司法書士内藤卓のLEAGALBLOG

会社法及び商業登記に関する話題を中心に,消費者問題,司法書士,京都に関する話題等々を取り上げています。

株主による募集株式発行の差止仮処分の申立て

2013-03-08 18:32:32 | 会社法(改正商法等)
株主による募集株式発行の差止仮処分の申立てに関するお知らせ
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120130305095492.pdf

 株式会社が取締役会の決議に基づき手続中の第三者割当による募集株式の発行につき,同社の株主が,著しく不公正な方法によるものであることを理由とし,その発行を差し止める仮処分の申立てを行っている。会社法第210条第2号に基づくものである。


会社法
第210条 次に掲げる場合において、株主が不利益を受けるおそれがあるときは、株主は,株式会社に対し,第199条第1項の募集に係る株式の発行又は自己株式の処分をやめることを請求することができる。
 一 当該株式の発行又は自己株式の処分が法令又は定款に違反する場合
 二 当該株式の発行又は自己株式の処分が著しく不公正な方法により行われる場合

 (株主による取締役の行為の差止め)
第360条 六箇月(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前から引き続き株式を有する株主は、取締役が株式会社の目的の範囲外の行為その他法令若しくは定款に違反する行為をし、又はこれらの行為をするおそれがある場合において、当該行為によって当該株式会社に著しい損害が生ずるおそれがあるときは、当該取締役に対し、当該行為をやめることを請求することができる。
2 公開会社でない株式会社における前項の規定の適用については、同項中「六箇月(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前から引き続き株式を有する株主」とあるのは、「株主」とする。
3 監査役設置会社又は委員会設置会社における第一項の規定の適用については、同項中「著しい損害」とあるのは、「回復することができない損害」とする。

民事保全法
 (仮処分命令の必要性等)
第23条 係争物に関する仮処分命令は、その現状の変更により、債権者が権利を実行することができなくなるおそれがあるとき、又は権利を実行するのに著しい困難を生ずるおそれがあるときに発することができる。
2 仮の地位を定める仮処分命令は、争いがある権利関係について債権者に生ずる著しい損害又は急迫の危険を避けるためこれを必要とするときに発することができる。
3 第20条第2項の規定は、仮処分命令について準用する。
4 第2項の仮処分命令は、口頭弁論又は債務者が立ち会うことができる審尋の期日を経なければ、これを発することができない。ただし、その期日を経ることにより仮処分命令の申立ての目的を達することができない事情があるときは、この限りでない。

 (仮処分の方法)
第24条 裁判所は、仮処分命令の申立ての目的を達するため、債務者に対し一定の行為を命じ、若しくは禁止し、若しくは給付を命じ、又は保管人に目的物を保管させる処分その他の必要な処分をすることができる。
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トヨタ自動車,初の社外取締役を登用

2013-03-08 18:18:29 | 会社法(改正商法等)
「トヨタ自動車,新体制を公表」by トヨタ自動車
http://cdn.toyota.jp/information/news/20130306/nt13_0306.pdf

 社外取締役の採用に消極的であったトヨタ自動車が,遂に社外取締役の登用に踏み切った。今年の定時株主総会で選任予定。

 先送りとなったが,会社法改正法案の提出を見据えた動きなのであろう。
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マイナンバー法案再提出に関する日弁連会長声明

2013-03-08 18:12:08 | いろいろ
「共通番号」法案再提出に関する会長声明 by 日弁連
http://www.nichibenren.or.jp/activity/document/statement/year/2013/130307.html

 「同法案に強く反対し,廃案を求めるものである」
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個別株主通知に関するQ&A

2013-03-08 18:05:04 | 会社法(改正商法等)
個別株主通知のご案内 by 株式会社証券保管振替機構
http://www.jasdec.com/download/ds/annai_kobetu.pdf

個別株主通知に関するQ&A
http://www.jasdec.com/download/ds/QA_kobetu.pdf

 株主が上場会社等に対して少数株主権等を行使する場合に必要となる個別株主通知の手続についてのQ&A等である。
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「特例民法法人の移行登記に関する情報交換会」

