「労使一体」の「企業は人間集団」という意識はお忘れのようですから、業績好調は「ボーナスの多少の調整」で十分とお考えでしょう。

労働組合も昔の様に大幅賃上げとは言いません。組合の一部には毎年10%の賃上げを掲げるグループもあります。しかし社会的支持は得られないようです。

こうした中で、日銀と共に掲げる「2%インフレターゲット」という安定した「適温経済」に、如何なるシナリオで持って行くのか、それが問われているのです。

今、日本のインフレは疾うに2%を超えています。明らかにインフレですが、その原因には目に見えるものが2つ、潜在的なものが1つあるようです。

目に見えるものは、1つに国際的なエネルギー、穀物その他資源価格の値上がり、2つに異常な円安です。
潜在的なものは、こうした中で、賃金と物価の関係を如何に理解すべきか政府、日銀、アカデミアの解説がなく、国民の意識は混乱し困惑、結果は不安感、不満足感になって、生活必需品などの出来るところが値上げに動いているという現実ではないでしょうか。

という事で、国民は、「政府どうする」、「日銀どうする」と、具体的な、腑に落ちる説明を聞き、対応の仕方を考えようと思っているのではいでしょうか。

そうした十分な説明・情報を得て、労使の国民も、みんな「いかにして持続的賃上げを実現するか」を議論するようになれば、その中から「適温経済」への道が見つかるでしょう。

日本はもともと『コンセンサス社会』です。「持続的賃上げ」は政府から与えられるものではなく、政府が提供する正しい情報をもとに、国民が(労使が)考え出すものでしょう。

当初予算(本予算)とは一体何なのでしょう

2023年09月25日 16時28分43秒 | 政治
当初予算(本予算)とは一体何なのでしょう
当初予算の審議で、新年度も最大の規模などと報道されますが、通常伸びたのは1兆円か2兆円です。
しかし今年もそうですが、もう補正予算を組むことに政府の意向はどんどん進んでいきます。

補正予算を組んでいろいろなことを付け足しているのが政府の仕事のようですが、補正予算を組むといっても、税収が増える見通しだから、新しい仕事が出来るというのではなくて、財源はほとんど公債金収入をあてにしてという事のようです。

つまり赤字の政府がさらに国民から借金をして、経済社会情勢が大変だから新たな政策を打ち出そうというのです。
大事なことはすでに当初予算つまり「本予算」で組んであるはずですが、やらなければならない事がいっぱい出て来るのです。

本予算の時は、無駄を省き少しでも節約して公債依存度減らすなどといった論議もあるようですが補正予算になると何をやるか、やってくれるかの方が、重要で、財源の方は、予備費がありますとか国債発行も結構みたいな雰囲気になるようです。

予備費も元は国債ですし、補正予算の財源は10兆円単位で国債発行がまかり通るようです。選挙などという事になれば、何をサービスするかに話は集中してきます。
この辺の様子をグラフにしました。

    令和以降の当初予算(本予算)と決算の推移(単位:兆円)

            資料:財務省「毎年度の国の予・決算」

2019年(令和元年)までは真面だったようですが、2020年から大変化で、本予算(青の柱)にもたっぷり国債収入が入っていますが、決算(赤の柱)との差額は殆ど国債発行で、この年の国債発行総額は100兆円を超えています。

それで結果は40兆円近い使い残し、繰越金は予備費という事でしょうか。
その後も巨大な補正予算は続き、予備費の残額は使い込みで減っています。

今年も岸田総理は補正予算に勢い込んでいますから、結果がどうなるかは解りませんが、国債発行残高はまた増えるのでしょう。

予備費で遊ばせておいても利息はつくはずですが、今はゼロ金利だから気にしないのでしょうか。利息の付く民間企業でしたら、借金は少しでも返済しておくのですが。

MMTではいくら政府が借金しても問題はないとい理論だそうですが、MMTが正しいかどうかはまだ証明されていません。

日銀が金利を上げると、借金づけの政府は大変だと言われますが、国債は半分以上日銀が持っていて、日銀に利息が入ればそれは直ちに【国庫納付金】になるので政府の負担は半分以下です。そのあたりは日銀と話が付いているのでしょうか。

