司法書士内藤卓のLEAGALBLOG

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特例有限会社の監査役と定款の定めの廃止

2008-10-27 23:32:51 | 会社法(改正商法等)
 特例有限会社は、定款の定めによって、監査役を置くことができる(会社法第326条第2項、整備法第17条第1項)。したがって、監査役を置く旨の定款の定めを廃止する定款の変更をした場合には、監査役は、当該定款の変更の効力が生じた時に退任することになると考えるのが合理的である。定款の定めを廃止する以上、監査役を置くことはできないからである。

 清算株式会社の監査役については、同じく会社法第336条の規定が適用除外(会社法第480条第2項)となっているが、当該定款の変更の効力が生じた時に退任する旨の規定(会社法第480条第1項第1号)が手当てされている。

 特例有限会社については・・・手当て漏れであると思われる。でき上がった条文の解釈としては、「規定がない以上退任しない」とする立場もあり得るのかもしれませんが、そう解すると、当該定款の変更の決議自体が無効ということになってしまう。しかし、そのように解するよりは、監査役を置く旨の定款の定めを廃止する定款の変更の決議は、現任監査役を解任する趣旨であると解して、退任の登記を認める方が理に適っているように思われる。

 旧有限会社法においても有限会社に監査役を置く場合には定款の規定を要する(第33条第1項)とされていたし、定款の根拠がなければ、法律上の監査役ではないことになるのであるから、「登記原因を何とするかはともかく、退任する」は、妥当だと考える(「退任」でよいであろう。)。

cf. 会社法であそぼ Q&A3
http://kaishahou.cocolog-nifty.com/blog/2006/10/post_4866.html

 旧株式会社の監査役である者の任期について、「なお従前の例による」(整備法第95条)にもかかわらず、いわゆる「解凍理論」によって、監査役が存しなくなるような会社類型への移行をする場合に、会社法第336条第4項の規定により監査役の任期が満了することを認めていることからも、特例有限会社の場合に退任を認めないことは平仄を欠くであろう。
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3 コメント

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ありがとうございました。 (補助者ハットリ)
2008-10-28 10:53:54
 先生、早速のご回答、ありがとうございました。
 旧有限会社法時代には、監査役が辞任し後任者を選任しないから、定款を変更するという場合しか考えたことがなく、先に定款を変更するという場合は考えたことがありませんでしたし、手元の文献に当たっても、本問に言及したものはありませんでしたので。
 定款変更決議の重さを考えれば、後付けで監査役から辞任届をもらうというのは、妙な話ですよね。
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旧法でも (みうら)
2008-10-28 21:11:25
旧有限会社法でも同様だったのであり手当て漏れではないと考えるが・・
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やはり手当て漏れだと思います (補助者ハットリ)
2008-10-31 12:53:38
 旧有限会社法には、会社法336条4項のような、定款を変更して監査役を置く旨の定めを廃止した場合についての規定はありませんでしたし、私の調べた限り、先例や質疑応答にもこのことについて言及したものはありませんでした。(旧有限会社法下では、味村治先生が『新訂詳解商業登記』下巻48項で「監査役は、監査役を置く旨の定款の定めの廃止によって退任すると考える。」と述べられていたのが、最も有力な解釈だったのではないでしょうか。)
 会社法336条4項は、ある意味、有限会社を株式会社に取り込んだからできた条項だと私は考えますので、取締役会を置かない株式会社そのものである特例有限会社に関して、会社法下で、定款を変更して監査役を置く旨の定めを廃止した場合についての規定がないというのは、やはり手当て漏れではないでしょうか。
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