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司法書士内藤卓のLEAGALBLOG

会社法及び商業登記に関する話題を中心に,消費者問題,司法書士,京都に関する話題等々を取り上げています。

株主総会議事録の作成に係る職務を行った取締役

2006-06-24 10:52:09 | 会社法(改正商法等)
 株主総会の議事については、議事録を作成することが要求されている(会社法第318条第1項、会社法施行規則第72条)。旧商法と異なり、議長及び出席した取締役の署名(又は記名押印)は要求されていないが、議事録の作成に係る職務を行った取締役の氏名が、議事録の記載事項とされている(同規則第72条第3項第6号)。

 株主総会の議事内容は、関係事項についての登記、決議を争う訴訟等に関係し、後日のために明確に記録される必要がある。旧商法では、議事録が会議に関する記録であることから、議長及び出席した取締役の署名(又は記名押印)を議事の内容を確認する意味で要求し、決議についての証拠保全と、その証拠保全を議事に関与した者の署名(又は記名押印)によって担保させていた。

 会社法では、株主総会議事録は単に事実の記録であるとされ、議長及び出席した取締役の署名(又は記名押印)は、原則として要求されていない。従って、「議事録の作成に係る職務を行った取締役」は、株主総会に出席していない取締役(例えば、株主総会で新たに選任された取締役等)であってもよい、という解釈も成り立つところである。

 しかし、取締役会議事録については、出席した取締役及び監査役の署名(又は記名押印)が要求され(会社法第369条第3項)、「議事録の作成に係る職務を行った取締役」の記載が法定されていない。この点に鑑みると、株主総会議事録の作成に係る職務を行う取締役は、原則として出席した取締役であるべきである。

 取締役会設置会社でない株式会社において、株主総会議事録を代表取締役を選定したことを証する書面(商業登記規則第61条第4項第1号)として登記申請書に添付する場合には、議長及び出席した取締役の記名押印が要求され、また、不動産登記の申請の際の利益相反取引を承認する議事録として添付する場合には、作成者の記名押印が必要である(不動産登記令第7条第1項第5号ハ、同第19条第1項)。このような場合には、議事に関与した者の記名押印によって真正を担保させるわけであるから、「議事録の作成に係る職務を行った取締役」が株主総会に出席していない取締役であるのは、問題があろう。

 従って、「議事録の作成に係る職務を行った取締役」は、株主総会に出席していない取締役(例えば、株主総会で新たに選任された取締役等)であってもよい、という解釈を採るとしても、上記のような場合は例外とすべきである。

cf. 登記研究第658号(2002年11月号)
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2 コメント

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ああ、そうか!です。 (万年補助者)
2006-06-25 22:17:16
内藤先生、こんばんは。いつも、一方的にお世話になっております(笑)。



葉玉先生のブログで、この議事録作成者についてのQ&Aの結論に、なるほど確かに商法時の署名義務者は「出席○○」が明記されているけど会社法での作成者にはそんな限定されてないしなぁ…と思いながらも、何か釈然としない感じだったのですが、それは商法下での登記添付書面の議事録に対する感覚が染みついているために、会社法での感覚にまだなじめないんだろうなぁ…と納得させておりました。



先生のおっしゃるケースが浅学な頭には浮かびませんでしたので、拝見して、あぁ、そうだ、やはり作成者はその内容につき責任を負えるポジション、その会議に出席してその内容を把握している者であるべきでは、と改めて感じました。

葉玉先生のお答えも納得できるのですが、登記実務からすると少々具合が悪い感じがします。



葉玉先生が回答保留にされたので、どのように結論されるのか、とても興味深く期待しています。

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勉強になります&その他 (よよよ)
2007-10-20 20:53:37
いつも興味深く拝読しております。

最近気になるのは、銀行が融資する場合に、親会社が子会社の保証するなどで利益相反が発生する(不動産登記申請の際に必要になる場合以外)場合、利益相反の議事録についてどこまで厳密性を要求しているのか、ということです。
司法書士の感覚からすると、取締役の実印押印、印鑑証明添付がベストと思いますが、現実には認め押印でよかったり、場合によっては親会社の議事録まで要求しなかったりするようですね。
(そもそも株主総会で利益相反取引を承認するような会社であれば、取締役の押印義務もありませんものね)
会社法に変わっても、いろいろ難しいですね。
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