お上の事は解りませんが、財政の話は予算よりも「決算」の方が大事のように思われます。

財政学の大御所伊藤半弥先生は「財政学の基本は『入るを計って出づるを制す』にありと言われましたが、今は『出づるを謀って、入るを合わせる』で良いのでしょうか。

補助金より減税の方が合理的では

2023年09月02日 13時11分05秒 | 政治
最近与党の政治家の中で活躍している言葉に「寄り添う」というのがあります。
結構頻繁に使われる言葉ですが、私などは、むくつけき、そして偉そうな政治家が「寄り添って」きたら、「気持ち悪いからやめてくれよ」と逃げるでしょう。

言葉には、その本来の「語感」がありますから、そのあたりは日本語の繊細なニュアンスを意識して、自分が使って似合う言葉かどうか考えた方がいいような気がします。

この言葉を政治家が使うのは、大体相手が困っているときで、自然災害で被害を受けたり、政府の閣議決定の結果、不都合が生じたり、何か政府がやらないと評判を落とすという状況があるのが一般的で、「寄り添う」というのは、忙しいけれど出来るだけ顔を出すという事から始まって、決め手は補助金を考えましょうという事でしょう。

最近のガソリン価格高騰についてもリッター170円台を超えないように元売り企業への補助金を継続するというのが、元売りにも、スタンドにもドライバーにも「寄り添う姿勢」という事なのでしょう。

これに対して、「補助金を出すよりガソリン税の減税をした方が合理的では?」という意見も出ていました。

ガソリン税は国・地方税込みでリッタ―55円(50円+5円)程度ですが、この税金分にも10%の消費税がかかります。
「税金にも消費税がかかるの!」と驚く人もいる日本人の「人の好さ」ですが、これは有名な2重課税の代表例です。

こうやって税金を取っている政府が、それでも足りないから国債を出し国民から借金して、それを財源して補助金を出すという仕組みになっているのです。

補助金は一時的で、税金は恒久的だから、そういうことになるのも仕方ないという意見もあるでしょう。

しかし、減税をすればそれは全国民に均霑しますが、補助金は、政権が気にかけている人だけに払われるので、基本的に不公平になる可能性が大きい、という意見もあります。
補助金を当てにせず頑張れば、補助金の対象にはなりません。

この春の決算でも、石油元売り会社のトップの、「補助金もあって、市場最高の決算になりました」などの正直な発言も目にしたとことです。

政権党にしてみれば、陳情があって補助金を出すことが集票にもつながるわけで、そんな気持ちは微塵もないとは言えないでしょう。

大体減税をすれば、カネはそのまま国民の懐から動きません。増税や国債発行で、国民のカネを一度政府の懐に入れて、それを政府の裁量でまた国民に戻すという事になると、余計な手間や手続きが必要になります。

政治家や官僚の人件費は.結構高いので、その余計な手続きのコストが場合によっては効果を上回ることは結構多いかもしれません。

こういう事をできるだけ無くして政治、行政のコストを安くするのは、本来政治家や官僚自身の仕事ですが、有名なパーキンソンの第一法則の様に「官僚組織は常に肥大化する」のです。

改めて言えば、「寄り添う」というのは本来心情の問題で、カネで解決する事ではないというのも、日本語としては本来の意味ではなかったと思うところです。
政治用語は特別かもしれませんが、本来の日本語を正しく使うことも大事ではないかと思ったりするところです。

「濡れぬ先こそ露をも厭え」ですがその後は?

2023年08月24日 15時44分42秒 | 政治
安倍政権の集団的自衛権の閣議決定から、日本の平和憲法は不安定なものとなり、今は、敵基地攻撃能力、武器輸出問題が議論される事になり、南西諸島にミサイルが配備されるようになりました。

将来、日本の政府がどんな状況の中でどんな意思決定をするかは解りませんが、日本が戦争に巻きこまれる可能性が出てきたと国民は感じています。

今日のマスコミの報道では、日本が堅持してきた「武器輸出三原則」もなしくずしに見直され、条件を付けながらも武器輸出を認めようという方針に政府が見直してきている様子が種々報道されています。