2013-03-08 16:05:19 | 法人制度
 昨日は,京都司法書士会会員研修会で,「特例民法法人の移行登記に関する情報交換会」を実施。4月1日付け移行の登記の実務上の留意点について検討。私は,アドバイザー3人のうちの1人として参加。改めて考えると,細々とした留意点が数多ありますね。

 認定書が届いたら,速やかに,

(1)オンラインによる登記事項の提出
cf. 平成23年7月14日付け「書面申請の場合に,登記事項をオンライン申請システムを利用して提出することができる」
(2)一時預かりの申し出
cf. 平成25年2月12日付け「平成25年4月1日付け特例民法法人の移行の登記に係る申請書類の「一時預かり」について」

の順で進めるようにしましょうね。
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「会社計算規則の一部を改正する省令案」に関する意見募集

2013-03-08 12:55:29 | 会社法(改正商法等)
「会社計算規則の一部を改正する省令案」に関する意見募集
http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=300080105&Mode=0

 商業登記実務に対する影響は,ない。


一 改正の趣旨
 企業会計基準委員会の「退職給付に関する会計基準」(企業会計基準第26号)の公表等を踏まえ,会社計算規則(平成18年法務省令第13号)の一部を改正するものである。

二 改正の内容
 連結貸借対照表の項目として「退職給付に係る資産」,「退職給付に係る負債」及び「退職給付に係る調整累計額」を,連結株主資本等変動計算書の項目として「退職給付に係る調整累計額」をそれぞれ追加するとともに,所要の整備を行う。

 意見募集は,平成25年4月8日(月)まで。
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刑事裁判中の事件の証拠をネット投稿し,逮捕

2013-03-08 12:21:10 | いろいろ
NHKニュース
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20130307/t10013024291000.html

 刑事裁判中の事件の証拠をインターネットのサイトに投稿して閲覧できるようにしたとして,刑事訴訟法違反の疑いで東京地方検察庁に逮捕されたのだという。

 刑事訴訟法には,次の条文がある。

第281条の4 被告人若しくは弁護人(第四百四十条に規定する弁護人を含む。)又はこれらであつた者は、検察官において被告事件の審理の準備のために閲覧又は謄写の機会を与えた証拠に係る複製等を、次に掲げる手続又はその準備に使用する目的以外の目的で、人に交付し、又は提示し、若しくは電気通信回線を通じて提供してはならない。
一・二 【略】
2 前項の規定に違反した場合の措置については、被告人の防御権を踏まえ、複製等の内容、行為の目的及び態様、関係人の名誉、その私生活又は業務の平穏を害されているかどうか、当該複製等に係る証拠が公判期日において取り調べられたものであるかどうか、その取調べの方法その他の事情を考慮するものとする。

第281条の5 被告人又は被告人であつた者が、検察官において被告事件の審理の準備のために閲覧又は謄写の機会を与えた証拠に係る複製等を、前条第一項各号に掲げる手続又はその準備に使用する目的以外の目的で、人に交付し、又は提示し、若しくは電気通信回線を通じて提供したときは、一年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
2 弁護人(第四百四十条に規定する弁護人を含む。以下この項において同じ。)又は弁護人であつた者が、検察官において被告事件の審理の準備のために閲覧又は謄写の機会を与えた証拠に係る複製等を、対価として財産上の利益その他の利益を得る目的で、人に交付し、又は提示し、若しくは電気通信回線を通じて提供したときも、前項と同様とする。


 開示証拠の目的外使用禁止規定の問題性については,平成16年刑事訴訟法改正当時の,この弁護士さんのブログ記事が詳細に指摘している。
http://beatniks.cocolog-nifty.com/cruising/2004/12/post.html
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中国で離婚ラッシュ? 不動産売却のため

2013-03-08 07:51:49 | 不動産登記法その他
産経新聞記事
http://topics.jp.msn.com/world/general/article.aspx?articleid=1713213

