司法書士内藤卓のLEAGALBLOG

会社法及び商業登記に関する話題を中心に,消費者問題,司法書士,京都に関する話題等々を取り上げています。

「あぁ情けなや 消費者金融に利用されるメガバンク」

2005-01-03 19:14:26 | 消費者問題
 標記は、「WEDGE」(新幹線の車中に置いてある雑誌)1月号所収の記事のタイトルであるが、多分に理解不足の感あり。

 「三井住友銀行がプロミス、東京三菱銀行がアコムを傘下に収め、そのノウハウを吸収しようと必死だが、一朝一夕に吸収できるかどうか」という旨の金融アナリストのコメントから始まるのだが、はっきり言って、消費者金融にそれほどのノウハウがあるとは思えない。従業員は3年でほぼ入れ替わる(退職者が相次ぐので)と言われており、それではノウハウを有効活用できる人材の育ちようがない。仮にあるとしても、ファミレスのマニュアルよろしく誰でも簡単に利用できる程度のものしかないはずだ。

 「銀行が個人の返済能力を見るのに対し、消費者金融は、銀行では貸せない顧客に融資を行って成長してきた業界であり・・・プロミスは、過去の審査データと融資実績データの蓄積により、顧客の属性を1760にパターン化しており、『返済する適性があるかどうか』で判断している」という。しかし、単に融資の基準が甘いだけであり、貸倒れリスクを高金利でカバーしているだけの話である。それゆえ、少額(50万円以下)を「高利多貸」することが必要となるのである。消費者金融にとっておいしい顧客は、貸した金をすぐに返してくれるだけの「返済能力」のある顧客ではない。元本を返さず、延々と利息程度の額を払い続けてくれる客である。そういう「適性」があるか否かが問題なのである。

 ノウハウがあるとすれば、審査ノウハウよりも回収ノウハウであろう。コールセンターを有し、返済を遅滞するとまめに督促電話をかけ続けるのだが、これが実に有効である。税務署が電話督促を始めて回収率が上がったことに鑑みても、納得がいく話である。また、債務者が不動産を所有していれば、持分であろうと、朽廃寸前であろうと、後順位で無剰余必至であろうと、とりあえず担保権(根抵当権仮登記)を設定する。返済が滞れば、「任意売却 or 競売」と脅しをかけて、親族等からの援助を引き出し、回収を図ろうとする。月々の収入という「返済能力」よりも「返済適性」をみるというのは、つまるところそういうことなのだ。メガバンクにそういうまねができるか、といったら無理な話であろう。

 とはいえ、消費者金融にとって「胡散臭いイメージが払拭され、ブランドイメージが飛躍的に向上する」というメリットは計り知れないほど大きく、「あぁ情けなや 消費者金融に利用されるメガバンク」というタイトルは言いえて妙であるといえよう。
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