日本には「濡れぬ先こそ露をも厭え」と言う諺があります。この諺の解釈な難しい所ですが、本来の解釈は「人間は本来濡れていないのだから、それを大事にして、少しでも濡れないように気を付けよう」という事と思いますが、ここで「濡れる」というのは「悪に染まる」という事でしょう。

では、一度濡れたらどうするかという事は「言わぬが花」で、諺には続きはありませんが、敢えて言えば、一度濡れたら大変ですよ「人間は弱いものですから、容易に立ち直る事が出来ないのです」という教訓を含んでいるのでしょう。

日本国憲法とそれに対する第二次安倍内閣以降の日本政府の態度、行動を見ていますと、いつもこの諺が心の中に浮かんで来てしまいます。

アメリカと仲よくしようとしたせいか、トランプというとんだ大統領をと仲よくしたせいか知りませんが、アメリカと仲良くなるのに比例して、日本国憲法の第九条とは折り合いが悪くなるという事になりました。

政府はそこにいろいろな理屈を付けて辻褄が合うように見せながら、結局は、日本にミサイルや無人機が飛んでくるという可能性がどんどん高まるような政策決定を「閣議決定」という形で決めて、国民はそれを認めなさいという事になっています。

今回の武器輸出問題も、イギリス、イタリアと共同で高性能戦闘機を開発するというプロジェクトへの参加決定が始まりです。

先ず、開発には巨大なカネがいるので、日本独自では無理、共同が合理的という理由でした。何か胡散臭いと感じていましたが、イギリス、イタリアでは、高性能戦闘機が出来たら第三国に輸出したいという事になるようです。

日本で生産した戦闘機は共同開発した3国ならどこで使ってもいいという事になりますが、第三国に輸出されると、何処でどう使われるかわからない、内戦や国際紛争で一般市民の殺傷の可能性が当然あるので、日本の武器輸出三原則に抵触する、「日本どうする?」という事になっているようです。

武器輸出三原則は安倍政権の下で平和貢献に資する場合や日本の安全保障に資する場合には輸出を認めるという条件付きで見直され(防衛装備移転三原則)ていますが、今度は国際法違反の武力や威嚇を受けている国には輸出出来るとしたいようです。

引き合いに出されるのは、ロシアのウクライナ侵攻におけるウクライナ支援のようですが、現状日本は人道支援や復興支援に徹するという事で、ウクライナもそれには理解を示しています。日本の平和憲法の意義を理解しているからでしょう。

聞くところによれば、武器輸出の中で、部品はどうかという質問に対し「部品は武器ではない」などという見解になるようで、こういうのを抜け道というのでしょう。

こんな様子を見ていますと、現政権は「何とかして、日本を戦争の出来る国にしていきたい」と考えているとしか思えません。

民主主義国ならば、それが国民の輿論だという事のはずですが、どう見てもそんなことはないようです。
ならば、安倍・岸田政権というのは一体何なのでしょうか? それとも日本は民主主義国ではなかったのでしょうか?
 (日本国民よ、しっかりせい!という声が聞こえて来そうです)

処理水問題、岸田さんに何が出来るのか

2023年08月23日 11時19分34秒 | 政治
福島第一原子力発電所に溜っている放射能を含んだいわゆる「処理水」が、もうこれ以上貯める所もないという事で海洋放出が決まった事でとんだ騒ぎになっています。

ニュースを聞いていても、何故こんな騒ぎにしなければならないのかとずっと奇妙な感じを受けています。岸田さんに一体何が出来るのか全く解らないからです。

というのは、お忙しい岸田総理が、アメリカでの日米韓首脳の三者会談を終えた翌日には福島に行き、処理水放出についての現場を視察に行っています。

その翌日には東京で全魚連の代表と会って「関係者の理解なしにはいかなる処分も行わない」と言っていた手前でしょう、安全性の確保や風評対策を徹底して行うことなどを丁寧に説明し、24日には放出を始めるという順序を踏んでいるという事のようです。

「大変ですね」と申し上げなければならないのかもしれませんが、どうしても理解できないのは、岸田総理がこうして飛んで歩いて日程をこなせば何か解決するのかという事です。

