司法書士内藤卓のLEAGALBLOG

会社法及び商業登記に関する話題を中心に,消費者問題,司法書士,京都に関する話題等々を取り上げています。

商業登記規則第61条第5項書面に関するQ&A

2015-04-16 18:17:33 | 会社法(改正商法等)
 平成27年2月27日施行の改正商業登記規則により新設された第61条第5項の適用について,いろいろと疑問が生じているようである。

 以下,私見を述べると,

Q.同項ただし書の印鑑証明書を添付する場合に,就任承諾書には住所を記載する必要があるか。
A.従来は,住所の記載は必ずしも要求されていなかったが,改正後は,必要であるとして取り扱われているようである。
 なお,必要説に立てば,代表取締役を選定した取締役会議事録に住所の記載がある場合であっても,取締役としての「就任を承諾したことを証する書面」に住所の記載が必要である。


Q.いわゆる権利義務承継者が改めて選任された場合,本人確認証明書を添付する必要があるか?
A.この場合,「退任」&「就任」の登記がされるが,「再任」として取り扱われるので,添付を要しない。


Q.監査等委員会設置会社に移行する場合に,従前の取締役が,退任と同時に,「監査等委員である取締役」に就任したときは,本人確認証明書を添付する必要があるか?
A.この場合の登記原因は「退任及び就任」である。間断ないとは言え,厳密に言えば,異質の存在であるので,「再任」とは言い難い。商業登記規則第61条第5項の適用があり,本人確認証明書を添付する必要があるとも考えられる。
 しかしながら,「監査等委員である取締役」も広い意味ではもちろん「取締役」であることから,商業登記規則第61条第5項の適用の場面では,ユーザー・フレンドリーに,「再任」であると解して適用除外とするのが妥当であると考える。


Q.別会社の代表取締役である者が取締役に就任する登記を申請する場合,当該別会社の登記事項証明書は,本人確認証明書に該当するか?
A.規則第61条第5項の本人確認証明書が要求される趣旨としては,被選任者の実在性の証明及び就任承諾の真意の確認の二つの意味を有する。
 したがって,誰でも取得することができる登記事項証明書は,本人確認証明書としては不適当である。


Q.会社の代表者から,同人以外の者の取締役の就任の登記に関して,本人確認証明書の取得を依頼された場合,職務上請求用紙を使用して取得してもよいか?
A.上述のとおり,本人確認証明書が要求される趣旨が,被選任者の就任承諾の真意の確認の意味を有することからすれば,会社の代表者からの依頼で,同人以外の者の住民票の写し等の本人確認証明書を職務上請求用紙を使用して取得することは,不適切である。



商業登記規則
第61条 【略】
2~4 【略】
5 設立の登記又は取締役、監査役若しくは執行役の就任(再任を除く。)による変更の登記の申請書には、設立時取締役、設立時監査役、設立時執行役、取締役、監査役又は執行役(以下この項において「取締役等」という。)が就任を承諾したことを証する書面に記載した氏名及び住所と同一の氏名及び住所が記載されている市区町村長その他の公務員が職務上作成した証明書(当該取締役等が原本と相違がない旨を記載した謄本を含む。)を添付しなければならない。ただし、登記の申請書に第二項(第三項において読み替えて適用される場合を含む。)又は前項の規定により当該取締役等の印鑑につき市区町村長の作成した証明書を添付する場合は、この限りでない。
6~9 【略】
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「中小企業のための役員変更登記の基礎知識Q&A」

2015-04-16 11:33:33 | 会社法(改正商法等)
 納税月報2015年5月号(納税協会)に拙稿「中小企業のための役員変更登記の基礎知識Q&A」が掲載されている。

 平成27年2月27日施行の商業登記規則の一部改正により,役員の登記(取締役若しくは監査役の就任又は代表取締役の辞任)の申請をする場合の添付書面が変わり,また,商業登記簿の役員欄に役員の旧姓(婚姻前の氏)をも記録することができるようになったが,この改正について,わかりやすく解説したものである。

 一般向けですが,機会があれば,ぜひご覧ください。

 なお,1か月ほど経てば,納税協会HPで閲覧可能です。
http://www.nouzeikyokai.or.jp/
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ひとりでも遺産分割の可否(東京高裁判決)

2015-04-16 10:43:42 | 不動産登記法その他
東京高裁平成26年9月30日判決
http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail5?id=84784

【判示事項】
被相続人甲の遺産について遺産分割未了のまま他の相続人が死亡したから当該遺産全部を直接相続した旨を記載した遺産分割決定書と題する書面を添付してされた当該遺産に属する不動産に係る相続を原因とする所有権移転登記申請に対し,登記官が登記原因証明情報の提供がないとしてした却下決定が,適法とされた事例

【裁判要旨】
被相続人甲の相続人が乙及び丙の2人であり,被相続人甲の死亡に伴う第1次相続について遺産分割未了のまま乙が死亡し,乙の死亡に伴う第2次相続における相続人が丙のみである場合において,丙が被相続人甲の遺産全部を直接相続した旨を記載した遺産分割決定書と題する書面を添付してした当該遺産に属する不動産に係る第1次相続を原因とする所有権移転登記申請については,被相続人甲の遺産は,第1次相続の開始時において,丙及び乙に遺産共有の状態で帰属し,その後,第2次相続の開始時において,その全てが丙に帰属したというべきであり,上記遺産分割決定書によって丙が被相続人甲の遺産全部を直接相続したことを形式的に審査し得るものではないから,登記官が登記原因証明情報の提供がないとして不動産登記法25条9号に基づき上記申請を却下した決定は,適法である。

cf. 原審 東京地裁平成26年3月13日判決
http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail5?id=84478

 高裁判決がアップされたということは,最高裁で決着がついたのであろうか?

 果たして,最高裁の判断は?

cf. 平成26年12月23日付け「ひとりでも遺産分割」の否定に関する考察



 なお,東京高裁の判決中(7頁),

「たしかに,上記認定事実によれば,従来の上記ア(イ)の登記実務は,法務大臣等の公式見解に基づくものではなかったとしても,長年の間広く安定した実務であったこと,この取扱いの相違により登記申請者の負担にも大きな差が生じることが認められるから,この取扱いを変更するに当たっては,できる限り登記実務の混乱を避け,予測可能性を高める手立てを講ずることが望ましかったというべきである。」

と述べられている。もっともである。
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マイナンバーと司法書士界への影響

2015-04-16 09:58:36 | 司法書士(改正不動産登記法等)
 団体としての司法書士会は,役員手当や委員会等の会議費の源泉徴収の関係で,会員からマイナンバーを取得して,管理する必要が生ずる。事務局職員についても同様である。したがって,そのための管理体制の整備が必要である。


 個々の司法書士としては,法人である依頼者に対して,司法書士報酬の源泉徴収の関係で,自らのマイナンバーを提供しなければならない。

 このため,依頼者である法人(例えば,金融機関等)の側で,取引先のマイナンバーの取得及び管理を絞りたいことから,司法書士の寡占化が進むのではないかという指摘もある。

cf. ひとリーガル日記
http://apomchan.tumblr.com/post/109298995828

 もちろん,外注先のマイナンバーを取得し,管理しなければならない場合も生ずるので,事務所における管理体制の整備も必要である。
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