 不動産売却時のキャピタル・ゲイン課税を逃れるためだと言う。もとより,ペーパー離婚で,売却後には再婚するつもりだとか。

 一方は,また再婚するつもりでも,他方には,再婚の意思はなく,これ幸いと離婚に持ち込もうとする輩もいそうである。
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除斥期間経過後の未払配当金の支払

2013-03-08 05:59:07 | 会社法(改正商法等)
 株式会社の定款では,未払配当金の支払に関して,定番のように,「金銭による剰余金の配当がその支払提供の日から満3年を経過してもなお受領されないときは,当会社は,その支払義務を免れる」旨の除斥期間を設けているかと思われる。

 未払配当金に関しては,株主が支払を請求してきた場合に直ちに支払うことが可能なように分別管理をするか,あるいは供託することが考えられる(ただし,供託されることは皆無に近いであろう。)。株主が有する配当金支払請求権は,商行為にあらざる債権として,消滅時効は,10年となる(民法第167条第1項)。

 この配当金支払請求権について,定款に除斥期間を定め,除斥期間内にその配当金を受領しないときは,株式会社に帰属させることができるかという問題については,法に明文の定めがなくても,株主の利益に重大な影響がある事項は定款に規定して初めて有効になると解されており,配当金支払請求権の除斥期間の定めに関しては,実際的必要性に鑑みて不当に短いものでない限り,その定めは有効なものとして判例上も認められている。現状では,除斥期間付きの権利は,配当金の支払請求権に限定されているようであるが,所在不明株主の株式売却による代金支払請求権に関しても,同様に解してもよいのではないだろうか(ただし,全株懇の「所在不明株主の株式売却事務取扱指針では「10年」である。)。

 配当金の未払いが生ずる原因としては,株主が口座への振込みを希望している場合には,当該株主が所在不明となっても,振込みが可能な限り,未払いの問題は生じない(こういうケースは結構多いようである。)ので,小為替の郵送等による支払を希望しているような株主が所在不明となった場合が多いのではないかと思われる。

 定款で定めた除斥期間については,全株懇のアンケート結果によれば,次のとおりであるようだ。

(1) 3年 78.3%
(2) 5年 15.2%
(3)10年  3.0%
(4)その他  3.5%

 そして,定款で定めた除斥期間満了後に株主が未払配当金の請求をしてきた場合の対応については,全株懇のアンケート結果によれば,次のとおりであるようだ。

(1)原則的に支払う 37.8%
(2)消滅時効(10年)まで支払う 16.6%
(3)原則として支払わない 45.6%

 対応が結構分かれていますね。

 除斥期間の経過は,消滅時効と異なり,債務者の援用を待たずに確定的に債務の消滅の効果を生じさせるわけであるが,そうすると,除斥期間経過後の配当金の支払は,株主にとっては不当利得(民法第703条)となり,株式会社にとっては非債弁済(民法第705条)となり得る。

 であるとすれば,除斥期間経過後の未払配当金の支払は,取締役の責任(会社法第423条第1項)の問題ともなり得る。

 もっとも,消滅時効に関しても,時効による債権消滅の効果は,時効期間の経過とともに確定的に生ずるものではなく,時効が援用されたときに,初めて確定的に生ずるのであり,債務者が援用(民法第145条)をしないこともあり得ることからすれば,除斥期間経過後の未払配当金の支払に関しても,株式会社が除斥期間の経過を主張せずに支払ったとしても,取締役の責任の問題とはならないとも言える。

 ちなみに,金融機関は,最後の取引から10年を経過した預金の払戻請求があった場合には,ほぼ例外なく,支払をしているようである。

 除斥期間の経過によって未払配当金の請求をあきらめている株主が多数いることが考えられるとして,請求をしてきた株主に支払うことが株主間の公平を害すると説く立場もあるが,未払配当金が生ずる原因の多くが上記のような場合であるとすれば,「あきらめている」株主が多いというよりは,「自己が株主であることを永年忘れている」株主又はその相続人が多いということであろうから,「権利の上に眠れる者を法は保護せず」の観点からすれば,公平の問題は生じないであろう。

 とはいえ,最近では,上記のアンケート結果のとおり,定款で定めた除斥期間経過後の支払をしない株式会社が増えているようである。
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