処理水の放出は24日だそうで、放出しないわけにはいかないのです。口癖の「丁寧に説明」と言ってもそれで漁業者が「ああ、そうでしたか」と納得了解することはないでしょう。

海外を見れば、中国は。わざわざ「核汚染水」と呼んで、日本の魚は買わないと言っていますが、自分のところの原発の排水の中身は棚に上げていますから、これは嫌がらせで、放射能の問題ではなく、日中友好努力の欠如の問題でしょう。

今回の事の起こりは岸田さんが「自分の責任で自分が決めます」みたいなん事を言う「癖」のせいのような気がするのです。

人畜に害のない「処理水」か有害な〔汚染水」かというのは、岸田さんには全くわからない事でしょう。自信をもって安心できると言っているのは、IAEAが検査の結果「問題ありません」と言ってくれている事の伝言でしかないのです。

地球表面には、人類の生存に害がない程度の自然放射能が常に存在します。IAEAの判断の最大の基準は自然放射能よりどの程度低いかが基本でしょう。

処理水に含まれる多様な放射能について調査し、結論を出すことは、総理にも内閣にも不可能ですから、IAEAに頼るしか方法はないのです。
やはり世界の権威を集めた研究機関のお墨付きを頂くしかありません。

ならば、「お墨付きを頂きました」、そこまでの排水処理の努力を日本はしました。と報告すること以上のことは出来ないのです。「私が決めて・・・」みたいなことを言うので、相手はIAEAではなく岸田総理という事になるのです。

「世界で最も権威あるIAEAに認められていますから、私はそれに従って行動して誤りはないと考えています。以上」で良かったのではないでしょうか。

本当の総理の仕事は、「この事故に学んで、日本の原発政策をどうするか、悪化している中国との友好関係を如何に改善するか」といったものではないでしょうか。

日本は、改めて民主主義を大事にしましょう

2023年08月22日 14時27分59秒 | 政治
78年前、日本は310万人以上と言われる犠牲者を出し、国土の大部分を廃墟にされて太平洋戦争に敗戦するという巨大は犠牲の後にようやく軍部独裁という暗黒の時代を卒業し、民主主義国という、より進歩した文化を持つ社会の仲間入りをしました。

人間が生きる価値への認識が180度変わる体験を日本人はしたのです。当時、国民学校の6年生だった私も、この価値観の大転換から多くのことを学び、選挙権はありませんでしたが,やっぱり人間社会には民主主義が相応しいと理解して来ました。

その思いからでしょうか、選挙権を得てから今日まで、選挙で棄権したことはありません。今でも民主主義の制度としての根幹は選挙にあると考えて、より良い民主主義社会を求めるならば、投票は最も基本的な義務と考えています。

戦後、日本人はこうした意識からでしょう、選挙の重要さを真面目に考えていました。代表的な選挙である衆議院の選挙で見ますと投票率はほぼ70%台で推移しています。

しかし残念ながら、70%台という投票率は平成2年の総選挙で終わりました。その後の投票率は急落、平成8年には60%を切り、平成26年には53%と最低を記録、その後は50%台に定着してしまったようです。

「昭和は遠く」などと言いますが、民主主義、選挙、投票といった、日本の国づくりの基本認識についても、「思い出の時代」になってしっまったのでしょうか。

日本の民主主義は、日本人自身が常に育てていかなければならないものです。手抜きをすれば容易に劣化します。
マスコミでも、飲み会でも、政治批判は絶えません。その責任は政治を批判するマスコミや国民自身にあるのです。

投票率の低下は、象徴的に、日本人の「民主主義こそが大事」という意識の劣化が齎したものなのでしょう。

このブログでは「民主不義の『トリセツ』が必要な時代」を書きました。今年5月には「日本の民主主義はかなり重症?」を書きました。

政治家を批判してみても、考えてみればそれを選んだのは国民であり、棄権者は結局は投票しない事で、そうした政治家の当選を助けるというマイナスの役割を確り果たしているという事なのでしょう。

しかし、時代は昭和ではないのです。「昭和の人は真面目だったんだね」と回顧する令和の時代なのです。

先日、「投票率が高まる名案を考えたら」と言われたので・・・、
「投票率の最低ラインを決めて、そこに達するまでは毎日が投票日とする」
これでどうでしょう。

国立科学博物館の窮状、一事が万事か?

