司法書士内藤卓のLEAGALBLOG

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不動産登記の申請において,押印を要しない場合

2010-04-09 16:37:46 | 不動産登記法その他
 かつて,官公庁における押印義務付けの見直しを図るために,「押印見直しガイドライン」が制定されたことがあった。

cf. 押印見直しガイドライン(平成9年7月3日事務次官等会議申合せ)
http://ariadne1118.cocolog-nifty.com/blog/files/ouinn.pdf

 そして,法務省においては,登記に係るものとして,平成10年12月21日法務省民三第2456号依命通知が発出された。

【要旨】
●「押印見直しガイドライン」(平成9年7月3日事務次官等会議申合せ)等に基づく見直しの結果、申請人等の押印について合理化を図ることとなり、不登法等の改正を待たずに次のように取り扱う。なお、乙号事件の申請書については、申請人の押印が欠けているときであっても補正させることを要しないとの取扱い(昭和39年12月12日民三第1023号)を変更するものではない
●不動産登記法60条1項ただし書前段の登記の申請書、各種財団に関する登記・立木・船舶・農業用動産抵当・建設機械及び企業担保権に関する登記並びに鉱害賠償登録の申請書に申請人の署名捺印に代えて記名押印又は署名のみがされているときであっても、補正させることを要しない
●地積の測量図・土地の所在図・地役権図面・建物の図面・各階平面図に申請人又は作製者の署名捺印に代えて記名押印又は署名のみがされているときであっても、補正させることを要しない
●信託登記の申請書に添付される不動産登記法110条ノ5第1項の書面に、申請人の署名捺印に代えて記名押印又は署名のみがされているときであっても、補正させることを要しない
●共同担保目録、工場財団目録等各種財団目録に、申請人の署名捺印に代えて記名押印又は署名のみがされているときであっても、補正させることを要しない
●登録免許税法13条の適用を受けるための登記証明申出書、登録免許税法31条3項に基づく再使用証明申出書に、申請人の署名捺印に代えて記名押印又は署名のみがされているときであっても、補正させることを要しない
●登記簿の謄本・抄本、地図・建物所在図の写しを交付するときの主任者の押印は省略して差し支えない



 その後,上記に係る不動産登記法の改正は,行われないままであったが,平成16年改正の際に,大幅な見直しが行われた。押印が不要である場合が,明文化されたわけである。

 その結果,現行法においては,抵当権等の抹消の登記義務者についても,登記済証が添付される場合,又は登記識別情報が提供される場合には,委任状に「署名」すれば,当該委任状への押印は不要である(規則第49条第1項第2号,第47条第3号参照)。

 また,委任による代理人である司法書士が書面で申請する場合には,当該司法書士が申請書に「署名」するときは,当該申請書への押印を要しない(規則第47条第1号)。ただし,申請書が複数枚にわたるときは,各用紙のつづり目に契印をしなければならない(規則第46条第1項)し,印紙納付の場合に,印紙台紙を用いるときは,申請書と台紙の間に契印が必要となる(登録免許税法第22条)。
 なお,司法書士は,申請書の末尾又は欄外に記名し,職印を押さなければならない(司法書士法施行規則第28条第1項)ので,全く押印不要というわけにはいかない。


 押印を要しない場合があるといっても,「記名押印」又は「署名」という考え方であるから,押印をしない場合には,「記名」では足りず,「署名」が必要である。



不動産登記令
 (申請情報を記載した書面への記名押印等)
第16条 申請人又はその代表者若しくは代理人は、法務省令で定める場合を除き、申請情報を記載した書面に記名押印しなければならない。
2~5【略】

 (代理人の権限を証する情報を記載した書面への記名押印等)
第18条 委任による代理人によって登記を申請する場合には、申請人又はその代表者は、法務省令で定める場合を除き、当該代理人の権限を証する情報を記載した書面に記名押印しなければならない。復代理人によって申請する場合における代理人についても、同様とする。
2 前項の場合において、代理人(復代理人を含む。)の権限を証する情報を記載した書面には、法務省令で定める場合を除き、同項の規定により記名押印した者(委任による代理人を除く。)の印鑑に関する証明書を添付しなければならない。
3・4【略】

不動産登記規則
 (申請書に記名押印を要しない場合)
第47条 令第十六条第一項 の法務省令で定める場合は、次に掲げる場合とする。
 一 委任による代理人が申請書に署名した場合
 二 申請人又はその代表者若しくは代理人が署名した申請書について公証人又はこれに準ずる者の認証を受けた場合
 三 申請人が次に掲げる者のいずれにも該当せず、かつ、当該申請人又はその代表者若しくは代理人が申請書に署名した場合(前号に掲げる場合を除く。)
  イ 所有権の登記名義人(所有権に関する仮登記の登記名義人を含む。)であって、次に掲げる登記を申請するもの
   (1) 当該登記名義人が登記義務者となる権利に関する登記(担保権(根抵当権及び根質権を除く。)の債務者に関する変更の登記及び更正の登記を除く。)
   (2) 共有物分割禁止の定めに係る権利の変更の登記
   (3) 所有権の移転の登記がない場合における所有権の登記の抹消
   (4) 信託法 (平成十八年法律第百八号)第三条第三号 に掲げる方法によってされた信託による権利の変更の登記
   (5) 仮登記の抹消(法第百十条 前段の規定により所有権に関する仮登記の登記名義人が単独で申請するものに限る。)
   (6) 合筆の登記、合体による登記等又は建物の合併の登記
  ロ 所有権の登記名義人であって、法第二十二条 ただし書の規定により登記識別情報を提供することなく担保権(根抵当権及び根質権を除く。)の債務者に関する変更の登記又は更正の登記を申請するもの
  ハ 所有権以外の権利の登記名義人であって、法第二十二条 ただし書の規定により登記識別情報を提供することなく当該登記名義人が登記義務者となる権利に関する登記を申請するもの
  ニ 所有権以外の権利の登記名義人であって、法第二十二条 ただし書の規定により登記識別情報を提供することなく当該登記名義人が信託法第三条第三号 に掲げる方法によってされた信託による権利の変更の登記を申請するもの
  ホ 法第二十一条 本文の規定により登記識別情報の通知を受けることとなる申請人

 (委任状への記名押印等の特例)
第49条 令第十八条第一項 の法務省令で定める場合は、次に掲げる場合とする。
 一 申請人又はその代表者若しくは代理人が署名した委任による代理人の権限を証する情報を記載した書面(以下「委任状」という。)について公証人又はこれに準ずる者の認証を受けた場合
 二 申請人が第四十七条第三号イからホまでに掲げる者のいずれにも該当せず、かつ、当該申請人又はその代表者若しくは代理人が委任状に署名した場合
 三 復代理人によって申請する場合における代理人(委任による代理人に限る。)が復代理人の権限を証する書面に署名した場合
2・3【略】

cf. 小宮山秀史著「逐条解説 不動産登記規則(1)」(テイハン)
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