2023年08月09日 14時51分28秒 | 政治
国立科学博物館が1億円を目標に「クラウドファンディング」を発表し、即日1億円の目標を達成したばかりでなく、今日現在、すでに5億円近い支援総額になっているという事が報道されています。

我家でも、家内が「うちもやりましょう」と早速反応を示しましたが、このニュースは、良いニュース、嬉しいニュースだなという感覚とともに、ずっしりと思いモノを多くの人の心に押し付けたのではないでしょうか。

国立科学博物館は上野の本館のほか、港区白金台、筑波にも分館がありますが、子供のころ親に連れられて行ったり、学生時代自分の興味で行ったり、親になって子供を連れて行ったりと、いろいろな機会に行かれた方は、恐らくその収蔵品の凄さに圧倒された経験をお持ちではないでしょうか。

特に子供のころのそうした経験は、時に人の生涯を決めるような経験となることも少なくないでしょう。
主要国は何処もこうした博物館を整備し、その収蔵品を国の誇りにしているのではないでしょうか。しかし、その維持管理収集にはそれなりのコストが掛るのは当然です。

こうした一国の科学文化の原点のような貴重な施設が、日本においては維持管理が不可能になるような厳しい財政状態に置かれている事が、「1億円」という金額のクラウドファンディングという形で、日本中、多分世界中に知れ渡った事でしょう。

日本は、国立博物館の維持管理の予算もままならないような国になってしまったのか、といぶかる外国人もいるでしょう。

しかし多くの日本人は、恐らくそうは思わないでしょう、コロナになれば、政権の人気取りのために巨額なバラマキ予算を組み、アメリカに言われれば、使うか使わないか解らない防衛装備品(使ったら国の破綻を来たす)を購入し、財政では膨大な予備費を組み、巨額な使い残しを計上するといった、一体何のため、何を目指して国の財政を組んでいるのかと思われるような政策の金額は、総て兆円単位のもののようです。

「兆円」というのは「億円」の「1万倍」の金額です。
科学立国などとも時に口にする現政権ですが、国民の科学の心を育む原点ともいうべき「国立科学博物館」の維持管理が、コロナなどによる入場料の減少で、不可能になるような状態に対し適切な対応を取られないというのが現実なのでしょう。

こうした現政権の政策態度の基底には、現政権が「科学技術」という人類の文化発展の原動力に対して、それを尊重し重視するという態度の欠落があるように思われます。

現政権にとって重要なのは、政権維持に今すぐ役立つことなのでしょう。
それ以外の事には関心は薄く、科学技術のように基礎的で、時には近視眼的な政権に批判的だったりするものは排除するとう浮薄な考え方や行動をとることになり、その象徴的なものが日本学術会議との対立といった形で現れるようです。

科学技術のような基礎的なものは、今日の得票には関係ないように見えても、最近発表された科学技術の引用論文数の国際ランキングが13位とこれまでの最低を記録するといった状況を齎し、日本の科学文化、ひいては経済社会の発展の停滞を齎すのです。

今回の国立科学博物館のクラウドファンディングの成功は、国民のそうした現政権への批判の意識の裏返しであることを、素直に洞察するような的確な思考力を、現政権に期待したいと思うのですが、無理な話でしょうか。

「資格証明書」を職権で交付します

2023年08月04日 11時23分36秒 | 政治
「資格証明書」を職権で交付します
岸田政権がマイナンバーカードについて基本的にどんな考え方をしているのか解らない中で、健康保険証を廃止しマイナカードに一体化するころにすることになりました。

マイナカードは強制ではなくて、作りたい人だけ作ることになっているので、「国民皆保険」の日本ですから、当然この両制度の間には矛盾があります。「マイナカードを作らない人はどうなるの?」です。

その辻褄を合わせるためにマイナカードを作らない人には「○○健康保険の加入者です」という「資格証明書」を発行しますという事になり、その有効期間は1年だという事でした。

どう考えても政策に合理性も整合性もなく、健康保険証の様に人の命にも関わるものですから反対論が沢山出ていました。

そこで政府はなにか良い考えを出さなければならなくなり、今日岸田総理が記者会見をして、国民にご迷惑をかけないような改善策を発表することになっています。

その内容は、すでにマスコミが報道していいて、「資格証明書」の有効期間は「上限」を5年に伸ばし、健康保険にもいろいろあるわけですから具体的な有効期限はそれぞれの健康保険組合に任せるという事だそうです。

さらに、マイナカードを持たない人の手数を省くために、本人が申請して「資格証明書」を交付してもらうというのを改めて、対象者全てに「職権で交付する」という事にするという事のようです。

更におまけがついていて、既にマイナカードと健康保険証を一体化している人で、「それなら分離したい」という人には、希望すれば、マイナカードの健康保険証の利用登録を解除して「資格確認書」の選択も認めるのだそうです。

その他いろいろあるのかもしれませんが、これでは国民皆保険を確実にするためには、マイナカードの普及は後退してもやむを得ないという判断になってしまっています。

折角「国民に便利だから」とマイナンバーという制度を作り、デジタル庁という省庁まで作って膨大な時間と経費をかけ、今年中に100%(?)普及を目指し、マイナカードの積極活用による行政の合理化、効率化を促進するといった方針は何だったのでしょうか。
という事なので、それならこんな案は如何でしょうか。

職権で交付する[資格証明書」は、2通りに分けます。
全部で何千万枚になるか解りませんが、その内マイナカードを持っている人の分は単なる健保の資格証明書です。

マイナカードを持っていない人の資格証明書にはマイナカードの機能も政府が職権で付帯させます。
但し使わなくても問題ないし、邪魔にならない形式にします。若し使ってみて便利だと思えばいつでも使えます、とい仕組みにする事です。

マイナカードに入れる情報は全国民をカバーし、総て政府が持っているデータです。職権でマイナカードを持たない人を把握でき、その人たちには、「マイナカード付き」の「資格証明書」を交付すれば、マイナカードで全国民がカバーされるはずです。
(これはかつて書きました「マイナカード・トラブルの中での疑問」の応用編です。)

行政機構のデジタル化のベースになるマイナカードです。もともと任意で登録した人だけが持つことにして、飴玉つきで普及を図るといったアプローチが誤りだったのでしょう。
今日の総理の記者会見では、そのあたりの政府の基本的な考え方を総理の口から聞いてみたいところです。
(最後の提案の部分は、当初のものを訂正しています。)

今、日本に必要な「是々非々」の思考と行動

2023年08月02日 13時50分17秒 | 政治
今年も8月に入りました。
8月は「8月15日」の「太平洋戦争終戦の日」がある月です。この所マスコミでも太平洋戦争の惨禍を取り上げることが多くなっています。理由ははっきりしています。

今、日本は、戦争に巻きこまれる可能性が、確率としては「ゼロ」でないという現実の中にいます。
しかもそれは日本でない他者の意思決定によるという状態です。具体的に言えば「台湾有事」が起きるか否かです。
日本政府は、沖縄の南西諸島中心に、それに備えようと具体的な政策を展開しています。

沖縄が再び戦争に巻きこまれる可能性だけではありません。日本中に米軍基地は沢山あります。この近所では横田基地です。
ミサイルがどこまで飛んで来るかは、中国の意思決定次第でしょう。

こうした状況の下で、今、我々はそれなりに平穏な日々を過ごしています。「台湾有事」などは起きないだろうと漠然と想定しているから平穏なのです。

起きなければそれに越したことはないのでしょうが、問題は、平和憲法を持つ日本政府が、日本が戦争に巻きこまれる可能性を作ってしまっているという事でしょう。

戦争を経験した世代は、この可能性に大変敏感になっています。それは、戦争の不条理、悲惨の直接体験が、昨今マスコミにたくさん登場している事にも表れています。

勿論「戦争を体験した世代」というのは適切ではないでしょう、戦争を体験していなくても戦争の不条理・悲惨を理解することは、情報への接触と正常な思考によって十分可能でしょう。だからこそ、殆どの日本人は戦争反対でしょう。

しかし、日本政府は「集団的自衛権」以降、平和を望む国民の思いに応えるという「是」を忘れて、戦争を認めるという「非」を「是」の如くにする行動を続けているのです。
はっきり言って、戦争は人類にとって基本的に悪で「非」なるものなのです。

矢張り、人間として、正しく自らの生を生きると考えるならば、「是は是、非は非」としっかりと識別し、それに則って考え、行動するという確固たる意識を持たなければとわきまえるべきではないでしょうか。

「是々非々」は荀子の言葉と言われていますが、荀子は、人間は弱いものという事を認め(性悪説などと言われたようですが)、弱いからこそ、意識して道理に叶う是は是、道理から外れた非は非とはっきり意識し行動するように努力しなければいけないと言ったのではないでしょうか。

自民党や公明党の国会議員なら誰でもみんな、更に自民党員なら、自民党に投票する人ならみんな、日本が戦争に巻きこまれてもOK、アメリカについていけば間違いないと考えているわけではないでしょう。ですから今、「是々非々」の発言と行動が必要なのです。

既に日本は、戦争をするか、しないかの岐路に立っているのでしょう、というより戦争の可能性を否定しない場所に立っているのです。

リーダーたちが、日本国民の意思の代表でなく、自ら「是々非々」の判断をせずに、アメリカの意向に追随・忖度する事をもって行動の基準にしているように見える状況の中で、日本の主権者である国民は、今こそ「是々非々」の原点に立ち、自らの判断を政府に明確に伝えなければならないのではないでしょうか。

「過ちては則ち改むるに憚ること勿れ」が問題解決の鍵

2023年07月28日 12時41分12秒 | 政治
「過ちては則ち改むるに憚ること勿れ」が問題解決の鍵
マイナカードと健康保険証の問題は、総理の態度が少し変わってきたようで、余り馬鹿馬鹿しいトラブルは避けられるのではないかと思えるようになってきました。

自民党内にも、来年秋で紙の保険証廃止は、どうも無理のようで、延ばした方がいいのではないか、強行すれば余計なトラブルばかり増えるのではないかという危惧が出て来たようです。

岸田総理も河野デジタル相とともに現場の意見を聞いたようで、物事はもう少し合理的な方向に変わる可能性が出てきたという事でしょう。

ここでそういうことが起きれば、自民党が黒を白と言いくるめ、問題をうやむやにして、国民の記憶の薄れるのを待つという安倍政権以来の悪習が、政権政党自身の中から改革されるという事で、これは大変結構なことではないかと思われます。

モリ・カケ・サクラから始まって、カジノ、学術会議任命拒否問題などなど、一度決めれば、何があっても改めないというのが政権の行動基準という事になりますと、思考や行動が硬直し、物事に解決がなくなるのが結果です。

朝令暮改がいいとは言いませんが、大多数の国民が疑問を持つような事でも、決まったからにはそれが正しいと言い張っては、日本人の得意とするコンセンサス作りが不可能になり、問題は棚晒しで放置されて、不信や不満がたまっていくというのがその結果です。

そしてこうした政府の態度はいろいろな所に伝染し、民間組織や個人間の関係においても、誤りを放置するような風潮が進み、社会が劣化するのです。

さらに進めば、責任者が、自らの判断で解決しない問題は、非合法の手段で正すしかないという意識に点火し、テロ行為の原因にもなるのでしょう。

今回、岸田総理が、マイナカード問題について、政府の政策に無理があった、これは改めて、より合理的な政策に変えていかなければならないと決断することになれば、これまでの絶対多数を盾に反対意見は一方的に無視するという自民党のイメージは変わるでしょう。

国民の多くが、安倍政権以来の、一度決めたら「過っていても改めない」政治が、国民の意向を聞き、「過ったら則ち改める」、国民の意見を聞く政治に変わるのではないかと考えて、歓迎するのではないでしょうか。

もともと独裁制は日本にはなじまないのです。日本は伝統的にコンセンサス社会なのです。日本の伝統文化に政権が近づけば、多くの日本人は安心して歓迎するでしょう。